「ぅう゛〜〜、こうじゃなくて〜〜〜っ!!」
MaHa弐番のスタッフルームにて、はパソコンの前で唸っていた。

「ここをこうしたいんじゃなくて…、こう……。あぁっ、また失敗したっ!!」
カタカタとキーボードを打っていたは、度重なる失敗に、机をバンッと叩いた。

「あぁ〜ん、もうっ、チップが無駄になっていく〜〜〜……。」
机の上には何枚ものチップが散乱していた。
「どうしてこう、私はチップ作りが下手なの……。」
そのチップをガッと掴んで、意気消沈した様子で椅子を立ち上がる。



カツン……ッ



「はぁ〜〜〜、これじゃあ間に合わないよぉ……。」
長い溜息を吐きながら、は店の裏へと続く扉へ向かった。










ーーーハートをあなたにーーー










「ん?これ何かしら……?」
が去った後のスタッフルーム。
休憩に入ったまどいが覘くと、床に一枚のチップが置かれていた。
「……見た所オリジナルチップみたいだけど……。」
拾い上げて、目の前に掲げる。
柄としては、何かのプレゼントの箱…のような物が描かれている。
色合い的にも、可愛らしい雰囲気を醸し出していた。
「……の忘れ物かしら……?、いるーーー?」
チップを手に、まどいはを探す。
しかし、キッチンを覘いても更衣室を覘いても、はいなかった。
「……何処行ったのかしら……。でも可愛い柄ね…、ちょっと位使ってみても良いわよね?」
きょろきょろと周りを見回して、フフ、と笑いPETを取り出す。
一体どんな効果が発揮されるのか、少し楽しみに思いながら、まどいはそのチップを差し込んだ。










「はぁ…、これで何枚目だろう……。」
その少し前、は裏のゴミ箱を覗き込んでいた。
手には、先程掴んだチップが持たれていた。
「うぅ、こうやって私のお小遣いは消えて行くのね……。」
涙が出そうになるのをグッと堪えるように目を閉じて、は手を広げた。



カツン……ッ



広げられたの手から、チップはゴミ箱の中へと消えて行った。





「……っしょ!」
ヒノケンは、キッチンに溜まったゴミを裏のゴミ箱へと運んで来ていた。
ゴミ箱のふたを開けようとしてフと立ち止まる。
足元に何かを発見した。
「……何だぁ、こりゃ……?」
拾い上げた小さな物はチップだった。
可愛らしい箱の柄の、オリジナルチップ。
「何でこんな所にチップが……?」
不思議に思いながらも、ヒノケンも一応ネットバトラー。
見た事の無いチップを見れば、どんな効果があるのかは気になる。
「……どうだ、ファイアマン。ちょっと試してみるか……?」
PETを取り出し、相棒に聞く。
『……どんなチップか分からないのに使うのは危なくないか……?』
効果が現れる側としては少し警戒してしまうのは当たり前なのだが、そんな忠告は聞き入れられなかった。
「大丈夫だろ、きっと回復系だろうと思うし。」
そう苦笑しながらも、ヒノケンはチップを差し込んだ。










「……ん〜〜〜、これが一番理想に近い形にはなってるんだけどなぁ……。」
はキッチンで一枚のチップを眺めていた。
「何で上手くプログラム出来ないんだろう……。どこが間違ってるのかなぁ……。」
手に持ち、天井へかざす。
「もう日が無いのに……。これじゃあ上げる物がなくなっちゃうよ……っ。」
悲しそうにそう呟き、カツンとテーブルにチップを置く。
腕を組み、顔を埋めるようにして座り込んだ。
「……あれ……?私…、あそこはどうやってたっけ……?」
そして、フと顔を上げる。
「あそこは…、今までは確かあぁやってたけど……。」
そして、今までの自分のプログラムを頭の中で組み直す。
「…………!そうだっ、あそこだ……っ!!」
思い出した結果、今まで自分が間違えていた致命的なミスに気が付いた。
「うん、これで大丈夫なはず!確か一枚チップ残ってたし……!最後にもう一回試してみよう……っ!!」
はそう言うと、再びスタッフルームのパソコンへと向かった。





「……ん……?」
キッチンの奥から出てきたマハ=ジャラマは、テーブルの上に先程まで無かった物があるのを見つけた。
「これは…、チップ……?」
手に取り、確認する。
見た所知らないチップのようだった。
名前も何も書いていない。
柄は可愛らしい色合いでまとめられたプレゼントボックスのような物。
オリジナルチップだろうか、とも思ったが、何故ここにこんな物が……。
「…………。」
暫く眺めていたが、マハ=ジャラマはおもむろにPETを取り出した。
「回復系…ですかね……。」
最近チップも買っていないし…と言う訳ではないが、もしかしたらレアな物であるかもしれない。
その思いもあり、何気なく、チップを差し込んだ。










「これが…こうで……。……っ出来た!」

カシュンッ

が叫んだ瞬間に、機械からチップが出てきた。
今までと同じデザインのチップ。
ただ、一つ違う所を言うとすれば、チップの名前が入っている所だ。
「これで明日皆にあげられる……っ!!」
はそう言いながら、そのチップを嬉しそうに抱きかかえた。

その瞬間ーーーーー……。





「きゃあぁあぁぁーーーっ!?」
「ぬぉ……っ!?」
「……な……っ!?」





それぞれ、店・外・キッチンから三者三様の悲鳴が聞こえた。

「ど、どうしたんですか……っ!?」
は、その悲鳴の場所があまりにもバラバラ過ぎて、まず何処へ行けば良いのか分からず、咄嗟に椅子から立ち上がった。
「今の声って…まどいさんにヒノケンさん、マハ=ジャラマさん……っ!?」
そう言いながら、取りあえずは店の方へと足を向けた。
「な、何があったんですか……っ!?」
行ってみると、丁度3人が集まって来た所だった。
「何がも何も無いわよ!このチップ差し込んだら……っ!!」
「オレもこのチップ使った瞬間にファイアマンが!」
「私も、これを差した途端に……っ。」
3人同時に、手に持ったチップをに見せる。
「あんた達も……っ!?」
「お前らもか……っ!?」
「あなた達も……っ!?」
互いにそのチップを見て、またも声をそろえて叫ぶ。
「何なのよ、このチップ!可愛い柄だから試してみたら……っ!!」
憎々しげにそのチップを床に投げつけるまどい。
「あぁ、俺ももっと怪しむんだったぜ……っ。」
「しかし、一体誰がこんなに……。」
ヒノケン、マハ=ジャラマも怒り心頭というように言う。
「…………。」
そんな様子を見て、は固まっていた。
ただただ青くなり、冷や汗を流すばかりだ。
は大丈夫?変なチップ拾ってないでしょうね?」
暫く文句を言った後に、へと視線を向けてまどいが尋ねる。
「そうだ、こんだけあったんだ、他にもあるかもしれない。」
ヒノケンも、言う。
「…………。」
しかし、は言葉を口にする事が出来なかった。
ますます顔色は悪くなる。
「…………?どうしたの、顔真っ青よ?」
そんなの態度に気付いたまどいは、に近付き心配そうに尋ねた。
「……っ、ごめんなさい……っ!!」
そんなまどいの手が、に触れる直前、は凄い勢いで頭を下げた。
「……は……?」
その様子に驚いたヒノケンは、素っ頓狂な声を上げる。
「ど、どうしたの、……?」
全く状況が読めないまどいは、いつまでも頭を上げないにどうして良いか分からず困惑する。
「……っそのチップ…、私が作ったんです……っ!!ごめんなさい……っ!!」
我慢出来ずに、床に涙をこぼしながら、は謝った。


「「「……っはぁ……っ!?」」」


そのの言葉に、3人はワンテンポ遅れて驚きの声を上げた。
「いや、その、本当はそんなチップが作りたかったんじゃなくて……っ。その、それは失敗作なんですけど……っ!!」
未だに下を向きながら、はしどろもどろと説明する。
「いや、ちょっと待て!失敗にしてもだ、何でこんなあちこち落ちてるんだ……っ!?」
頭を上げないの肩に手を置きながら、ヒノケンは問う。
「……お、落ちてた……?」
そのヒノケンの言葉に、は咄嗟に顔を上げてしまった。
「……ぇ、何で……っ!?私、失敗作は捨てたはずなのに……っ!?」
は頭を抱え、混乱を深めていく。
「私はスタッフルームで拾ったけど……。」
「俺はゴミ捨て場で……。」
「私は、そこのテーブルで……。」
各自、拾った場所を言っていく。
それは、が順番に通った場所だった。
「……もしかして…、私、落として行っちゃった…の、かな……?」
すでに混乱も極みに入り、頭を抱えてしゃがみ込んでしまったは、ポツリと自分の失態を口にした。


「「「…………。」」」


その言葉に、3人は沈黙する。

「うわあぁぁーーーんっ!!ごめんゴメンっ、皆、無事っ!?生きてる……っ!?死んでない……っ!?」
全ては自分が招いた事だと知ったは、3人のPETを順番に覘きながら涙ながらにナビを見て回る。
「……っいや、だ、大丈夫だヨ…っ、……っ!!」
「あ、あぁ…、ちょっとばかしビックリしただけよ……っ!!」
「そうですとも、あれ位の爆発、私達には……っ!!」
ボロボロと涙を流すを見てしまっては、元々彼女に弱いと言うのを差し引いても、強気に出てしまう。
各自、爆発で黒く煤けている体で、無理をして笑っていた。
「ぅ゛えぇえ〜〜〜、ゴメンねっ、私本当にチップ作るの下手くそで……っ!!」
そんな皆のやせ我慢に気付いてか気付かずか、の目にはますます涙が溜まっていく。
「うぅう〜〜〜っ、折角完成したのに……っ。」
どんどん涙が出てくる目を、ゴシゴシとこする。


と、その時ーーーーー……。





「……皆、そんな所で何してるんですカ?」
珍しく配達に行っていたエレキ伯爵が店に帰って来た。
4人が固まっているーーその上には泣いているーー事に、疑問に思い声をかける。
「……あ、エレキさん……っ。」
涙目で、はエレキ伯爵を見つめる。
『な、何があったんだ……っ!?』
エレキ伯爵が声をかけるより早く、エレキマンが叫んだ。
何よりもまず、が目を赤くして泣いている。
そして、ファイアマン達を見れば皆ボロボロに傷付いている。
一体自分達がいない間に何が起こったと言うのだろう。
「うぅう…、エレキマァン……ッ。」
すると、今度はが自分の名を呼びながら再び大粒の涙を流し始めた。
『……えっ、……っ!?』
全く意味の分からないエレキマンは焦るばかり。
「ごめんね…っ、ごめんね……っ!!」
はただ涙を流し謝るばかりだった。
「……ねぇ、。あなたがわざとこんな事する子じゃないって事は私達が良く分かってる。怒らないから、何をしようとしてこうなったのか、説明してくれる?」
ゆっくりと、優しく。
の肩を抱きながら、まどいは尋ねた。
「……っぁ、明日は…、バレンタインだから……っ。」
は、そんなまどいの言葉にゆっくりと、言葉を紡ぎ始めた。
その言葉に、皆が耳を傾ける。
「……っふ、ナビの…皆にも、何か上げたくて……っ。オリジナルチップ作ろうとして…、でも中々上手く出来なくて……っ!!失敗してばかりで……っ!!」
静かな店内に、の嗚咽の声と、一生懸命に話す言葉だけが響く。
「私、馬鹿だから……っ!!」
顔を涙でぐしょぐしょに濡らしながら、は悔しそうに呟いた。
「……でも、そのチップは成功したんでしょ……?」
涙をごしごしと拭う手に持たれた一枚のチップ。
それに気付き、まどいは優しく手を開かせた。
そこには、一枚のチップ。
たった一枚の、成功したチップがあった。



「……まどいさん……。」



自分を真っ直ぐと見て微笑んでいるまどいを見て、は呟く。
「それ、成功してるなら、今から上げれば良いじゃない?」
そう言って、手のひらの上のチップを指差す。
「失敗したのは、私達が勝手に使ったのが悪いんだし。それにあなたは皆の事を思って作ったんでしょ?なら、皆もそのチップを欲しいはずよ。」
まどいはそう言うと、軽くウィンクした。
「……皆…、もらってくれる……?」
まどいの言葉に、恐る恐るナビ達に問いかける
ナビ達は、その問いに大きく首を振る事で答えた。
「…………っ。」
そんなナビ達に、最後の涙を大きく拭う。
「じゃあ…、皆をプラグインさせてもらえますか……?」
その言葉に、まどい達4人は、手近なキッチンへとナビをプラグインさせた。
「それで…、これ、スロットインしてみて下さい。」
そう言って、は持っていたチップを、エレキ伯爵に渡した。
「…………。」
大事そうにそのチップを受け取ったエレキ伯爵は、皆に目配せすると、カシャン、と静かにスロットインした。



その瞬間ーーーーー……。


『こ、これは……っ!?』
エレキマン達、4人のナビの目の前に突如出現した箱。
綺麗にリボンをかけられて、ラッピングもされている。
それが現れ、落ちる所を皆受け止めた。


ーーー失敗作ではこの箱が開くと途端、爆発したのだが……。ーーー


『…………っ!?』
自動的にリボンが解かれ、箱が開かれると、そこからは綺麗なピンク色のハートが出て来た。
『……これは…、ハート……?』
未だに箱を手に持ったまま、目の前に浮いているハートを不思議そうに見ていると、そのハートが瞬間的に砕け散り、自分の体に入っていった。
『…………っ!?』
吸収されていく桃色の欠片を見ながらも、自分の体に起こっている変化に気付く。
『HPが…、上がっていく……っ!?』
自分の中で起こっていく変化。
それは、自分の上限HPが上がっていく感覚だった。
周りを見れば、今までのダメージで傷付いていたファイアマン達も回復していっていた。
『…………っ。』
その奇妙な、しかし何処となく暖かく心地良い感覚を感じながら、エレキマンはへ視線を向けた。
「……っへへ、これがね、作りたかったの……っ。ずっと失敗ばっかりだったし…、一日早いけど…、貰ってね……っ!!」
涙の跡は残っていたが、今ではもう微笑んでいる彼女を見ながら。
エレキマンも、自然と笑っていた。





ーーーこれが、皆へのバレンタイン・プレゼントーーー





『マイハート・フォーユー』
















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「無理矢理&中途半端&分類不可……っ!!」

エレキマン・「……正しく、だな……。」

ハム猫・「いや、当初はエレキマン夢にしようと思ってたんだよ……?」

エレキマン・「それが何でこうなるんだ……?オレ、殆ど出番無いし……。」

ハム猫・「いやぁ〜〜〜、何でだろうねぇ?何て言うか…全体的に元・WWWドリって感じでもう良いじゃん?皆普通あんな怪しいチップ使わないだろ、とか言うツッコミは無視です。すでに無理矢理突っ走りです。」

エレキマン・「問題から逃げるなよ……!しかも、バレンタインとかあまり関係無いしな……。」

ハム猫・「あ、最後の一行がチップの名前です。長すぎですが。きっと元・WWWの皆様にはちゃんと後日チョコレートが贈られました。」

エレキマン・「それじゃ、オレの夢じゃないだろっ!!」

ハム猫・「あぁ、うん。そうだね。」

エレキマン・「…………っ!!(泣)」

ハム猫・「まぁ、結果一番良い所取って行ったのはまどい姉さんっぽいですが。うん、大好きだ。」

エレキマン・「はぁ…、まぁこれはただ勿体無いから…とか言ってハム猫がupしただけだから……。苦情は奴に向けてくれよ。」

ハム猫・「ぅをっ!?な、何を……っ!!」

エレキマン・「……じゃ、オレは明日の仕込みの手伝いがあるから……。」

ハム猫・「うわん、見捨てるなよ、卑怯者ーーーっ!!」



戻る