「なぁ、〜〜〜、写真撮らせてくれよーーー。」
「…………っ!?い、嫌……っ!!そんなに写真撮りたいのなら、猿野君を撮れば良いじゃない……っ!!」 友達と笑って話していたは、急に顔をこわばらせて言った。 「いや、あいつの写真なんて撮りたくねぇから……。」 沢松は、そんなの言葉に、げっそりと返した。 そんな会話が繰り広げられているのは、1年B組の教室である。 毎日のように、にカメラ片手に迫っている(?)この男は沢松健吾。 報道部、野球部取材班である。 片や、この毎日のように沢松に言い寄られている(?)少女は、先程も言った様に。 特別目立つような人物ではないのだが、沢松にターゲットにされている。 これが始まったのは、つい最近、ーヶ月ほど前だった。 ーーー君の笑顔ーーー
「って言うか、あんたそれってかなり怪しいわよ。」
と話していた、友達の皐月が言う。 「……ぐっ。言ってくれるじゃねぇか……。」 一瞬、沢松が引く。 「っ俺はなぁーーー、キャメラマンなんだぜっ!?人撮って何が悪いってんだ……っ!!」 「じゃあ、私を撮りなさい。」 キッパリと返す皐月。 その姿は仁王立ちだった。 皐月のその言葉にがっくりとくず折れる沢松。 「やっぱり皐月ちゃんはすごい……っ!!」 皐月の後ろに隠れていたが感嘆の声を漏らす。 「今日もまた、おめーの負けだな。」 そんな沢松の後ろから声をかけたのは、鬼ダチ(?)の猿野であった。 「天国…、お前何時の間に……。」 「フフ、お前の後ろを取ることなんざ、昼飯前よ。」 胸を張って言う猿野。 「お前何言ってんだ……。それ言うなら、朝飯前だろ……。」 「そんなにが撮りたいのなら、盗撮でも何でもすればいいだろっ!!」 冷ややかにツッコミを入れる沢松を無視して、猿野は熱く言った。 「それじゃ、犯罪だっつーの……っ!!お前と一緒にすんなっ!!」 沢松をズビシッ、と指差して言う猿野に、高速ツッコミを入れる。 「……はっ……!!」 気が付くと、そんな会話を繰り広げる二人を、と皐月がとても冷ややかな目で見ていた。 「ば、馬鹿……っ!!本気にすんなってっ…、俺はただの……っ!!」 「「の…何(何だ)……?」」 つい口が滑りかけてしまった、と思った時にはもう遅い。 猿野と皐月が沢松にじりじりと迫っていた。 「いや…、何でもない……っ。」 迫られるごとに、後退していく沢松。 「だぁあーーー、もう!観念して、はきやがれ……っ!!何、甘酸っぱい思い抱いてんだよ……っ!!」 とうとう、猿野がキレて、沢松に襲い掛かった。 「ギ…、ギャアァアァァーーーッ!!し、死ぬ……ッ。」 哀れ、沢松は猿野のかけた絞め技が決まり、息絶えた。 「ちょっと、何やってんのよ、猿野。聞きそびれちゃったじゃないの。」 皐月が腕を組みながら猿野に言う。 「あ…、すまねぇ。いつもの癖で……。」 そんな二人を、は少し怯えて見ていた。
そう、あれは、俺が報道部に入って間もない頃だったーーーーー。
(↓ここからは、生死の境を彷徨っている沢松さんの語りです。↓)
早くカメラに慣れたくて、かっこいい写真を撮れる様になりたくて……。
あちこちで、写真撮ってたっけ……。 あの日も、食堂で天国と昼飯食いながら、何かテキトーにそこら辺のもの撮ってたんだよな……。 その時は、全然気付かなかったけど…、現像してみたら、ある一枚の写真にすっげーいい顔して笑ってる女の子が映ってた。 って、言っても端っこの方に小さく入ってただけなんだけど……。 それがーーー、だった。 それから、の笑顔をもっと近くで、もっと綺麗に撮りたくて、ずっと頼み続けてるんだけど、カメラを構えると、何でかあいつって笑うの止めちゃうんだよな。 何でだろ、あんなにいい顔して笑えるのに……。 もったいねぇ……。
「……ん……?」
沢松が気が付くと、そこは保健室だった。 が顔を覗き込んでいる。 「あっ…、気が付いたんだね……。」 少し、おどおどとしながら言う。 「んぁ…、あれ?天国達は?」 頭を押さえながら起き上がり、周りを見て二人がいない事に気付く。 「あ、あのね、皐月ちゃんと猿野君なら梅星先輩のところに行ってるよ。」 「あ?何でだ?」 あの二人はそんなに顔見知りではないはずだが……。 「何でも…、理由を聞き出せなかったから梅星先輩に聞きに行くんだって。何か知ってそうだからって……。」 「あんの馬鹿野郎……。」 その言葉を聞いて、悪態をつく。 こんな事が梅星先輩に知れたら、先輩にも色々聞かれちまいそうだ。 あの先輩しつこいからなぁ……。
「ところで、さ。ずっと気になってたんだけど、って何でカメラ向けたら笑うの止めるんだ?」
ちょうど、猿野も皐月もいないので、この機会に聞いてみよう、と思った。 「え……っ!?」 その瞬間、は顔をこわばらせた。 「いや、だって、ってさ、友達とかと話してるときは自然に笑ってんのに、何でカメラ向けたら途端に笑うの止めるのかなぁ〜〜〜って……。」 の顔を覗き込みながら尋ねる。 「…………っ!!し…、知らない……っ!!」 は、そんな沢松にフイ、と顔を逸らし、言った。 「知らないって…、自分の事だろ……。」 オイオイ、と内心思いながら、が悲しそうな顔をしているのに気付く。 「おい、どうし……。」 「じゃあねっ、もう行くから……っ!!」 はそう言って、保健室を出て行ってしまった。 「何なんだ……?」 1人残された沢松は、頭に?マークを浮かべていた。
「よぉ、何か聞き出せたか?」
暫くして、俺が教室に戻ると、天国と皐月は顔を見合わせて机に座っていた。 「あっ、沢松、どこ行ってたのよ……っ!!」 俺の顔を見た途端に、皐月が詰め寄ってくる。 「ぁん?んなの、そこの馬鹿猿に絞められたから保健室で寝てた(気失ってた)に決まってるだろ。」 「あんた、に変な事しなかったっ!?」 俺の答えも聞かずに、胸倉を掴んでくる。 「…………?どうしたんだ……?」 俺が聞くと、皐月は少し顔を歪めた。 「あの子…、授業に出てないのよ……。」 「……あ……?」 「私達が報道部に行って帰ってきたら、もういなかったのよ。あの子、今までこんな事無かったのに……。」 少し落ち着いて、皐月が言う。 「なら、俺が気が付いた時は保健室にいたけど……。」 「そん時にを保健室のベッドに押し倒……っ!!」 俺が記憶を辿って言うと、すかさず天国が口を挟んできた。 「その時に、俺が「何でカメラ向けると笑うの止めるんだ?」って聞いたら顔色変えて保健室出てっちまったぜ。」 そんな天国を二度と喋れないようにしてから、皐月に向かって言った。 「…………っ!!……そう、その事…聞いちゃったの……。」 その瞬間に、皐月は悲しげな顔をした。 「何か…あったのか……?」 皐月に詰め寄る。 「……あの子…は、昔……。」
「へへ…、初めて授業さぼっちゃった……。」
校舎裏で、は泣いていた。 「さ、もっとお食べ。」 足元には、猫達がいる。 最近が見つけた猫の親子である。 がやっているパンを、元気よく食べている。 「あーぁ、沢松君にも悪い事したなぁ……。」 そう言って、空を仰ぐ。 その時、子猫がの手をなめた。 「ふふ、慰めてくれるの?」 そう言って、その子猫を膝に抱き上げる。 「ありがとう、優しいんだね。」 そう言って、子猫に笑いかけた瞬間ーーーーー……。 パシャッ
「え……っ!?」
音がした方を振り返ると、そこには沢松がいた。 「の笑顔いただきっ!!」 手にはカメラーーーーー。 「ひ…ひどい……っ!!何も言わないで撮るなんて……っ!!」 が、半ば混乱しながら言うと、 「おかしくなんか無い。」 沢松は、真顔で言った。 「…………っ!?」 の体が強張る。 「おかしいって言った奴の頭がいかれてたんだ。」 「やめてよ……っ!!」 沢松が、一歩一歩に近づく。 そして、手を伸ばせばに触れそうな距離まで近寄ってーーーーー……。
「あの子ね…、昔…、中学の時に、好きだった男子に、集合写真見て「笑った顔が変」って言われたのよ……。」
皐月は、あたかもそれが自分の痛みであるかのように、辛そうに言った。 「……ひでぇ……。」 「その当時は、ホント、普通にも笑えなくなる程で……。今では普通に笑ってるけど、やっぱりまだカメラには抵抗があるみたいなのよね……。」 それきり、皐月は黙ってしまった。 親友だからと言って、勝手に過去を話してしまったのは、やはり辛いのだろう。
(そうか……。それで…、それで、俺がカメラを向けると……。)
沢松は、暫く考えると、急にカメラを片手に教室を飛び出した。 とにかく、を見つけない事には何も始まらない。
「の笑顔は、俺が今まで見てきた中で最高の笑顔だよ。」
優しく微笑んで、言った。 「……ぅ…、嘘……。」 は、そんな沢松の言葉を、俯いて、怯えるようにして塞ぎ出してしまった。 「嘘なんかじゃないって!」 沢松は、の肩をしっかりと掴んだ。 「俺がずっとを追っかけてたのは、の笑顔が撮りたかったからなんだぜ……っ!?」 「ぇ……?」 その言葉に、は少し顔を上げた。 そんなに視線を合わせ、沢松はある物を差し出した。 「これ見ろよ。俺が、ずっと前に…、報道部に入りたての頃に撮った写真だ。」 そこには、食堂の風景が写っていた。 何気ない、昼のひと時だった。 「よっく見てみろ。こん中にお前がいるんだ。この写真があったから、俺はお前の笑顔が好きになったんだ。」 が、その写真を隅までよくよく見てみるとーーー…、いた。 写真の端の方に、小さく。 これは、皐月とお弁当を食べている時だろうか。 笑顔の自分がいた。 「な、いただろ。、お前、最っっっ高の笑顔で笑ってるぜ?俺、この写真見たら、もっとこの子の笑顔を近くで、綺麗に撮りたいって思ったんだ。だから、お前に毎日頼んでたんだよ。」 「だって……。」 その写真を手に、はポツリと呟いた。 「だって…、笑った顔が、変って……。」 見る間に、その写真に涙の粒が落ちて行く。 「あぁ〜〜〜、もう……。」 そんなを見ながら、沢松は頭を掻き、 「俺が保障するよ。お前の笑顔は世界一だ。……それとも、俺の保障じゃ不満か?」 を、優しく抱きしめた。 「…………。」 腕の中で、が静かに頭を横に振るのが分かった。 そして、静かに泣き続けた。
「よっ、こ〜のキザ松め!」
次の日、教室に入った途端に、猿野が絡んで来た。 「あ?」 そんな猿野をジト目で睨む。 「これなぁ〜〜〜んだ?」 そう言って、猿野が沢松の目の前に差し出してきた物ーーーーー……。 それは、昨日、沢松がを抱しめた瞬間の写真だった……。 ピシッ
石化する沢松。
「「俺が保障するよ。お前の笑顔は世界一だ。」なぁ〜〜〜んて、よく言うぜっ!!」 目の前で、ゲラゲラと笑う猿野。 「って…んめぇ〜〜〜っ!!」 自力で何とか石化を解いて、猿野に掴みかかる。 「その写真よこせやーーーっ!!」 追い駆ける沢松、逃げる猿野。 「へへ〜〜〜んっ、梅星先輩が大量焼き増ししてるもんね〜〜〜っ!!」 猿野のその言葉に、沢松は眩暈を覚えたと言う。 それでも追い駆けるのが男と言うものだろう。 全身全霊を懸けて猿野をボコらねば、気がすまない。 そんな沢松の制服の裾を、誰かが引っ張った。 「…………っ!?」 急な事に驚いて振り返ると、そこにいたのはだった。 「あっ……。」 自分でも、昨日の事が思い出されて、だんだん赤面してくる。 すると、がつと、つま先立ちして、沢松の耳元で囁いた。
「ぁ、あのねっ、私、まだカメラには抵抗あるけど、いつかきっと、沢松君に最高の笑顔撮らせてあげるねっ!!」
〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「ハ〜〜〜イ、目指せメイン全キャラ制覇なカンジで沢松さんでっす。」 沢松・「意味分かんねぇーっての。」 ハム猫・「いやぁ〜〜〜、過去にやったドリームアンケートで沢松票入ってた時は嬉しかったっ!!色々とうけるコメントもあったなぁ……。」 沢松・「まぁ、内容はどうであれ、これでやっと俺様の作品が1つ出来たわけだな。」 ハム猫・「内容はどうであれって何さ……。」 沢松・「え〜〜〜っと、蛇神先輩が今の所トップか……。頑張って追い越せよ!」 ハム猫・「無理です♪他にも書きたい人とかいるんだし〜〜〜。」 沢松・「そんなのは愛の力でカバーしろ。」 ハム猫・「いや、だって、もう使いたいネタ使っちゃったし……。」 沢松・「ネタ考えるためにお前の頭はあるんだろっ!!ゲームとかする暇があったら俺様のネタを考えろ。」 ハム猫・「う゛……っ!!分かりましたよぅ〜〜〜、気が向いて、適度に時間が空いたら考えます〜〜〜。」 沢松・「今、聞き捨てならない言葉が……。」 ハム猫・「まぁ、ネタなんて、考えて無くても急に閃いたりするもんですが。」 沢松・「まっ、全国○万人のハンサム教徒の皆!ハム猫がもっと俺様の話を書くように、色々とよろしくっ!!じゃあな、また会えると良いなっ!!」 |