「……これだね……。」

誰もが寝静まった夜中。
プラントマンはそう言うと、開いていた情報を閉じた。










ーーー君の笑顔、涙、心ーーー










3月始めーーーーー。


、ちょっと出掛けてくるよ。少し遅くなるかもしれないけど、心配しなくて良いから。』
「あぁ、はいはい。」
PETからプラントマンがそう声をかけて来た。
それは別に珍しい事でもなく、買い物にしても、彼は自分の物は自分で得たお金で買うので気には止めていなかった。
そう言う所は安心出来る。
「じゃあ、気を付けてね。」
そんな彼を、いつもの言葉で見送った。




「……あれ?そう言えば、プラントマンは……。」

あれから数時間。
友達にメールを送ってもらおうと思いPETを見るが、姿が無い。
「ぁ…、そっか。出掛けてたんだ……。」
その事を思い出し、いつもより遅いな、と思いながらも、手動でアドレスを入れ、送信する。
「……そう言えば、遅くなるかもって言ってたっけ……。」
送信完了の表示がされたPETを見て、ポツリと呟いた。





更に数時間ーーーーー……。

「遅い……。」
一向にプラントマンが帰ってくる様子は無かった。
すでに時刻は夜の11時を指している。
今まで、こんなに長く外出する事は無かったのに……。
「呼び出しも通じない……。何処行ったのよ……。」
きっと明日の朝には何事も無かったかのように、ひょっこり帰ってるんだ。
そして、また煩い一日が始まる。
「……そうだよね……。」
ポツリとそう呟きながらも、心の中が何だかざわつく。
「明日……。取り敢えず、明日まで待って……。」
きっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、はPETを抱いて眠った。










「……ん……?」
静かな部屋。
静かな空間。

翌朝、は目覚ましが鳴る前に目覚めた。
と言っても、ここ最近は目覚まし時計が鳴った事は無かったのだが。
何故なら、今はいない彼が、毎朝声を掛けていたから。
「……プラントマンは…、まだ帰って来てない……。」
ナビのいないPET。
何とも無機質な感じのする画面を見つめながら、自分の中で、昨日の不安が確かなものに変わっていくのを感じた。
「……何かあったんだ……。」


そう確信して、すぐにネット警察に捜索願いの届け出を出した。
しかし、何処に行くかを聞いていなかったので、捜索は難航した。
プラントマンの情報をインターネットシティに掲示し、目撃情報を集めたが、中々集まらなかった。
せめて、何をしに行くのかだけでも聞いておけば良かったと、自分を恨めしく思う。
自分でも出来る限り調べて、考えうる手は全て試してみたが、結果は得られなかった。





三日経って、五日経って…、一週間が過ぎた。


「プラントマン…、何処に行ったの……?」
今では、日に何度PETを覗いているか分からない。
十分、五分、見る度に不安が募る。
メールが来る度に、見つかったのかと心臓が跳ね上がる。
今では、深く眠る事もなく、彼が帰って来る夢を見て何度も目覚める。

「こんな形で…、もう会えないなんて……。」
今まで、「どこか行っちゃえ」とか、「消えてよ」とか、散々酷い事を言ってきた。
まさか、まさか……。
今では謝る事も出来ず、胸がズクズクと痛む。
「……お願いだから、帰って来てよ……。」
そう呟いて、ソファーで丸まる。
もう、呼び掛けてくる事の無い、PETを抱きながら……。



ーーーーー。



『……、……ッ、……ッ。』
懐かしい、声がする……。

「……ん……?」

うっすらと目を開けると、部屋を薄い明かりが満たしていた。
夜が明けた事を告げていた。

『……大丈夫かい……?大分疲れているようだけど……。』

「……え……っ。」
空耳ではないその声のする方を見る。
そこには、今までのように、PETの中にプラントマンがいた。

「プラン、ト…マン……ッ!?」

目を何度擦っても、その姿は消える事は無く。
『ただいま、。間に合ったようだね。』
その声は、決して遠のく事は無かった。
「今まで、何処行って……っ。って、その傷……っ!!」
よく見ると、プラントマンはあちこち傷だらけで、かなりのダメージを負っているようだった。
「ちょっと待って!すぐ治すから……っ!!」
もしもの時のために、机の上に用意していたリカバリーチップを急いで転送する。
間に合ったのか、一枚、また一枚と使っていく内に、プラントマンの傷は段々と癒えていくようだった。
「大丈夫っ!?もう痛い所無い……っ!?」
見た目の傷は癒えた頃、やっとはPETを真っ直ぐ見た。
何日ぶりだろう、彼とこうやって向き合うのは。
『有難う、。もう良くなったよ。』
プラントマンは、を安心させるように優しく微笑んだ。
「……ったぁ……っ。良かったぁ……っ。」
そんなプラントマンを見て、の瞳からポロリと涙が溢れた。
その一滴が切っ掛けになったように、次から次へとポロポロと流れてくる。
「も…、会えない…って……っ。」
嗚咽を堪えながら、ぽつりぽつり話す
『…………。』
大粒の涙を流すを、PETの中から見つめる。
「……ごめんなさいも…っ、まだちゃ…と、伝えてなかった、に……っ。」
が謝る事なんて、何一つ無いよ。』
そう言っても、一向に泣き止む気配は無い。
「……っ寂しかった…っ、会いたかった……っ。捜したんだよ……?ずっと、ずっと、不安で……っ。」


「泣かないで、……。」


必死に涙を拭っていると、優しく包み込まれる感触。
「心配かけてごめん…、君を泣かせたかった訳じゃないんだ……。」
抱き締められると温かくて。
頭を優しく撫でてくれる手が、心地良くて。


ーーーあぁ、他の誰かじゃ、駄目なんだな…と思う。ーーー


「一体…、今まで何処行ってたのよ……っ。」
未だに顔は、彼の胸に埋めたまま尋ねる。
「あぁ、ちょっと裏インターネットに。」
「…………っ!?」
何事も無いと言う風に、軽く答えたプラントマンの言葉に、は咄嗟に顔を上げる。
「……な……っ!?」
余りの驚きに、止まらなかった涙も一瞬止まる。
「君へのプレゼントを取りにね。」
そう言って、PETを指差すプラントマン。
見ると、中で綺麗な白い花が輝いていた。
「裏インターネット……。闇が支配するその世界に、純白の花が咲く…と言う噂を聞いてね。」
「ぅ、噂って……っ!?そんな不確かな情報を信じて行ったの……っ!?」
傷は癒えたとは言っても、あれだけ負傷していたのだ。
かなりの相手と戦って来たのだろう。
「でも、真実だった。……まぁ、行ってみれば、それはデータの結晶体だったけれど…、でも綺麗だろう……?」
そう言って、肩をすぼめる。
「……〜〜〜〜っ馬鹿っ!!プラントマンの馬鹿!死んじゃったらどうするのっ!?」
余りにあっけらかんと答えるプラントマンに、段々と体が震えて来る。
「私があんな光の無い所で死ぬわけ無いだろう?それに、死ぬのはの腕の中で、と決めているからね。」
「馬鹿っ!!」
そう叫んで、プラントマンの胸を叩く。
止まっていた涙は、一層激しさを増して溢れて来た。
「そんな事言うなっ!!許さないから!死んだら絶対許さないから……っ!!」
目一杯の力で、プラントマンを叩く。
もう、顔は涙と寝不足でぐちゃぐちゃだったけど、頭が混乱して止まらなかった。
「……本当にごめん……。君が笑ってくれるかと思ったんだ……。ホワイトデーだから…、君に何かあげたかった……。」
そのプラントマンの言葉に、ピタリと動きを止める
「……んな…、そんな事で……っ。」
そう呟きながら、ズルズルと力が抜けて行く。
「何も…、いらなかったのに……。こんなに心配するくらいなら……っ。」
体中の力が抜けて、もう今ではプラントマンにもたれ掛かる形だったけれども。
「……こんな…、こんなに……っ。」
「……ごめんよ……。」
力無く、ただ泣き続けるを、プラントマンはしっかりと抱き止め、包み込んでいた。
はらはらと流れる涙。
その分だけ、心配されて、その分だけ、愛されていると感じながら……。





「……少しは落ち着いたかい?」
あれから暫く泣き続けて、やっと涙が止まった。
「……ん…、色々と、ごめん……。」
今では、今までの溜まった疲労に涙の跡で、目元は腫れてしまった顔を俯かせる。
「ずっと…、寝れてなかったんだろう……?今はもう休むと良いよ。何かあれば、私がやっとくから。」
時計を見れば、まだ午前5時。
をベッドに座らせて、優しく頭を撫でる。
そう言ってから、つと立ち上がろうとすると……。
「……ねぇ…っ、また、何処かに行っちゃうの……?また、目が覚めたら、プラントマンは消えてるの……?」
立ち上がろうとしたプラントマンの手を、がキュッと掴んだ。
「……いいや、。私はもう何処にも行かないよ。大丈夫、が目が覚めても、また次の日目が覚めても、ずっと側にいるから……。」
そう言って、優しく抱き締める。
「……、手を出して。」
そして、そっと耳元で呟いた。
「…………?」
その言葉に、首を傾げながらも、右手を差し出す
その手を優しく握り……。
「こうやって、手を繋いでいたら私がここにいる事が分かるだろう?大丈夫、ずっと握っていてあげるから、安心して眠ると良い……。」
「……プラントマン……。」
そう、優しく言うプラントマンに安心したのか、は手を握ったまま横になった。
「本当に…、ずっと繋いでてくれる……?」
「あぁ。だから、もうお休み……?」
横になると、緊張の糸が切れたかのようにトロンと眠そうな目をするに微笑む。
「……ん。じゃあ…、お休み……。」
最後にキュッと、握る手に力を込めて、はゆっくり目を閉じた。
「お休み、……。」
そう言って、もう片方の手での髪を撫ぜる。
すると、眠ったかと思ったがピクリと腕を引っ張った。
「……気になったかい……?」
撫でていた手を引いて、に尋ねる。
「うぅん…、気持ち良い……。あのね……。」
うとうとと、微かに口から漏れる言葉は、小さくて。
「ん?」
目も開けられないくらいに疲れているの口元へ、耳を寄せる。
「……ホワイトデーのプレゼント…、ありがと……。」
最後に、そう言って、はゆっくりと寝息をたて始めた……。



「……有難う、……。」



今では本当に寝付いてしまったを前に、プラントマンはそっと呟くと、の手を両手で包んだ。


















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「あんたら誰?」

プラントマン・「ホワイトデーネタの開口一番がそれかい?」

ハム猫・「いや、もう、いつものノリを書いてると、シリアス書くと違和感バンバンだね!」

プラントマン・「……じゃあ書かなければ良いだろう……。」

ハム猫・「だってネタが出来たんだもん。」

プラントマン・「……はぁ……。」

ハム猫・「で、この後は、次に目覚めて現実に戻ると書いていつものノリに戻った夢主さんに、散々罵詈雑言を浴びせられるプラントマンさんでした。」

プラントマン・「今までの雰囲気丸潰しだね。」

ハム猫・「いつまでも良い思いが出来ると思うなよ。」

プラントマン・「勝手に書いて勝手に怒らないでくれるかな?」

ハム猫・「だってやっぱりいつものノリじゃなきゃ偽者臭くて駄目なんだもの!」

プラントマン・「まぁ、君が書いてる時点で偽者なんだけど……。しかし、今回もタイトル適当だね。」

ハム猫・「後書き書きながら適当に決めました。」

プラントマン・「いっそ潔いくらいにきっぱり言ったね。まぁ、突っ込みだしたら後書き終わらないんだけれどね、君の場合。」

ハム猫・「うん。そんな感じで今後もやって行きます。うっかりプラント夢の数が恐ろしい事になってるけど。」

プラントマン・「無理矢理終わらせたね……。じゃあ…、こんな管理人だけど、一応まだ増えるみたいだから、良ければまた覗きに来てくれるかな。また会える事を願っているよ。」



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