一週間はあっという間に過ぎて……。
とうとう”例のアイツ”が通い始める日になった……。 ーーー院生生活2ーーー
「いよいよ今日からアイツが来るな。」
「えーーー…と、名前何て言ったっけ?」 「さんだよ、さん。」 和谷、ヒカル、伊角達は大広間で話をしている。 と、そこへーーーーー 「おはよーございます!進藤君、和谷君、伊角さんっ!!」 3人で話していた、その本人が現れた。 「やぁ、おはようさん。」 伊角があいさつを返す。 「お前、緊張してるか?」 和谷が聞いて来た。 「緊張って言うか…、昨日からずっとワクワクしてました!今日から院生だと思うと、とっても嬉しいですっ!!」 ニッコリと笑って言う。 「早く碁が打ちたくて仕方がないって顔だな。」 「ハイ!もぅ、早く打ちまくりたいってカンジですよっ!!あうぅ〜〜〜、うずうずするですぅ〜〜〜っ!!」 もう、1分1秒も待てないという気持ちを体中で表している。 「ま…まぁ、もうすぐ打てるから落ち着け……。」 伊角がなだめる。
そう言う会話をしているとーーーーー……
「皆さんおはようございます。そろそろ時間ですので準備して下さい。」 篠田師範が入ってきた。
「じゃあ、頑張れよ。」
「ハイ!」 そう言って各自、座る場所に行く。
皆がちゃんと座った後で、篠田師範がを紹介した。
「今日から新しい仲間が入りました。さんです。皆さん、よろしくお願いしますね。」 「では始めて下さい。」
「お願いします。」
その言葉の後、大広間には碁石を打つ音が響き始めた。
「ありません……。」
「よっし!」 しばらくして、和谷は中押し勝ちした。 その後しばらく対局相手と検討して、それから対戦表に白丸を付けに行く。 「…………。さてっと……。」 あいつはどうかな…と思いながら、視線を巡らせる。 目的の人物、を視線の先に捕らえ、その方向に歩いて行く。
はまだ対局中だった。
ソッ…、と後ろからのぞく。 一目見て分かる程、の方が優勢だった。 (相手は確か、2組の6位…だったよな……。) それを思うと、は結構な腕なのかもしれない。 もうすぐ終わるな…、そう思って横に座った。 座って、の表情を見て驚いた。 先程までは、とても幼く見えていたが、今は真剣そのものだ。 和谷でさえ一瞬ゾクリ…、とした。 相手を射ぬくような瞳ーーーーー。
(こいつ、本当にか……?)
和谷がそう思った瞬間、 「……あ…ありません……。」 対局相手が投了した。 その瞬間に、はフゥ…、と力を抜いた。 「有り難うございました!……あの、ここだけど、ここの2子を守るより、ここはあきらめて下辺の地を広げたほうがいいと思うんだけど……。そしたら私も困ってたと思う……。」 「……うん…、そうだね……。何か、結果アゲハマいっぱい取られちゃったし……。」 「あと〜〜〜……。」 達はしばらく検討を続けていた。 検討が終わって、対局相手が対戦表をつけに立ったので、和谷は話しかけた。
「よ!初勝利の気分はどうだ?」
すると、は和谷の方を振り向いて目をパチクリ、とさせた。 今ではもう、表情は以前のに戻っている。 「ほやっ!?和谷君、いつからいたのっ!?」 は大層驚いている。 「いつからって…、相手が投了する前からいたけど……。」 「うそだぁっ!!全然気付かなかったよぉっ!!」 「本当かよ……。」 和谷は呆れる傍ら、こいつってすげぇ奴かも…、と思った。 (オレがいた事にも気付かない程集中してたって事だよな……。こいつって碁打つ時にはすげぇ集中力発揮するのか……?) 額を押さえ、溜息をついている和谷の顔をのぞき込む。 「んにゃ?どーしたの、和谷君?」 「んっ、あぁ…、何でもない……。それより、院生になって初の対局、どうだった?」 聞くと、はとても嬉しそうな顔をした。 「すっごい楽しいデス!やっぱり強い相手と対局するのは楽しいっ!!もっともっと、いっぱい強い相手と対局したいですっ!!」 「そっか……。次の対局も頑張れよ。」 そう言って、和谷は自分の次の対局場所へ行った。
(あいつ…、あっという間に1組に上がって来そうだな……。)
そう思い、フッ…、と笑った。
2局目が終わり、お昼休憩となった。
今日は、伊角も和谷もヒカルも近くのコンビニまでお昼を買いに行く。 大広間を出る時に、ふとが目についた。 「おいっ、!お前お昼は?」 「あ、私はどこかで買おうかと……。」 「なら一緒に行こーぜ!オレ達もこれから買いに行くから。」 すると、誰が見ても分かる程にパアァーーーッ、と表情が明るくなる。 「いいんですかぁ……っ!!」 そう言っててぽてぽと3人の下へ駆け寄る。 「うれしいデス!私なんかを誘ってくれるなんて優しいんですネ♪」 そう言って、はエヘへ〜、と笑う。 その瞬間、目の前にいる3人には、が(投げたボールを嬉しそうに取って来た)仔犬に見え、頭を撫でたい、という衝動にかられていた事をは知る由もない……。
所変わってコンビニ店内ーーーーー。
「午前の対局はどうだった?」 おにぎりコーナーの前で、どれを買うか真剣にうなっているに、伊角が聞いた。 「へ?あぁ、2局とも勝ちましたよ。」 伊角の方に振り向いて、ニコリ、と笑って言う。 「そうか。出だし好調じゃないか。」 「ハイ!……伊角さん、サケとこんぶどっちが好きですか?」 いきなり、会話を180°変えてくる。 「え……っ!?えっと…、サケ…かな………。」 一体何なのか、混乱しながらも一応答える伊角。 「じゃあ、サケにしよ♪」 そう言って、サケと焼タラコのおむすび、そしてお茶を手に、はレジに向かった。 「……一体何だったんだ……。」 一人残された伊角はポツリ、とつぶやいた。
ーーー棋院内に戻って来て、皆でお昼を食べています。ーーー
「なぁ、って、いつから囲碁始めたんだ?」
目の前ではもはもと一生懸命(?)おにぎりを食べているに和谷が聞く。 「?んーーーとねぇ……。良く覚えてないんだけど、私って小さい頃からおじいちゃんっ子だったんですよネ。で、おじいちゃんについて、よく碁会所行ってて、見てる間に覚えちゃったみたいで……。それで、碁会所の人達と少しずつ打つようになった…、みたいなカンジです……。」 ”まぁ、ホントよく覚えてないんですよう……。”と言って、はテレ笑いをした。 「ふ〜〜〜ん。じゃあ、かなり長いんだな、囲碁歴は……。」 サンドイッチを口に運びながらヒカルが言う。 「なぁなぁ、和谷はなんで囲碁始めたんだっ!?」 サンドイッチを一口かじると、隣にいる和谷に詰め寄る。 「あ?別にどーだっていいだろっ。お前こそどーなんだよ!」 「え゛っ!?いや…、オレは別に……。それより、なぁ!だって和谷が何で囲碁始めたのか知りたいよな……っ!!……ぁ……?」 自分達の前でおにぎりを食べていたに同意を求めようと振り返るとーーーーー…… は寝ていた……。
「何寝てんだよ!オイッ!!」
いつの間に寝たんだっ!?と言いつつ、をゆすって起こそうとするヒカル。 「……ぅ…ん……。あと5時間……。」 「5時間って長ぇっつーのっ!!」 すかさず和谷がツッコミを入れる。 「おいっ、もうすぐ午後の対局始まるぞ!大広間に行かねぇとっ!!」 「ん……?対局……?」 ヒカルの必死の呼びかけ(?)にやっとの事で目を覚まし(もしくは”対局”という単語に反応し)、眠そうな目をこする。
一度大きく欠伸をした後、まだボーーーッとした顔で立ち上がり、
「おはよう、進藤君…、和谷君…、伊角さん……。対局…どこですか……?」 まだ意識のはっきりしていない声で言う。 「お…おい、、大丈夫か……?大広間はあっちだぞ……っ。」 心配した伊角に手を引かれて、大広間の方へ行く。
「なぁ、和谷、あいつ大丈夫なのか……?」
の後ろを少し遅れてついて行きながらヒカルが言う。 「あぁ、きっと大丈夫だと思うぜ。……オレの予想じゃあ、あいつ、すぐ1組に上がってくるぜ……。」 「あいつが……?」 不思議そうにヒカルが聞く。 「あぁ、賭けてもいい……。」 目の前を歩くの後ろ姿を見ながら、和谷は言った。 その日のの対戦結果はーーーーー 4戦連勝だった……。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「院生シリーズ第2弾!初シリーズもの続いてて良かったっ!!」 伊角・「にしても、本当欠点だらけだな、ハム猫の小説って。もっと心理描写とか状況描写とかって出来ないのか?」 ハム猫・「出来ません。まず、語彙少ないから。」 伊角・「稚拙な小説になる訳だ……。」 ハム猫・「さて、そんな事は置いといて……。本当は次の話からが書きたかったんですよね!和谷、ヒカル、伊角の順で被害者になっていただきます。」 伊角・「やっぱりオレも入ってるのか……。」 ハム猫・「でも、いきなり入ってもなぁ、と思ったので、もう少しヒロインについて知ってもらおうという事で、第2プロローグみたいなカンジです。」 伊角・「でも、これって終わり考えてないんだよな。」 ハム猫・「そうなんですよね。ただ、ちょうど3人分ネタが出来たから書き出しちゃったんですけど……。皆さんの反応が良ければ続けるという事にしましょう。」 伊角・「あと3話で終わるな……。」 ハム猫・「そこ!こわいコト言わないっ!!……ところで…、さんには慣れましたか?」 伊角・「いや…、まだちょっと……。」 ハム猫・「敬語使ってんだか使ってないんだか分からない不思議ちゃん。本性は犬か猫か……っ!?待て次回……っ!!……ちなみに次回はすでにさん1組に上がってます。早くてどれくらいの期間で上がれるんですか、伊角さん?」 伊角・「オレに聞かれても……。」 ハム猫・「時間ぶっ飛びすぎでごめんなさい……。でも、早く次のネタ書きたいんで♪」 伊角・「何か、細かい設定とか考えてなくて、今更あわててるハム猫だけど、まだ続くみたいだから、よかったら次も読んでね。」 |