「はぁ〜〜〜、まだ沢山ある……。」
私は、誰も残っていない放課後の教室で、1人溜息をついた。
と、言うのも、教科係の私が先生にノートを集めるように言われていて、今、その集めたノートを出席番号順に並べ直しているところなのである。
「うぅう〜〜〜、何でこんな時によってもう1人の教科係は休んでるかなぁ〜〜〜。」
ぶつぶつと文句を言いながらも手を動かしている
「えぇ〜〜と、これが十六番だから……。あっ…、これ帥仙君のだ……。」
そう言って、は1つのノートを手に取った。
「少しぐらい…いいよね……。」
そう言って、パラリ、とページをめくる。
何を隠そう、私は帥仙君が好きなのである。
普段はちょっとばかり顔が恐かったりするけど、野球をしている時は文句無しにかっこいいっ!!
話した事もほとんど無いけど、ずっと私は好きだった。
「ま、これも教科係の特権と言う事で……。」
そう言ってチラリと見たノートの中には、きちんと整った字で、授業の内容を分かりやすくまとめてあった。
「うっわぁーーーっ!!きれいな字……っ!!」
ホント言うと、男の子の字ってもう少し汚いものだと思ってたので、私は正直びっくりした。
「うわーーうわぁーーー!すごいっ!!字もきれいだし…何これ!すっごく分かりやすい……っ!!」
すっかり興奮してしまった私は、「ちょっと」だけ見るつもりだった事をすっかりと忘れていた。
そう、その時の私は教室の後ろから入って来た人物にも気付かないくらいに興奮していたのだーーーーー……。










放課後ノート










「…………?」
教室に忘れた物を取りに戻って来ると、未だに教室に残っている奴がいた。
(確か…、…だったよな……。)
後ろの扉から入ったので、後姿しか見えなかったが何かを見ているようだった。
静かに入って言って、自分の机から忘れた物ーーノートーーを取り出す。
それを片手に持ちながら、少し気になったので俺はの後ろに近寄った。
ゆっくりと覗き込む。
「…………っ!?」
が夢中になって見ていたのは、何と俺のノートだった。
確かは教科係だったから、今はノートの整理中なのだろう。
何が面白いのか、後ろに立った俺にも気付かずに、俺のノートをただただ見ている。
しかし、教科係だからといって、こんなにじろじろと人のノートを見ていいものだろうか。
「……おい……。」
そんなに後ろから声をかける。
「……っうひゃあぁ……っ!?」
その途端に、がおかしな声を上げた。
そして、勢い良く後ろに振り向く。
「…………っ!?」
俺の顔を見た瞬間に、は目を見開いて固まった。
その顔はどこか恐怖におびえている様な顔だった。
(少し遊んでみるか……。)
その考えが、ふと俺の頭に浮かんだ。
そして、次の瞬間にはその考えを実行していた。
…、何をしていたんだ……?」
俺はを見下ろしながら言った。
「あ…、あの……。そ、その、ノートの整理をしてて…、えと……。」
俺の想像通り、は見事なほどに言葉につまっていた。
「お前が教科係だからって…、人のノートをそんなにじろじろ見ていいわけないよなぁ……?」
ついついの困り果てた顔を見ていると、苛めたくなってしまう。
「あっ……!はい、その通りです……っ。ぁ、ああ、あの、その、勝手に見てしまってごめんなさい……っ!!」
は泣きそうな声で謝ってきた。
「…………。」
俺は黙っている。
それを心配に思ったのか、頭を下げていたがソロリ、と顔を上げた。
上目遣いに俺と目が合った瞬間に、俺は止めを刺した。
「……それで……?」
自分で言うのもなんだが、思い切りを見下して、冷ややかに言った。
「…………っ!!」
は、その瞬間まるで猛獣に食われる小動物のような顔をした。
とうとう我慢の限界らしく、ぽろぽろと涙を流し始めた。
「あ…あの…、本当にごめんなさい……っ。許してもらえないかもしれないけど…、ホントに悪気は無かったの……!ただ、帥仙君のノートがどんなのか見てみたくて…、見たらすっごくきれいで、分かりやすくって…気付いたらいっぱい見ちゃってたの……っ!!」
すでには平静を保ってはいられないらしく、わたわたと手を振り回している。
「…………。」
俺が何も言わないでいると、は何だか意味の分からない事まで話し始めた。
「……ふっ…、く、はははっ…ははははは……っ!!」
とうとう俺はこらえきれず、腹を抱えて笑いだした。
「…………っ!?」
今まで怒っていた人物が急に笑い出して、何がなにやら理解が出来ていないは、目を点にして俺を見ていた。
「……ふっ、くくく……っ!!」
「え…と、あの…帥仙君……?」
未だに笑い続けている俺に、少し思考が落ち着いたのか、が話しかけてきた。
「何で…笑ってるの……?」
当たり前の質問を、は控え目に聞いてきた。
「いや…、お前がっ…ふ、あんまりにも面白いんで……っ!!」
まだ笑いは収まらないが、涙の浮かぶ目をこすりながら、俺は答えた。
「……は……?」
はますます理解不能、と言うような顔をした。
「あはははっ、お前ってホント面白いな……っ!!」
そのの顔がまた可笑しくて、再び笑いがこみ上げてくる。
「す、帥仙君!どういう事か説明してよ……っ!!」
自分で考えても、答えが出なかったのだろう、俺にふってきた。
「……あぁ、すまない……。ただ、お前を見てると苛めたくなってな……。」
笑いの大津波に襲われた横隔膜を休めつつ、俺は答えた。
「いじ…め……?」
その言葉を聞いた瞬間に、は少し引いた目になった。
「おいおい、そんな目で見るなよ。悪いのは俺じゃあない。それに、はじめにノートを見ていたのはお前の方だろう。」
「う゛……。それはそうだけど……。」
は、その言葉に少しうなだれる。
「じゃあ、本当は怒ってなかったの……?私をからかってただけなの……?」
「最初は『何してんだ、こいつ。』とは思ったけどな。今はもう怒ってないさ。」
今はもう、を睨みもせず、普通に目を合わせて話している。
「……良かったぁ〜〜〜……。」
俺の言葉を聞いた途端、は大きな溜息と共に、その言葉を言った。
「そんなに俺が恐かったのか……?」
「すっっっごく恐かったよ……っ!!帥仙君に嫌われるかと思った……。」
ポツリ、と漏らしたの言葉を俺は聞き逃さなかった。
「俺に嫌われるのがそんなに嫌なのか……?」
「え……っ!?」
俺に聞かれていないと思ったのだろうか、はすごく驚いた顔をした。
「えっ…、いや、その……っ!!」
再びわたわたするに、笑いの波が再来しそうになるのを押さえ、またも少し意地悪な質問をする。
「そういえば、何で俺のノートを見ようとしたんだ……?他の奴じゃなくて。」
俺は、の反応を楽しみに見つめる。
「え゛ぇ……っ!?いや、そんな事…っ、ほら、何かちょっと気になって……っ!!」
苦し紛れに、あたふたと言い訳をする
「ちょっと気になって……。何が……?」
すでに、もうその答えは分かりきっているのだけれど、意地悪な質問は止められない。
「あ〜〜っ、う〜〜〜っ、え〜〜〜っと……っ!!」
とうとう、はうなり始めてしまった。
そろそろ止めてやるか……。
俺はそう思い、一つ溜息をつく。
「もういいよ。お前って嘘つくのすっごい下手だろ。丸分かりなんだよ、考えてる事。」
「へ……?」
俺の言葉に、ピタリと動きを止める
「今の言葉は……。」
冷や汗をたらしながら、が聞いてくる。
「俺も同じ気持ちって事。」
そう言って、俺は片手に持っていたノートを肩にかけて、教室を出て行った。
「えっ…、ちょっと待って……っ!今のどういう意味……っ!?」
は俺が教室を出るとすぐに後ろを追い駆け叫んできた。
俺は、振り返らずに笑いながら言った。
「お前の考えてる通りだよ……っ!!」
俺は、後ろにいるに手を振りながら廊下を歩いた。






どうやら、暫くは笑いには困らなそうだーーーーー。













〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「ハイ!華武高大フィーバー中ですっ!!帥仙さんドリームですっ!!」

帥仙・「何だ、このふざけた作品は……。」

ハム猫・「そう睨まないでよ……。思いついちゃったんだからしょうがないじゃん。きっと、帥仙さんは好きな子は苛めちゃう派だろうなぁ〜〜〜、と言う事で。」

帥仙・「勝手に決めるな。」

ハム猫・「だって、ほとんど設定が分かってないんだし、こっちで決めるしか無いじゃんか〜〜〜。ただ、帥仙さんがあんなに大笑いをするかは謎。でも、個人的にはして欲しい。大笑い帥仙、いいじゃないですか……っ!!」

帥仙・「変なことを言うな……っ!!」

ハム猫・「コレを読んで帥仙さんのイメージ崩れちゃった方、すみません……。って、それを言ったら全員か……。」

帥仙・「俺に変なイメージを植え付けるな……。」

ハム猫・「でも、個人的にはすごく好きですよ、帥仙さん。」

帥仙・「ふん、お前に好かれても嬉しくは無いな。」

ハム猫・「うわ、ひっど。では、まだ華武高祭りは続くので、よろしくですっ!!」

帥仙・「よければ、また来てくれ。」



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