「おっはよーーーっ!!」
野球部の朝練が終わって、自分のクラスに行く。
いつもの事。いつもの日常。
そして、自分の席について、隣の席の子に挨拶するのもぼくの日常です。










大好きな君










ぼくの隣の席はちゃん。
ぼくの大好きな女の子。
好きになったきっかけは、入学してすぐの授業の時。
ぼくがケシゴム忘れちゃって、その時、まだ全然知らないぼくに優しく笑ってケシゴムを貸してくれたんだ。
そのケシゴムはまだ真っ白で、きっと高校入って新しく使おうと思ってたんだけど、何だかもったいなくてなかなか使えなかったんだろうなぁ、って思った。
そんな新しいケシゴムをぼくに貸してくれた事が嬉しくて、その優しい笑顔がとっても暖かくて…、気付いたら好きになってた。



「おはよう、兎丸君。」
そして今日もちゃんはいつもと同じ優しい笑顔で挨拶してくれる。
あぁ〜〜、朝から幸せだなぁ〜〜〜♪


「今日、兎丸君数学の授業当たるよね。やって来た……?」
「えっ!?ウソッ!?」
やばい!やって来てないよ〜〜〜っ!!
「……やっぱり……。本当にもう、やって来なきゃダメだよ!……ハイ、数学のノート。」
そう言って、ちゃんはぼくの前に数学のノートを出した。
「え……?」
「……今度は無いからね……?」
「…………っ!!ありがとうっ!!」
やっぱりちゃんは優しいや!ついついちゃんに抱きついちゃった。

「うわ!兎丸君ってば、何やってんのっ!!」
う〜〜〜ん、テレたちゃんもカワイイなぁ……♪





1時間目ーー数学

やっぱりちゃんが言ったようにぼくが当たった。
でも、ちゃんのノートのお陰で何とか助かったよ。
ちゃんに感謝っ!!


ちゃん!ノートありがとねっ!!本当、助かっちゃったよ〜〜〜。」
1時間目が終わった後、いつも通りにちゃんに話しかける。
「ん。どういたしまして。でも、これからはちゃんとやって来るんだよ!」
「えへへ〜〜〜♪」
ついついちゃんを頼っちゃうけど、あんまり頼ってばっかだったら、怒られちゃうかな……?
「……あのさ…、兎丸君……。」
「ん、何?」
ちゃんが少し俯き加減に言ってきた。
何だかいつもと違う……。
「……えっと……。うぅん!何でもない!ごめんね……っ!!」
何か言いかけてたけど、急にいつも通りに戻って、そのまま次の授業の準備に入っちゃった。
「…………?」

何か今日のちゃん変だよ……?





その後も何だかちゃんは変だった。
授業中、気付いたら僕の方を見てる。
ぼくと目が合ったらすぐにそらしちゃうけど……。

一体何なんだろう……?





「変だよ〜〜〜っ!!シバ君!」
「…………?」
「あのねっ、今日何かちゃんが変なのっ!!」
お昼の時に、シバ君に今までの事を話してみた。

「…………?」
「え?何を言いかけたのか聞かないのかって?……やっぱりそう思うよね……。でも…、何だかいつもと違うちゃんを見てると、何言われるのか恐くて……。」
「…………。」
「おかしいなぁ〜〜〜、いつもならこんな事にならないのに……。」
何だかぼくも変になってきちゃったよ……。





6時間目も終わり、クラブに行こうと荷物をまとめていると、
「……兎丸君……!」
ちゃんが声をかけてきた。
「何……?ちゃん……?」
「あのね…、今日…、クラブでお茶会するんだけど…、兎丸君、来てくれる……?」
少し頬を染めて、困ったように聞いてくる。
ちゃん…、そんな顔で聞かれたら、ぼく倒れちゃいそうだよ……。
「うんっ、もっちろん!ちゃんがそう言うなら……っ!!」
…………アレ…………?
ちょっと待て……。
確か…、ちゃんのクラブって………。
「ねぇ…、ちゃんのクラブって、確か……。」
「茶道部だよ。」
やっぱりいぃぃぃーーーっ!!
「お茶会って……。」
「うん。茶道部でね、練習の成果を見るために開くの。」
うあぁあぁぁ〜〜〜っ!!
どーしよーーーっ!?
茶道って言ったら、茶道って言ったら、アレだよねっ!!
緑色の…、苦い…、ぼくの苦手な、抹茶だよねェっ!?



ぼくが1人あわあわしていると、
「……もしかして…、抹茶嫌い……?」
ギクウゥゥッ!!
「え!いやっ…、そのぉ……。」
「はい」とは言えない……。
だけど、「好きです」とも言えない……。
「あの、抹茶が嫌いならお茶菓子を食べに来るだけでもいいから!甘いもの好きだよねっ、兎丸君っ!!」
「あっ…、うん……。」
悪い事しちゃったかな……。
「あ!でも、ぼく今日クラブあるや……。どうしよう……。」
「終わってからで良いよ!私待ってるからっ!!じゃあね……!」
そう言って、ちゃんはとても嬉しそうに笑って、手を振りながら走っていった。
「…………。もしかして…、さっきの事をずっと言おうとしてたのかな……?」
そんなに緊張することかなぁ?と思いつつ、グラウンドに向かった。





「シ〜〜〜バ君!」
「…………?」
すでにグラウンドで練習をしていたシバ君を見つけて駆け寄った。

「お昼の時に言ってた事分かったよ!ぼく、ちゃんにお茶会誘われちゃった!……抹茶のほうだけど……。」
「…………。」
「そーなんだよ。ぼく、抹茶って苦手なんだよねーーー。でも、ちゃんがお茶菓子食べるだけでも良いって言ったから、クラブが終わったら行くんだーーー♪早く終わんないかなーーー、クラブ!」
いつもはもっとやっていたいって思うんだけど、今日だけは早く終わって欲しいなぁ〜〜〜。





しかし、そういう時にこそ長引いてしまったりするもので、しかも、そういう時に限って監督から話があったりとか、キャプテンから話があったりとかするもので……。



(うぅうぅぅ〜〜〜っ!!もぅ、早く話終わらせてよっ!!)
元々、運動部というものは文化系のクラブよりも遅くまで練習をしていたりするので、その上長引いたりしたら、すでに周りはうす暗くなっていたりする。



「それでは終了する。解散!」

この言葉と共に兔丸は走り出した。
ユニフォームを着替えていないのも気にしないまま。

その時の兎丸の早さは、今までに見た事もない早さだったと言う……。(部員談)





ハァ…、ハァ…、ハァ…、ハァ……。
ちゃん帰っちゃったかな……?こんなに暗くなってるんだもん…、きっともういないよね……?あぁ、どうしようっ!!)
そんな事を考えながら走っていると、作法室が見えてきた。

(明かりがついてる……っ!!)





ガラッ


ちゃん……っ!!」
勢い良く扉を開けその名前を呼ぶ……。
と、同時に兎丸は固まった。
目の前にはがいた……。着物姿で……。

「……っそ…それっ……っ!!」
の着物を指さして言う兎丸。
「え?あぁ、これ?本格的にやろうって事になったから……。お母さんのお古なんだけどね……。」
少し照れ笑いをしながら言う。



う…わぁ……。すっっっごい綺麗……。
ぼく思わず見とれちゃったよ……。
何か、いつものちゃんも十分可愛いけど、今日のは”綺麗”な感じ……。
大人っぽくて、すっごく綺麗。
何か…、すっごいドキドキしてる……。
どうしよう…、ぼく、おかしくなっちゃいそうだ……。



「兎丸君?ユニフォームのままで良いの?」
の問いかけにハッ、と我に返る兎丸。
「えっ!?あっ、本当だ!クラブ終わってからすぐに夢中で走って来たから忘れてたやっ!!」
どうしよう…、やっぱり砂だらけで汚れてたら上がっちゃいけないかな……。
「ありがとっ、そんなに急いで来てくれて……。さ!上がりなよ。お菓子取ってあるから!」
そう言って、ちゃんは中に入っていった。
上がって…、良いのかな……?
「えっと…、おじゃましま〜〜〜す……。」
作法室なんて初めてだから、何か緊張する。
「そんなに緊張しなくても良いよ。私しか残ってないから。」
お菓子を出しながらちゃんが言う。
「あ!ごめんねっ、ホント、こんな時間まで待たしちゃって……っ!!……でも、嬉しかったな……。もう帰っちゃってると思ったから……。」
「それはこっちのセリフだよ。来てくれてありがとう……。本当はね…、もう来てもらえないかも…、って思ったの……。忙しそうだし、練習の後だから疲れてるじゃない?だけど、もうちょっと…、もう少し待っていようって思ってたら、兎丸君が来てくれた……。本当に嬉しかったよ……。」
そう言って、フワリ、と笑ったちゃんは今まで見たどの笑顔よりも輝いてた。





ぼくの前にはきれいな小皿に載せられた花の形をした和菓子が置かれていた。
(かわいいな……。何の花だろう……。)
ちゃんを見ると、茶碗に抹茶を入れ、お湯を入れてお茶を点てている所だった。
(うわぁ……。手の動きすっごい速いなぁ……。ぼく、お茶点てるのって初めて見たかも……。)

が茶筅をスッ…、と取りだし、茶碗を兎丸の前にさし出す。
「一応形だけね。別に無理して飲まなくても良いから……っ。」

「えっ…と…、じゃあ…、いただきます……!」
(う〜〜〜ん、やっぱり緊張しちゃうなぁ……。)



小皿を手に取り、和菓子を黒文字で切り、口へ運ぶーーーーー……。



ーーーー甘いーーーー



口の中に甘い味が広がって、クラブで疲れた体には嬉しかった。


(何か落ち着くなーーーーー……。)


ちゃんは、和菓子を食べているぼくをジーーーッ、と見ている。

一口二口と食べていくうちに、和菓子はなくなった。

(せっかく点ててくれたんだし……。)
茶碗を見る。

(飲んでみようっ!!)
茶碗を手に取り、じっと見る。
きれいに点っている。

ソッ…、と一口飲んでみる……。


「…………っ!!苦くないっ!!」
抹茶は苦いもの、と思っていたので、つい声に出してしまった。
「うん。抹茶って苦いものだ、って思われがちだけど、点て方で味って変わるものだよ。」
ニッコリ笑ってちゃんが言った。


「……好き……。」
ポツリとつぶやく。


「えっ!?本当っ!!良かった〜〜〜、兎丸君が抹茶気に入ってくれ……。」
「ぼく、ちゃんが好き、大好き。」
ぼくの言葉を聞いて、ちゃんは真っ赤になって固まっちゃった。
ゴメンね、でも、これがぼくの気持ちだから。

「ダメ…、だったかな……?」
ちゃんはぼくの事どう思ってるの?
仲の良い男友達……?それとも……。



フル    フル    フル



ちゃんは真っ赤な顔を一生懸命横に振っていた。

「ダメなんかじゃない!私も…、私も兎丸君が好き!大好きっ!!」

「本…当……っ!?」

「うん……。今日ね、本当は兎丸君がお茶会に来てくれたら告白しようって思ってたの……。でも、なかなか誘えなくて……。来てくれて、嬉しくて…、いつ言おうってずっと思ってたら…、兎丸君に先越されちゃったね……。」
へへ…、と笑ってちゃんが言う。

「夢…じゃないよね……っ!?ぼくがクラブ終わって疲れて眠っちゃって見てる夢とかじゃないよねっ!!」
本当っ!?ちゃん!ぼく、その言葉信じちゃってもいいんだよねっ!!

「うん……。夢なんかじゃないよ。わたしもずっと兎丸君が好きだったんだよ……?」

ちゃんっ!!」
嬉しさのあまり、ついいつものクセでちゃんに飛びついちゃった。
「うわぁ……っ!!」
正座していたちゃんはぼくが急に飛びついた事でバランスを崩して後ろに倒れちゃった。

あれれ……?これって押し倒しちゃったことになるのかな?(少し違う。)

「と…っ、兎丸君!のいてぇ〜〜〜っ!!」
顔を真っ赤にして必死にぼくを押しのけようとするちゃん。

「いぃ〜〜やぁ〜〜〜♪」

「い…、嫌って!私、正座のまんまだって……っ!!」

「えぇ〜〜〜?でもなぁ〜〜〜……。」

「えぇ〜〜〜、じゃなくてっ!!」
作法室ではそんな会話が数分続いたという……。





ちなみに、作法室の外では、兎丸の荷物を持って来た司馬が、顔を真っ赤にして立っていた……。















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「終わりました!初・比乃っ!!」

兎丸・「何かありがちだよねーーー……。」

ハム猫・「しかたないじゃんか!抹茶ネタ書きたいなーーーって思ったら思い浮かんじゃったんだからっ!!」

兎丸・「でも、ちゃんの抹茶はおいしかったよ〜〜〜。」

ハム猫・「わしは苦いのしか点てられません……。」

兎丸・「それはハム猫の練習不足でしょ。」

ハム猫・「う゛ぅ……。しかし、何かツッコミ所満載な話ですな……。しかも、白い比乃を目指したのに、何か最後微妙に黒かったし……。」

兎丸・「だって〜〜〜、ちゃんカワイイんだもん♪ぼくだって男の子なんだよ!」

ハム猫・「そうでしたね……。しかも高校生……。(信じられん……。)」

兎丸・「ハム猫♪何か言ったかなぁ〜〜〜?」

ハム猫・「ぃっ…いえ、何も……っ!!」

ダッシュで逃げる。しかし、当然の様に兎丸に追いつかれる。

ハム猫・「にぎゃあぁあぁぁーーーっ!!」

兎丸・「じゃあ、またね!」



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