「今日はオレがおごってやるよ。」
伊角はに言った。 「そ…そんな!いいですよぅ……っ!!」 は一生懸命手を振って答える。 「が一組に上がってきたお祝いだって。」 そんなを見て、ニコリ、と笑って言う伊角。 「大丈夫です!お金はちゃんと持ってます!年上の方におごらせる訳にはいきませんっ!!」 (こういう場合、年上がおごるものでは……。) そう思いつつ、伊角は苦笑する。 「「オレ達ならおごってもらってもいいぜっ!!」」 「お前達は自分で払え。」 そんな会話をしていると、後ろのヒカルと和谷が首を突っ込んできた。 「ちぇっ、けちーーー。」 その言葉に即切り返すと、2人は後ろで愚痴っていた。 ーーー院生生活3ーーー
今、達はヒカル達がよく行くバーガーショップに来ている。
今日は、が一組に上がったささやかなお祝いパーティーだ。 ちなみに、メンバーは伊角に和谷、ヒカルにフクに奈瀬だ。 「しっかし、ってホント一組に上がるの早かったわねーーー。」 バーガーを買おうと並んでいる途中、奈瀬が言った。 「そーだよなーーー……。越智より早かったんじゃねぇ?」 和谷も頷く。 「そんな事ありませんよ。皆さん強くて大変でした。」 そんな会話を聞いて、はニッコリと笑って言った。 「でもさ、何でそんなに強いのに、もっと早く院生試験受けに来なかったんだ?」 後ろに並んでいるヒカルが聞いてきた。 「あぁ、それはーーーーー……。」
「「「「「碁会所破り……っ!?」」」」」
伊角や和谷達全員が一斉に声を上げた。 「はい。まぁ、そんなにたいそうな事ではないんですけど……。」 今は、皆メニューを注文し終えて、テーブルについている。 「おじいちゃんが言い出して……。」 は、ジュースを一口飲んで言った。 「あちこちの碁会所のおじさん達皆に勝ってからじゃないと院生試験は受けさせない!…って。」 それを聞いた和谷達は、各自口に運んでいた物の手を止めた。 「うへぇ〜〜〜、何かすごいおじいさんだな……。」 和谷が言う。 「囲碁に関する事には厳しくて……。」 は少し苦笑いをして言った。 「それで…、一体どれくらいの碁会所を回ったんだ?」 テーブルの上で手を組んで、伊角が聞いてきた。 「ん〜〜〜…、はっきりとは覚えてませんが…、確か十ヶ所は超えてた…かな……。」 「「「「「十ヶ所以上……っ!?」」」」」 口元に指を当てながらが言った途端に、皆が鸚鵡返しのように言った。 「でも、小さい所も含めてですよ?」 ニッコリと笑いながら言う。 「いや…、にしてもそれはすげぇ数だろ……。」 和谷は何故かぐったりとした感じで言った。 「毎日のようにおじいちゃんに連れられて碁会所に通って……。もう、何日も行くと、それが日課みたいな事になって、碁会所の方でも席代とかただにしてくれたり……。」 はフフッ、と笑った。 「大変だったけど、楽しかったなぁ……。また碁会所行ってみたい……。」 は少しうっとりするような声で言った。 「じゃあさ、今度オレ達と一緒に碁会所行こうぜっ!!」 和谷は、乗り出すように言った。 「良いトコ知ってるんだ!今度…、うん!今度の土曜にでも、オレと進藤と伊角さん、それにで一緒に行こうぜ……っ!!」 「いいんですかぁ……っ!!嬉しいですっ!!」 は、目をキラキラと輝かせた。 「ちょっと、和谷。私は無視なの……っ!?」 の隣に座っていた奈瀬が、和谷の耳を引っ張った。 「うわ!痛ぇって……っ!!」 そんな二人を見て、達は笑った。
「でもよぉ、越智はむかつくよな。」
和谷が、ポテトを食べながら言った。 「何でですか……?」 が聞く。 「だって、せっかく人がのお祝いのパーティーに誘ってやったのに、「興味ないね。」の一言で蹴ったんだぜっ、あいつっ!!しかも、の目の前で……っ!!」 話していると思い出したらしく、和谷はどんどん不機嫌そうになった。 「いいんですよ。きっと越智君には用事があったんだろうし……。」 そんな和谷には優しく言った。 「いんや。オレは許せねぇな。大体、あいつは人を馬鹿にしすぎだっ!!それに、!お前そんな甘い事言ってたら、あいつはどんどんつけ上がるぞ……っ!!」 そう言いながら、和谷はの目の前で持っているポテトを振った。 苦笑いしていたは、だんだんとそのポテトに視線が行きーーーーー パクリ。
「う…、うっわぁあぁあぁぁーーーっ!?」
一瞬。 一瞬だった。 が和谷の指に持たれたポテトに噛み付いた。 その事を確認した和谷は、顔を真っ赤にして手を引っ込めた。 「なっ…、なな、な、何だ……っ!?」 すでに混乱状態の和谷は、自分の指を押さえながら、の方を見る。 「あっ…、すみません……。つい癖が……。」 「「「「癖ぇ……?」」」」 和谷を除く4人は、声をそろえて言った。 「あはは、ハイ。お恥ずかしいんですけど、ついつい動いてるものを見てると……。」 恥ずかしそうに、頭をぽりぽりと掻きながらは言う。 「いや…、癖って言うか……。」 (((((人間なのか……?))))) 一同は、思ったという。 「あ。和谷君、ポテト食べちゃってごめんなさいです。ハイ、私の分食べて下さい。」 そう言って、自分のポテトを差し出してくる。 「いや……。いい……。」 未だに赤い顔で和谷は言う。 ポテトを持っていた指を一生懸命にこすりながら……。
「ん?どうしたんだ、和谷……?」
隣にいた伊角がそれに気付いて、聞いた。 「いや、だって……。その……。」 消え入りそうな声で、和谷はごにょごにょと言う。 「の…その……。く…く、唇…が……。」 蚊の鳴くような和谷の声を聞いて、伊角は納得した。 さっき、が和谷の持つポテトに噛み付いた時、ポテトを持つ和谷の指に、噛み付いて来たの唇が触れたのだろう。 伊角は苦笑した。 和谷がそんなに真っ赤になって、指をさする気持ちは分からなくもない。 きっと、自分が和谷の立場でもそうするだろう。 しかし、何故かそんな和谷がかわいく思えて、笑ってしまう。 「あっ…、何笑ってんだよ伊角さん……っ!!」 「いや、すまん……っ。」 口を押さえるが、笑いが漏れてしまう。 隣で和谷は、「人事だと思ってーーー……。」とぶつぶつ言っている。
そう、この時は、次にの被害(?)に会うのは自分なのだと、伊角はまだ気付いていなかったーーーーー。
〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「The・中途半端終了……っ!!」 伊角・「いや、何胸張って言ってるんだ……?」 ハム猫・「だって…、終わり方が変だから……。」 伊角・「って言うか、次はオレなのか……。」 ハム猫・「あーーー、そうですね。第二話で言ってたのと変わりますが、やっぱりヒカルを最後に持っていった方が良いかなぁ〜〜〜、と思ったので……。」 伊角・「一体、どんな事が起こるんだ……?」 ハム猫・「いや〜〜〜、そんなに気にしなくてもいいですよ。なにせ、このオイラの頭で考えてる事だから、今回の和谷と同じくらいの低レベルな事ですよ。」 伊角・「……まぁ、あまりひどい事じゃないのを祈っとくよ。」 ハム猫・「ところで、碁会所破り十ヶ所(以上)が多いのかどうかは分かりません。テキトーに数字入れたからねっ!!」 伊角・「に、しても……。がどんどん分からなくなってきたな……。」 ハム猫・「いや、もう何か小動物とでも思っといてください……。本当は和谷君に「唇」なんて単語を吐かせたくなかったんですが、「口」だとちょっとイメージが違うので、まんま言ってもらいました。和谷ファンの方すみません……。」 伊角・「何か、オレ今から気分重いなーーー……。」 ハム猫・「あはは、そう気にするな。禿げますよ……?」 伊角・「うるさい……っ!!まぁ…、何だ、その…オレへの被害が少ないように祈っといてくれ……。(溜息)」 ハム猫・「それでは、また次回で会いましょうっ!!」 |