「……ちょっ、ちょっと、兎丸くん!やめるっすよ……っ!!」
「いいじゃんよ〜〜〜。こんな時しかチャンス無いんだから!」 うとうととしていたまま眠り込んでいたらしい。 ぼんやりと、子津と兎丸の声が聞こえてきた。 「……ん……?」 うっすらと目を開けると、そこにはどアップの兎丸の顔。 「っぎゃあぁあぁぁーーーっ!!」 「ちぇっ、起きちゃったじゃんかーーー。」 ぶーーー、と唇を尖らす兎丸。 「な、なな……っ!?」 あまりの驚きに言葉がまともに出ない。 「あ、くん、起きたんすね!その…、兎丸くんがくんの帽子を取ろうとして……。」 兎丸の横に子津が顔を出し、説明する。 「兎丸…、まだ諦めてなかったのか……。あっ、子津、有り難うな!助かったよ。」 ニカ、と笑って子津にお礼を言う。 すると、子津は少し照れた笑いを残して、顔を引っ込めた。 十二支波乱活劇7 〜楽しい初・合宿で大波乱〜
「ナギちゃん達も一緒にゲームしようよ〜〜〜。」
そんな事があってから暫く後、兎丸はGBAを手に持ち、凪達の座っている座席まで行った。 皆に1つずつ配っていく。 「(あいつ一体どれだけGBA持ってるんだ……?)なぁなぁ、兎丸〜〜〜。オイラも入れてくんない?」 座席の背中から後ろを見て声をかける。 「うん〜〜〜。いいよーーー!」 「やった!」 その一言と共に、座席から立って、後ろの座席に移動する。 「桃鉄かーーー。何か懐かしいな〜〜〜、昔兄さんとよくやってたよーーーー。」 兎丸からGBAを1つ受け取り、電源を入れる。 そして、皆でワイワイとプレイしていると……。 「負けた子はトップの人にキッスのごほうびってのはどうDaい?」 唐突に、虎鉄が言って来た。 「……いたんですか……。」 「な、何なんだよ…、その冷めた目Ha……。」 しかも、手にはちゃっかりとGBAが持たれている。 「しかも何なんですか、そのめちゃくちゃ狙ってそうなルールは。」 「まぁま、いいじゃねぇKa♪」 そんなの言葉も気にしない虎鉄。 「ふぅーーーん。じゃあ、こちらも勝手ルールを……。虎鉄先輩が最下位だったら、これから一週間語尾変換は無しにしま〜〜〜す。」 「えっ、本当……っ!?」 が言った言葉に、過剰に反応する兎丸。 もみじや檜もじーーーっ、と虎鉄を見ている。 「よーーっし、皆で頑張ろーーーっ!!」 「ちょっ、待てーーーっ!!」 1人、虎鉄の身を裂く様な叫び声が響いた……。 そんなこんなで伊豆に着き、宿に向かうと思いきやーーーーー……。
「さ、着いたぞ。」
羊谷がそう言ったのは……。 「すいません、これってどう見てもあの、マイナスイオンとか放出してて、最近テレビとかでも「森林浴」とか言われてる…森…にしか見えないんですけど……。」 肩を震わせながら、が言う。 「その通りだぜ?」 そんなの言葉に顔色一つ変えず、羊谷は答える。 「宿は何処なんだよ……っ!?」 部員の1人が言う。 「宿……?ここだよ、こ・こ。」 そんな部員の言葉に、羊谷は煙草の煙を吐きながら言った。 「じ…冗談じゃねぇぞ!じゃあ、野宿って事かよっ!!今回は「ゆかいな合宿」じゃなかったのかよっ!?」 その羊谷の態度に、猿野がほえた。 「そうっすよ!話が違いますっ!!」 子津でさえ、監督に抗議の声を上げる。 「ま…、落ち着け。話は最後まできけや。」 そう言って、羊谷監督は説明を始めた。 監督の話によると、野宿になるのは全部員中の3分の1。 合宿メニューのペナルティーなのだそうだが……。
その話の間に、マネージャーから部員達にコンパスと地図が配られていた。
意味も分からず、コンパスと地図を手渡される部員達は困惑するばかり。 皆の手に行き渡ったのを見て、監督が口を開いた。
「全員に行き渡ったと思うが、このコンパスと地図がお前らをゴールへと導くカギとなる。」
「ゴール!?って事はレースかっ!?それに、コンパスと地図ってっ!?」 「まさか…探検ゴッコとか……っ!?」 手にしたコンパスと地図を見て、部員が各々言う。 「ビンゴ〜〜〜。そのまさかだよ。」 その部員の言葉に、羊谷はニカッ、と笑った。 そう、この合宿の第1メニューはクロスカントリー。 2人一組で、助け合いながら山の向こうの旅館までたどり着け、と言う事だ。 しかも、先着は40名。 上手くその40名の枠内に入れたら、旅館でぬくぬくと過ごせる、と言う訳だ。 それ以下の部員達は、強制的に野宿組みに行く事になる。 何が何でも頑張らなければならない状態になった。
と、言う経過で、同学年同士でペアを決めるためのクジを引いたのだが……。
「ぅをい、この(クソ)監督さんよ〜〜〜……。」 次々とペアの相手を確認して、各ペアが気合を入れている中、地を這うようなに声が響いた。 「ぁん?何だ……?」 「なんだも何も!何なんだよっ、この「スカ」って書かれたクジは……っ!!」 は、羊谷に向けてでかでかと「スカ」と書かれたクジを掲げた。 「あ〜〜〜、それ引いちまったのか。それはそのままの意味だな。いや、一年の人数が中途半端に一人余ってなぁ……。」 あっはっは、と頭を掻きながら説明する。 「笑ってる場合か……っ!!じゃあ何だよ、オイラは即行失格になるのか……っ!?」 手に持ったクジをぶんぶん振りながら言う。 「いや、何もそんな事は言って無いだろ。ま、テキトーにどこかのペアに入れてもらうしかないよなぁ?」 「疑問系で言うな……っ!!」 ズビシッ、と気の抜けた顔で言う羊谷を指差す。 しかし…、周りを見回すが、入れそうなペアは……。 「HAHAH〜N♪よぅ、!何ならオレ達のペアに入るか?」 そんなに、声をかけたのは虎鉄だった。 「って、虎鉄先輩……。話聞いてなかったんですか、これは同学年ペアでしょう。」 軽々しくも肩なんかに手を置いている虎鉄に、は冷たい視線を送る。 「あーーー、そこ。別にお前は同学年じゃなくてもいいわ。」 「良いのかよ……っ!?」 遠巻きに羊谷が言った言葉に、ついツッコミを入れる。 「よっし!監督のOKも出たしっ、決まりだNaっ!!」 の肩に置いていた手をそのまま首に回し、を自分の方に向けさせる。 「ってえぇぇーーー!ちょっと待ったっ、勝手に決めないで下さい!自分の事は自分で決めます……っ!!」 そう言って、虎鉄からバッと離れて辺りを見る。
兎丸・司馬ペア……兎丸はまだ色々と諦めてないみたいだし、司馬には一回素顔見られたし……。要注意ペア、という事で不可。
子津・辰羅川ペア……何だかこれ以上子津に気を使わせるのも気が引ける…、って事で不可。 猿野・犬飼ペア……残るはここしかないわけだが…、色々と、色っ々と不安は山ほどある。(特に猿野。)しかし…、元々この2人って仲悪いみたいだし……。オイラが入って何とかしなきゃいけない気も……。 そんな事を考えながら、凝視していたせいだろうか、犬飼がこちらを振り向いた。 あ、ヤベ。目が合っちゃった……。
「お前…、オレと一緒に来るか……?」
何を言われるかとビクビクしていると、意外な言葉を言われた。 「えっ、ってか…良いのか……?」 その言葉にあっけに取られていると、犬飼が近寄ってきた。 「別に…、オレも一人だしな……。」 そう言う犬飼の後ろで猿野が喚いているが、この際無視と言う事で。 「犬飼が良いなら…、オイラとしては助かるし……。」 何だか初めてこんなに近距離で話したかもしれない……。 そんな事を考えつつ、は少しドキドキしていた。 「じゃあ…、行くか……。」 そう言って、犬飼はの頭にポン、と手を置きながら、横を通り過ぎた。 「あ…、あぁ……っ!!」 頭に置かれた犬飼の手が、兄の手と同じくらい大きくてすこしドギマギしながら、は犬飼の後ろを付いて行った。
合宿第1のメニュー、クロスカントリー。
今、その戦いは始まった。
「……ってか、最後までオレを無視するなーーーっ!!」
猿野は1人、2人の後を追い駆けた……。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「はい〜〜〜、男装(逆ハー)第7話、いかがでしたでしょうか……?やっとこ合宿ネタに入る事が出来ました!」 犬飼・「とりあえず…、内容がしょぼいな……。」 ハム猫・「そうですねーーー。何か意味分からなくなっちゃったよ。その上、何か最後の方は犬飼とのときめき入っちゃってますしね……。(死)」 犬飼・「意味分かんねぇよ……。」 ハム猫・「考えたら、まだ本編で辰羅川とか蛇神先輩とか猪里先輩とかまともに書いてませんね……。蛇神先輩は一応この先予定はあるんですが…、猪里先輩どうしよ……。(汗)あ、鹿目先輩も……。」 犬飼・「その前に、いい加減野球ネタを絡ませろよ……。」 ハム猫・「いや!何も聞こえない!何も聞こえないわ……っ!!」 犬飼・「何急に叫びだしてんだよ……。キモイぞ……。」 ハム猫・「最近飛び飛びにこのシリーズ書くものだから、主人公の性格って言いますか口調が分からなくなってきて、どんどん勇ましく……。(ポツリ。)」 犬飼・「ぁ?何か言ったか……?」 ハム猫・「いえいえ、こちらの話ですので……っ。」 犬飼・「まぁ、何だ……。とりあえずはまだ続くみてぇだから…、良かったらまた見てくれ……。」 |