最近の俺はどうにかしちまったのか。 俺よりもずっと年下な、こんな子供相手に翻弄されるなんて。 心の炎をくすぶられるなんて。 昔の熱く燃えていた俺は、何処に行っちまったんだかなぁ……。 ーーー熱さ、冷たさ、この鼓動ーーー
閉店後のMaHa弐番。
各自が、それぞれ片付けをしていた。 俺は残ったカレーを鍋ごと動かしていたんだが……。 「ぅを……っ!?」 床にこぼれていた水に気付かず、うっかり転んでしまった。 「…………っ!?」 しかし、転んだだけでは終らなかった。 そう、俺の手にはまだまだ熱いカレーが持たれていたのだ。 「……っつーーー……っ!!」
俺は、余りの熱さに咄嗟に飛び起き鍋をはらった。
しかし、それと同時に胸に激痛が走る。 どうやら火傷でもしたらしい。
「……ど、どうしたんですか……っ!?」
キッチンで洗い物をしていたが慌てて飛んでくる。 「……っいや、カレーをこぼしちまって、な……っ。」 俺は、未だにひりひりと痛む胸をかばいながら話した。 「…………っ!!ひ、ひどい……っ!!」 見事な程にカレーまみれになった俺の服を見て、は絶句する。 「と、取り合えず…っ、ヒノケンさん、立てますか……っ!?早く服を脱いで冷やさなきゃ……っ!!」 俺に駆け寄り、肩を貸す形で立ち上がる。 身長差が激しくてあまり意味は無かったが、一生懸命なを見ていると、少し肩を借りたままでも良いか…と思えた。
更衣室まで行くと、は冷やす物を取って来ると出て行った。
その間に、俺は椅子に座り込む。 そして、服を見て顔を歪めた。 本当に見事にかやしたものだ。 洗濯をしても、カレーの匂いが取れないような気がした。
「ヒノケンさん……っ!!」
そんな事を考えていると、大きな音を立ててが入って来た。 手には濡れたタオルと氷水の入った洗面器。 「……っ何やってるんですか、ヒノケンさん!早く服脱いで冷やさなきゃっ!!」 俺がぼーっと椅子に座っているのを見ると、は驚いて駆け寄った。 「ほらっ、タオルも持って来ましたし……っ!!」 そう言いながら、は急に俺の服に手をかける。 「……って、ちょっと待てーーーっ!!」 その急な行動に、俺は驚いて声を上げた。 「お、おま、勝手に脱がすな……!」 興奮からなのか、照れからなのか、一気に顔が熱くなって行く。 「ぇ、だって、動いたら痛いかな、と……。」 俺の怒鳴り声に少し身を引きながらも、おずおずと言って来る。 「いや…、そりゃそうだけどな……。服くらい自分で脱げる……。」 まるで叱られた子犬のような目をしているに、俺はどう言って良いのか分からなくなり、頭を掻く。 確かに動けば火傷を刺激して痛みが走るが、に脱がせてもらうなんて恥ずかしすぎて耐えられない。 それに、少しの痛みを我慢する事くらい出来る。 「じゃあ、後は自分でやるから…は片付けに戻って良いぜ。」 そう言って、服を脱ごうとする。 しかし、目の前のは、濡れタオルを手に持って動こうとはしなかった。 「……聞いてたか……?」 嫌な予感がまたひしひしとする中、俺はに問いかける。 「はい、でももう片付けは殆ど終わってましたから大丈夫です!私がヒノケンさんの体拭いてあげます!」 ニッコリと、嬉しそうには言った。 その言葉に、俺は絶句する。 本人は素直に俺のためを思っての行動なのだろうが、受け取る側がどう思うかをこいつは考えていないんだろう。 の一言一言に赤面したり絶句したりする俺の方が変な事を意識しているんだろうが、これじゃ無理無いだろ? 俺は困り果てて服にかけていた手を離した。 「……いや、あのな……。本当に俺は大丈夫だから……。」 を宥めるように優しく言うが、それもには効かなかったようだ。 「もうっ、そんな事言ってないで!早くしないと、本当にカレーの匂いが染み付いちゃいますよっ!!」 どうにかに部屋から出てもらおうとしていると、耐え切れなくなったのかが俺の服にまた手をかけた。 「はい、ヒノケンさんバンザーーーイ!」 まるで子供の服を脱がすかのように言う。 「…………っ!?」 俺は、咄嗟の事に痛みと驚きで声が出なかった。 「……わぁ……っ。」 そんな俺を無視して、はまた声を上げた。 そして、マジマジと俺の体を見つめだした。 「ぅわ〜〜〜っ、ヒノケンさんの体って傷だらけ……っ。」 俺が中途半端に上げられた服を脱いでいる間、は俺の体に刻まれた数々の傷に見入っていた。 昔…、そうまだ俺が若かった頃に付けた傷だった。 あの頃の俺は熱かった……。 こんな小さな少女に翻弄されるなんて想像も出来なかった位に……。 「こんなの見たの初めて……っ。」 は、未だに興味深々とでも言うように、恐る恐るその傷に手を触れてきた。 「…………っ!!」 今まで冷水に手を付けていたの手はとても冷たいもので、ついその冷たさに体をビクリと震わせてしまった。 しかし…、火傷をした今では、その冷たさが心地良かった。 が一つ一つ傷をなぞって行く度に、火傷はひんやりと冷めて行くが、反対に俺の心臓は鼓動の激しさを増して行くだけだった。 そんな俺には全く気付かず、は無邪気にも傷を触り続ける。 「…………っ!!」 そう、この鼓動も、この顔の火照りも。 全て全て、ただただ恥ずかしいからであって。 この少女の行動、表情、全てに目が離せないのも。 ただの親心のような物からであって。 決して。 決して、この少女に”恋心”などと言う物を抱いている訳では無い。 ……そう、思いたかった……。 「〜〜〜〜……っ!!女の子が男の体をそんなに触るもんじゃありません……っ!!」
俺は、自分の限界を感じ、瞬時にを引き離した。
「……ふぇ……っ!?」 その咄嗟の行動に、はまた素っ頓狂な声を上げた。 「……っ、本っ当に、俺は、後は自分で、出来るから……っ!!他の奴らを手伝って来てやってくれ……っ!!」 もう、これ以上今の状態が続けば、自分の理性がどうにかなってしまいそうで。 俺は、の肩に置く手に力を込めながら、そう言った。 「……ぅぇえ、でも……っ。」 そんな、真剣な俺の目を見て混乱する。 「でもじゃない!さっさと行く……っ!!」 おろおろするばかりなの背中を無理矢理押して、俺は彼女を部屋から出させた。 バタン……ッ
扉を閉めれば、そこに広がるのはただ静けさだけだった。
今までの煩さが嘘のようだ。 「……はぁ……。」 未だにドクドクと脈打つ心臓を押さえながら、手近な椅子に座り込む。 額に手を当て、大きく溜め息を吐く。 「……本当に…、どうしちまったんだ…俺は……。」 自分に言い聞かせるように、ポツリと呟く。 「……これじゃ…、まるで……。」 ーーー恋ーーー 「……してるみてぇじゃねぇか……。」 静かな部屋の中で、ヒノケンの呟きが微かに響いた。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「テヘ、ネタ提供・姉、サンクス☆」 ヒノケン・「行き成り逃げたな、お前……。」 ハム猫・「いや…、何かだたのロリコンおじさんになっちゃってゴメン、ヒノケン……。うん、でも恋愛に年の差は関係無いよ……っ!!」 ヒノケン・「人を哀れむような目で見るなーーーっ!!」 ハム猫・「その前に、絶対鍋なんか引っくり返したら皆集まって来るだろう!むしろ、マハ=ジャラマはヒノケンよりもカレーの心配するだろっ!!」 ヒノケン・「オイ!全部自分で突っ込んでどうする……っ!!ってか、俺よりカレーかよっ!?」 ハム猫・「うん。冗談です。まぁ、突っ込み所満載なのはいつもの事ですから。」 ヒノケン・「ま…、そう言ったらそうだな……。」 ハム猫・「……もう否定しないよ……。こんな物ですが、最後まで読んで下さって有難う御座います!こんなになってごめんよ、姉。」 ヒノケン・「まぁ、またコイツが暴走して変な物書いた時には、また会おうぜ!」 |