やっと見つけた……。


10年間、ずっと捜し続けていた……。



ずっと、ずっと…、探していた、あなたを……。










ーーー開放ーーー










「……お前は誰だ……?」
裏インターネットの奥深く。
普通のナビでは一瞬として足を踏み入れる事叶わないこの場所で、2体のナビが対峙していた。
一人はフォルテ。
裏インターネットでも恐れられる、最強のナビだ。
目の前に対峙するナビは…、見た所は一般のナビと変わり無い。
戦闘型の男ナビだと言うだけで、フォルテには記憶に無い顔だった。


『ライ、下がってて。』


「…………っ!?」
そんなフォルテの問い掛けに答えたのは、女の声。
男型のナビからのその声に、フォルテは一瞬、体を強張らせた。
その瞬間に、目の前のナビからオペレーターの精神が分離する。
ナビから離れて出てきたのは、10代後半程の少女。
ゆっくりと、フォルテに向き合うと、微かに微笑んだ。
『久しぶりね、フォルテ。』
懐かしそうに、そして少し辛そうにも思える瞳で、フォルテを見つめる。


「貴様…、誰だ……?」


その少女を、ますます憎々しげに睨んで、フォルテは問い掛けた。
まるで自分を見透かすようなその瞳に、苛立ちは激しくなるばかりだった。

『あら、やっぱり覚えてないのね。まぁ…、最後に会ったのが10年以上も前じゃ無理も無いか……。』
フォルテの言葉に少し苦笑した少女は、困ったように言った。
「……オレの質問に答えろ!無駄口を叩く暇は無い……っ。」
そう言って、フォルテはスッと腕を上げる。
そこには、高エネルギーが集められていた。
これを食らえば、普通の人間の精神ではひとたまりも無いだろう。
電脳空間での精神のダメージは、現実世界での死に直接繋がる。
『そうね、フォルテはまどろっこしい事は嫌いよね。』
しかし、その脅しも通じず、少女はあっけらかんと答えると、腰に手を当てた。
『私は。あなたを生んだ…コサックお爺様の孫よ。』
はっきりと、良く通る声で発せられた言葉。
その言葉に、フォルテは目を見開いた。
マントの下で、手を強く握り締める。
『……遅くなって…、ごめんなさい……。』
そんな、強張っているフォルテを見て、はすまなそうに呟いた。
『あの時は私もまだ幼くて…、あなたを探す術を持っていなかった……。フルシンクロをずっと練習して…やっとここまで辿り着けるようになったけど……。』
ゆっくりと、一歩一歩フォルテに近づく。
『もう、あなたの心は憎しみで一杯になってしまったのね……?』
そして、悲しそうに微笑んでフォルテを見た。
「…………っ!!く、来るな……っ!!」
何処と無く、生みの親を思い出させる微笑み。
温かくて、思いやりのある微笑み。
フォルテは、右手に溜めていたエネルギー波をに投げ付けた。
『……本当は10年前、あなたが消える前に知らせるべきだった。』
しかし、その攻撃はに当たる事は無く、足元に大きな穴を穿った。
『お爺様は、あなたを裏切ったんじゃないわ……。最後まで…あなたの事を想っていたの。』
フォルテの攻撃にも怯まず、一歩一歩フォルテに近付いて行く。
「……っ来るな……っ!!」
エネルギー波を尚も放ち続けるが、取り乱しているためか、に当たらない。
フォルテも徐々に後ろに下がって行った。
『あなたは10年前、お爺様に裏切られたと思ったのでしょう?だから…、もう誰も信じまいと…人間を恨む事を、誓った。』
そして、気が付けばは、フォルテに触れられるほどの近さまで近付いていた。
「…………っ!?」
一つも傷付かずに目の前に立っている人間を見て、フォルテは目を見開くばかり。
『ねぇ、フォルテ。お爺様は最後まであなたを愛していたの……。あなたの事だけを、ずっと想っていたのよ……?』
「な…っ、そんな言葉、信じると思うのか……っ!?」
今では、一体何故こんなに怯えているのかは分からない。
けれど、目の前のに只ならぬ恐怖を感じた。
どんどん汗が噴き出して、前を直視する事が出来ない。
体が勝手に後ろへと逃げる。
『10年前、何故お爺様があなたを助けに行かなかったと思う……?』
は、そんなフォルテを真っ直ぐに見つめて問い掛けた。
「じゅ…っ、10年前……っ!?」
あの過去が蘇る。
自分に襲い掛かる数々のナビ。
無実なのに。
自分はやっていないのに。
博士は助けに来てくれない。
今までのように、自分の無実を証明してくれない。

ーーー何故……?ーーー



あの時の感情が蘇って来て、フォルテは頭を抱えた。

『あの時、お爺様はあなたを助けなかったんじゃないわ。助けられなかったの。』
昔と今の感情が入り混じる混乱の中、の声が頭に響いた。
「……何……っ!?」
苦痛に頭を押さえながらも、を見る。
『……お爺様は…他の研究者達に監禁されていたのよ……。』
は、重い口を開いて、過去の真実を告げた。
『お爺様は、最後までフォルテを守ろうとした。助けようとした。けれど…、それを良く思わない研究者達が、あなたを処分するためにお爺様を閉じ込めた……。』
目の前のの言葉が、一つ一つ頭に響いて気分が悪い。
今、オレが聞いてる言葉は何だ?
真実なのか……?
これが真実だったとしたら…、オレが今まで抱いてきた想いは何だったんだ……?
『あなたは人間を恨んでる。確かに、あなたに酷い事をした研究者もいるわ。その全てを許せなんて言わない。でも……。』
呆然と立つフォルテの目の前へ来て。
『でも…、せめて…お爺様の本当の気持ちだけは、知っていてあげて……?お爺様だけは…恨まないで……?』
今にも泣きそうな声で。
涙を堪えるように、言った。


『ライ。』


そして、後ろに待機していたナビの名前を呼ぶ。
「…………?」
その声に、不思議そうにを見るライ。
『今まで、私の我侭に付き合ってくれて、有難うね……。最後に最後の我侭。今すぐここをプラグアウトして……?』
ゆっくりと振り返り、優しく微笑み。
は、満足そうにそう言った。
「なっ、……っ!?」
その、予想外の言葉にライは驚く。
『本当に、ライには感謝してる。あなたがいなければ、ここに辿り着く事は出来なかったもの。最後まで悪いオペレーターで…ごめんね……。』
それだけ言うと、再びフォルテの方を向く。
「……っ……ッ!!」
今では距離が開いて小さく見えるの背中に腕を伸ばし駆け寄るライ。
しかし、それよりもが腕を広げる方が早かった。



「…………っ!?」



『ごめんね…、私が出来る事はこれくらいなの……。』
は、大きく腕を広げると、フォルテをその中に包み込んだ。
一瞬の事に、フォルテも体を強張らす。
『私…本当はあなたの事が羨ましかった……。いつもお爺様が話すのはあなたの事ばかりで……。一度昔会った時は、思い切り睨み付けたのを覚えているわ……。』
「…………っ!!」
くすくすと、楽しそうに話すの言葉を聞きながら、フォルテは自分の中にエネルギーが生まれるていくのを感じた。
それは、どんどん溜まって行き、自分でも抑え切れなくなる。
『最後に…、お爺様が亡くなる前に…最後に届いた手紙……。その中に隠されていたメッセージは…「フォルテを頼む」だった……。最後まであなたにお爺様を取られたみたいで…、悔しかった……。でも……。』
「ぅ…っ、く……!」
自分で自分のパワーを抑えられない。
それは、自然と体の外に放出されて……。
エネルギーの膜が出来ていった。


「止めろ!、それじゃお前が……っ!!」


一生懸命駆け寄るライだが、フォルテから放出されるエネルギー波に中々前に進む事が出来なかった。

『でもね…、本当は…本当は、あなたと友達になりたかったのかもしれない……っ。』

優しく、微笑んで。
すでに、フォルテのエネルギーに精神をぼろぼろにしながらも、それでもはフォルテを優しく抱きしめ続けた。


「止めてくれ!止めてくれっ、……っ!!オレは……っ!!」


そんなを見て、フォルテのエネルギーの膜に無理矢理入ろうとするライ。
だが、あくまで一般のナビ故にフォルテの力には耐え切れなかった。
体が、どんどんとデータに分解されて行く。




「ぅわああぁぁあぁあぁーーー……っ!!」




焦り、動揺、不安、悲しみ……。
自分でも理解出来なくなった感情が入り混じる中、そんな2人の声を聞きながら、フォルテは自分でもコントロール出来ない力を、一気に放出した。










ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…



「…………?」

次にが目を開けた時に、真っ先に視界に入ってきたのは白い天井だった。
「…………?」
頭の中も真っ白で、何処なのかすぐには理解出来なかった。
ゆっくりと頭を横に動かすと、そこには棚と花瓶、そして、点滴薬。
(……病…院……。)
今自分がいるのが病院だと言う事をゆっくりと確認する。
だが、しかし何故自分が病院にいるのか理解出来なかった。

「……あぁっ、目が覚めたんだね……っ!!」

暫く、虚ろな目で天井を見つめていると、見回りに来た先生らしき人が駆け寄って来た。
視線だけをそちらに向ける。
「君は3日間眠っていたんだよ!……どうだい、気分は……?」
慌てたような、ホッとしたような表情で、先生はの顔を覗き込んで来る。
「……私、は……?」
長い間眠っていたせいか、掠れた声が出た。
「あぁ、そうか……。覚えていないんだね…、君は酷く精神を消耗していたんだよ。」
少し落ち着いて、先生が説明する。
「君のナビが…急に病院のコンピュータに入って来てね……。君の危険を知らせてくれたんだよ。」
少し、俯いて言った。
「私の…ナビ……。……ラ、イ……?」
先生の言葉に、少しずつ、うっすらと自分のパートナーの姿を思い出していった。
「……ライ、は……?」
体に力は入らなかったけれど、目だけで縋るように尋ねた。
「…………。ここに来た時点で…もう、打つ手は無かったんだ……。」
の問いに、先生は辛そうに呟いた。
「……君の事を知らせた、すぐ後に……っ。」
に聞かせるのが辛いのだろう、はっきりとした表現は使わなかった。
だが、それでも十分だった。
「……っ、…………っ。」
ただただ、自然に涙がこぼれた。
本当に最後まで、自分の我侭に付き合わせてしまった。
初めて会った時から、深い理由も聞かずに付き合ってくれたライ。
こんな自分のために、命を落とす事になってしまったライ。
それを思うと、いつまでも涙は止まらなかった。
「……君のPETは一応そこに置いてある……。辛いだろうけど…、それが彼との思い出でもあるだろうから……。」
そう言って、先生が示した先には今まで使い慣れたPETが、画面に誰もいない状態で置かれていた。
ライは帰ってこない…、それを暗に示しているようで、はどんどん視界がぼやけていくのを感じた。
「君が助かったのも奇跡に近いんだよ。彼が知らせるのが、あと少しでも遅かったら、君は今ここにいないんだ……。その事をしっかりと胸に刻んで…、頑張ってね……。」
先生はそれだけ言うと、居辛そうにその部屋を後にした。
「……っライ……ッ!!」
は、一人になると自分の瞳を手で覆った。
流れ出す涙は、自然と頬を伝ってベッドのシーツを濡らす。
暫くそうして、声に出さずに泣き続けた。










それから、一週間して退院する事が出来た。

精神も体も回復して、もう普通の生活に戻っても大丈夫だろう、との事だった。

荷物をまとめ、家に帰る時、ふと目に留まったPET。

新しいナビを持つ気に、今はなれないけれど、ライとの思い出の詰まったこのPETを捨てる事なんて出来ない。

そう思い、大事に鞄に詰めた。





それから……。


そのPETに、フォルテが姿を現したのは、3日後の事ーーーーー……。



















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「えっ、これで終わり……っ!?これで終わりです。(一人突っ込み)」

フォルテ・「……死にたいのか……?」

ハム猫・「いやいやいや!これはこう言う夢なんですって!決して強制終了とかじゃないんですって!」

フォルテ・「フン、怪しい所だな……。」

ハム猫・「何だか結果さんの持ちナビ・ライ夢みたいになってしまいましたが、この夢は何が何でもフォルテ夢なんですって。その後は皆様のご想像でどうぞ♪」

フォルテ・「このオレが、PETの中に入るなど……っ。」

ハム猫・「きっと、一週間くらい思い悩んで、2日くらいでさんのPETへ繋がる回線を探して、4日くらいまた悩んでたんだと思います。」

フォルテ・「…………。」

ハム猫・「ぅわっ、し、視線が痛い……っ!!あ、まぁ捏造入りまくりもいい所ですが、それはスルーで。」

フォルテ・「フン、捏造で済まされるものか。」

ハム猫・「だって、コサック博士の話の意味が分からなかったんだものーーー。納得出来なかったんだものーーー。」

フォルテ・「……はぁ……。」

ハム猫・「あ、もしコロコロ本誌で出てきてたらすみません。こっそりと教えてやってくれると有難いです。」

フォルテ・「そしたらこれは抹消だな。」

ハム猫・「そうなっちゃうねーーー。うん、でも元々完全パラレルっぽいから。」

フォルテ・「……まぁ、見た奴が気分を害したかどうかなどオレには関係無いがな。苦情ならコイツに言ってくれ。まぁ…、こんな物を読んでくれた事には感謝するが……。」



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