野球部の入部試験が終わってしばらくした後、友達のさんが私に声をかけて来ました。 「ねぇねぇ、凪ちゃん!野球部って…おもしろい?」 十二支波乱活劇 〜波乱含みの入部試験・前〜
「…………?ハイ。面白いですよ。……どうしたんですか?急に……。」
尋ねてみると、はウ〜〜〜ンとうなった。 「いや、最近練習風景とか見てて楽しそうだなぁ〜〜〜♪って思ったから、入ってみようかなって……。」 ニコリと笑いながら言う。 「本当ですか!うれしいです!さんなら大歓迎ですよっ!!」 うれしくて、ついの手を握る。 帰宅部を決め込んでいたの口からそんな言葉が出るとは思わなかったからだ。 「本当……っ!?良かったっ、今みたいな中途半端な時期に入れるか心配だったから……。じゃあ、今日の放課後、顔覗かせて良い……?」 「ハイ。分かりましたっ。楽しみに待ってますね……!」 私はそう言って、放課後を楽しみに待ちました。
放課後、荷物をまとめ、さんと一緒に行こうと思い声をかけたところ、「先に行っといて♪」という一言が返ってきました。
さんの言葉通り、先に行って待っていたんですけれども、なかなかさんは現れません。
(どうしたんでしょう……?)
そう考えていると…… 「凪ちゃーーーんっ、凪っ、凪!」 フェンス越しに後方から私を呼ぶ声がしたので、後ろを振り返りました。 そこにいたのは…、少し大きめの学ランに帽子を目深にかぶった、小柄な少年…でした。 「どなた…ですか……?」 名前を呼ばれたものの、相手に思いあたりがないので聞いてみた。 「んーーーー、分からないかなぁ?オイラだよ!オイラっ!!」 そう言ってニッと笑ったが、目深にかぶった帽子のせいで、あまり表情は見えなかった。 「今日顔覗かせるって言ったじゃんっ!!」 ・・・・・・・・・・・・・・・。
「えっ…えぇ……っ!?も、もしかして…っ、さんですか……っ!?」
驚いて、ついフェンスに手をかけ、まじまじと見つめてしまう。 「声大きいよ〜〜〜、凪……。それにこの姿の時はって呼んでくれなくちゃ……。」 手をひらひらと振って答える。 「え……っ!?でも…、野球部に入るって……っ!?」 すでに混乱してしまっている凪は冷静に考えられない。 「うん。入るよ、部員として。」 キッパリと爆弾発言をしたに、とうとう凪の頭は真っ白になった。
「じゃ…じゃあ、本当に入部するんですか……?」
怖々と凪が聞く。 「うん!もっちろんっ!!凪がダメって言っても止めないよ、オイラは。」 満面の笑みで胸を張って言うーーもとい。 「でも…、大丈夫なんですか……?その…、…さんが女だってばれたりとか……。」 「大丈夫だって!凪は心配性だなぁ。オイラ中学時代に野球部の助っ人とかやってたんだよ?男言葉だって普通に喋れるし、元々一人称は”オイラ”だし……。」 指折り数えていく。 「いえ…でも……。」 そんなに心配そうに声をかける凪。 「あ!胸はしっかりさらし巻いてあるから大丈夫だよっ!!」 思い出したようには言う。 「……ハァ〜〜〜……。分かりました……。どうなっても知りませんよ……?じゃあ、付いて来て下さい……。監督に紹介します。」 そう言って、暗い顔で歩き出した凪の後ろをニコニコとは付いて行った。
「監督……。入部希望の方が来ています。」
そう言って、ベンチに座っている羊谷に声をかける。 「ん?……これまた小せぇ奴だな。」 「第一声がそれかよっ!!」 タバコをくわえながらチラリ、とを見て言った一言に、ツッコミを入れる。 「あぁ、悪い悪い……。しかし、ホントに細っせぇなぁ……。そんなんで野球出来んのか……?」 ベンチから立ち上がり、を見下ろす。 「小さい頃から兄と一緒に野球してましたし、中学時代もしてました。(助っ人だけど……。)」 「ふぅ〜〜〜ん……。」 そう言いながら、何度もの頭のてっぺんからつま先までをジロジロと見る。 暫くの間そうして……。 「そうか、ならいいだろう。」 ニヤリ、と笑って、そう言った。
「牛尾!ちょっと来い。」
グラウンドの方を向いて、向こうの方で練習していた牛尾を呼ぶ。 「……はい。何でしょう……?」 呼ばれた牛尾は走ってベンチにやって来た。 「こいつが入部したいらしい。ちーーーっとばかし力を見てやれ。その結果しだいで入れるか入れないかはお前が決めろ。」 の頭に手を置きながら牛尾に説明する。 「え゛っ!?何っ、テストあんのっ!?」 「あったりめぇだ。今年の野球部は厳っしい入部試験があったんだ。そう簡単に入れると思ったら大間違いだぜ。」 ニカッ、と笑っている羊谷。 「まっ、せ−ぜー頑張りなっ!!」 そう言って、羊谷はのお尻をポンッ、と触った。 「…………っ!?でえぇえぇーーーっ!?」 急な事に素で反応してしまった。 目の前にいる牛尾には見えなかったらしく、不思議そうな顔をしている。 (こんのおやじ……!後で覚えてろよっ!!) キッ、と羊谷を睨みながらも、先を行く牛尾に付いて行った。
「君はこの前の入部試験には来なかったんだね……?」
グラウンドの端の方に向かいながら牛尾が聞いてきた。 「えぇ…、ちょっと諸事情で……。」 「そうなのか……。ところで…、ユニフォームに着替えなくても良いのかい……?」 牛尾は、の格好を見て問う。 「あっ…、今日はちょっと持ってくるの忘れて……。でも大丈夫ですよ。このままでも。」 ニッコリと笑って言った。 「動きにくくないかい……?」 「大丈夫です。慣れてますから!」 その言葉に、軽く頷く。 「今まではどこのポジションをしていたんだい?」 再び歩き始めた牛尾は、少し顔をこちらに向けて聞いた。 「一応セカンドでしたけど…、どこでも……。」 「…………?そうなのかい。凄いんだね、君は。」 の返答に、少し疑問を感じつつも、牛尾は軽く微笑んだ。
そんな事を話していると、グラウンドの隅についた。
「この前の入部試験では、ホーガン投げと3球同時ノック、パラシュートラン、それと長重量タイヤ打ちをして人数を絞った上で試合をしたんだけど…、今日すぐに全部は準備できないから…、まずは3球同時ノックでもしてみようか……。」 そう言って、牛尾は近くにいたマネージャーに声をかけ、準備を手伝ってもらうよう言った。 そんな光景をボーーーッと眺めながら、(テストめんどくさいなぁ……。)と思っていると、準備が終わったようだ。 マネージャーの人がグローブを渡してくれた。 「じゃあ、今から始めるよ。3つのボールの中に1つだけ硬球が混じっているから、それを見分けてキャッチしてくれ。」 そう言って、ボールを準備する。 「あの……。」 バットを持って、ボールを打つ体勢に入った牛尾に声をかける。 「それって、3つ全部キャッチしても合格ですか?」 片手を上げて言う。 「……うん…、まぁ、そういう事になるね……。」 少し間をおいて、牛尾が答える。 「何だ。じゃあ簡単だ♪」 その言葉を口にすると、牛尾の表情は変わった。 「余裕だね……。じゃあ、行くよっ!!」 カキィィ……ンッ!!
バットがボールに当たり、こちらに向かって来る。
中間点でバウンドする……。 は、そのボールの動きを集中して見ていた。 そしてーーーーー。 ズザッッ!!
外から見れば、一瞬の事だった。
砂埃を上げて動いたのグローブにはボールが2個、そして、もう一方の手にはボールが1個握られていた。
「へへっ、やったね!」
ボールを放り上げながら言う。 「へぇ…、結構やるじゃないか……。」 牛尾も素直に感心している。 「動体視力と足の速さ、それに体力は自信ありますからねっ!!」 ニッコリと笑って答える。 「じゃあ、今度はその自信のあるって言う足の速さを計らせてもらおうか。」 そう言いながら、に近寄ってくる。 「……でも、パラシュートは今から用意できないから、普通の50m走にしようか……。」
足元、そして前方ーー50m先ーーに白線が引かれている。
そして、その白線の横に、ストップウォッチを持った牛尾が立っている。 「準備はいいかい?……じゃあ行くよ……。よーーい、スターーートッ!!」 牛尾がストップウォッチのスタートボタンを押すと共には走り出す。 だんだんと近付いて来るを注意深く見て、の足が白線を踏むと同時に、ストップウォッチのボタンを押した。 「……5秒11……。」 静かにタイムを読み上げる。 「んーーー…、まぁまぁかな……。」 足の屈伸運動をしながら軽く言う。 正直言って、牛尾は驚いていた。 足の速さは兎丸には劣っているが、3球同時ノックの結果を足せば、目を見張るものがある。 ーーーーーあとは投と打か……。ーーーーー
「……楽しみだね……。」
小さな声で、牛尾はつぶやいた。 その頃、凪はベンチにいる羊谷と話していた……。
「監督は…、気付いたんですか……。」
真剣な顔で聞く凪。 「ん……?あぁ、まぁな。俺の目はそう簡単には騙されねぇよ。」 タバコをふかしながら言う、羊谷。 「それを知った上で…、彼女を…入部させるつもりですか……?」 羊谷は、口にくわえていたタバコを手に取った。 「まぁ、入れるかどうかはテストの結果次第だが…、これは一種のゲームだな。俺はそう思ってる。男に化けてまで入りたいと言って来たのはあっちだ。俺に止める権利はねぇ。……だが、もしあいつが「女」だという事がヤロー共にバレた場合は…、それなりの覚悟はしといてもらわねぇとな……。バレなきゃあっちの勝ち。バレたらこっちの勝ちってわけだな。」 そう言って羊谷はニヤリ、と笑った。 十二支高校野球部に今、波乱の予感であるーーーーー。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「初の試み、男装逆ハー第1話、いかがでしたでしょうか?」 牛尾・「……どこが逆ハーなんだい……?」 ハム猫・「だって、まだ入部試験(?)終わってないんだもんっ!!」 牛尾・「入部したとしても逆ハーになる確立は低いらしいがね。」 ハム猫・「きっつ……。これでも野球の知識皆無のこの僕が頑張って書いたのに……。(泣)」 牛尾・「皆無って…、この先大丈夫なのかい……?」 ハム猫・「大丈夫じゃないです。(キッパリ)だって、中学校時代の体育の教科書に載ってると思ったら、載ってなかったんだもんっ!!……ソフトボールなら載ってたけど……。」 牛尾・「これからどうするんだい……。」 ハム猫・「近くに教えてくれる人いないかなぁ〜……。誰か私に「ニコニコ野球入門」を下さい。」 牛尾・「君はセカンドだったらしいけど…、それもまさか適当かい……?」 ハム猫・「もち☆ポジションの位置は分かっても、各ポジションがどんな人に向いてるのか…というか、そのポジションのどこが得(?)なのか、いいのかがまったくさっぱりきれいなほどに分かりません。」 牛尾・「……誰か心優しい人がいたら、このダメ管理人に野球について教えてやって欲しい……。まぁ…、このまま行ってもすぐに終わるだろうが……。」 ハム猫・「うぅ…、牛尾先輩がいじわるだ……。では、最後に、こんな駄文にでも感想いただけるとうれしいです♪その他、注意点や支点・力点・作用点(?)何なりとおっしゃって下さいまし♪」 |