私の彼氏は司馬葵君。
恥ずかしがりやさんだから余り喋らないけど、優しい彼が大好きです。
まだ付き合い始めたばかりだからまだまだ知らない事は沢山あります。
一体、彼にはどんな秘密があるのでしょう……?










彼の秘密










「司〜〜〜馬君っ!!」
今日も私は昼休みに司馬君のクラスに来た。
一緒のクラスだったら良かったのになって思う事はよくあるけど、これだけはしょうがないか。
「…………。」
私が名前を呼ぶと、司馬君は振り返って笑顔を向けてくれた。
この笑顔が大好き。
司馬君の笑顔を見ると、すっごく落ち着くの。
嫌な事とかがあっても、すぐに忘れちゃうくらい。
「今日も一緒にお昼食べよーーー♪」
私は司馬君の机にお弁当箱を置いた。
司馬君も、鞄から自分のお弁当箱を取り出す。

と、そこへーーーーー……。


「シッバ君ーーーっ!!」
「あ。」
司馬君と野球部で一緒の兎丸比乃君が来た。
この人はいつも元気一杯だなぁ。
「と、あれ、ちゃんだ!今日も一緒にお昼なんだね。……あのさ、ボクも一緒にいいかな……?」
そう言った兎丸君の手にはお弁当箱が持たれていた。
「あ、うん。もちろん良いよ……。」
私がそういった瞬間ーーーーー……。


ガタンッ


司馬君が急に立ち上がった。
「えっ、どうしたの、シバ君っ!?」
急に立ち上がった司馬君に驚く兎丸君。
そんな兎丸君に司馬君は近づいて、兎丸君の顔をじっと見た。
「……えっ、先生がボクを呼んでたってっ!?知らなかったや、じゃあ、ちょっと行って来るねっ!!」
兎丸君はそう言うと、すごい速さで教室を出て行った。
兎丸君は、司馬君が何を言ってるか(言いたいか)が分かるみたいです。
「そうだったんだ……。じゃあ、兎丸君が帰ってくるまで待っとこうか。」
そう言って私が椅子に座ろうとした所……。


クイッ


司馬君が私の手を握って引っ張った。
「どうしたの?」
私は、そんな司馬君の顔を覗きこむ。
すると、司馬君はニッコリ笑って上を指差しました。
どうやら、「屋上で食べよう。」と言う事みたいです。
これでも、司馬君の彼女ですからね、大体は分かるんです。
「えっ…、でも、兎丸君が……っ!!」
そういう私を、司馬君はぐいぐい引っ張って立たせると、そのままズルズルと屋上まで引っ張っていかれました。
「ど、どうしたの、司馬君……っ。」
今日の司馬君は何だかおかしいよ。
兎丸君は大事な友達じゃないのかな……。
「兎丸君ほおってっちゃって良かったの?」
私は屋上で座りながら司馬君に聞いた。
すると、司馬君はニコリ、と笑うだけで何も言わなかった。
「…………。」
どうしようかとも思ったけれど、結局は司馬君の笑顔には逆らえず(?)、私はそこに腰を落ち着かせてお弁当を食べ始めました。










「…………。」
良かった、さんに問いただされたらどうしようかと思った……。
比乃には悪いけど、今、この時を邪魔して欲しくは無いんだ。
さんとの時間だけは、例え比乃でも入ってくる事は許されないんだよ。

そんな事を考えていると……。



ヴヴヴヴヴヴ……



携帯のバイブ音が響いた。
どうやら僕の携帯らしい。
さんが不思議そうな顔をしていたので、ポケットから取り出して見てみる。
メールは比乃からだった。

『今どこにいるのさ〜〜〜!(-"-)』

ごめんね、比乃。
今、そのメールに答える事は出来ないよ。



パタン、と携帯を折りたたんでポケットにしまった。
「メール…、返信しなくて良いの?」
すかさずさんが聞いてくる。
「…………。」
その質問に、僕は微笑む事で答えた。
「…………?」
少し首を傾げたけれど、どうにかさんは納得してくれたらしい。
そう言えば、この前さんに僕のこの笑顔が好きだ、と言われた。
何だか落ち着くんだそうだ。
でも、彼女は僕が今こんな事を考えているなんて思ってはいないんだろう。
僕だって、嫉妬深い1人の人間なんだ。
彼女が出来れば、少しでも2人きりでいたいと思うし、他の誰にも取られたくないと考える。



僕はそんな事を考えながら、目の前でお弁当をおいしそうに食べる彼女を見ていた。










何だか今日は司馬君がおかしいなぁ、と思いながらも、その日1日が終わろうとしていた。
六時間目が終わり、終礼も済んで、私は鞄を持ち司馬君のクラスに向かった。
いつも、クラブに向かう司馬君に声をかけてから帰るのが日課になっている。
本当は一緒に帰れたら良いんだけど、両親とも働いてるので家の事をしなければならない。
だから、今まで一緒に帰った事は無かった。
「司馬君まだかなぁ〜〜〜……。」
行ってみると、司馬君のクラスはまだ終礼中だった。
窓からちらり、と中を覗くと司馬君と目が合った。
ニコリ、と彼は微笑む。
そんな司馬君に、私も手を振りながら微笑む事で返した。
やがて終礼も終わり、担任の先生が出てきた。
それを追うように生徒も出てくる。
教室の前で待っていると、そんな生徒の人ごみの中から、青い髪がチラリと見えた。
私が駆け寄ると、やはり司馬君だった。
「今日はちょっと遅かったね。途中まで一緒に行こうか?」
そう言うと、彼はコクリ、と頷いた。





他愛も無い話をしながら(と、言っても、私が一方的に話していただけだが。)歩いていると、靴箱に着いた。
ここが、一緒にいられる最後の地点。
いつもここで、靴に履き替えサヨナラをする。
いつもの事なのに、やっぱりいつも寂しいな……。
そう思いながら、靴を履き替え司馬君にサヨナラを言おうと思った瞬間ーーーーー……。


グイッ


司馬君が私の腕を引っ張った。
「…………っ!?」
お昼の時と同じだ。
私は急な事に驚いて、とっさに言葉が出なかった。
「ど…どうしたの、司馬君……っ!?」
やっとその言葉を言えた時は、すでに校門を出た所で。
「今日も、野球部の練習あるんでしょ……っ!?」
私の腕を引っ張りながら走る彼の背中に言葉を投げかけるが、返答は一切無い。
彼が今、どんな表情をしているのかさえ分からない。
全力疾走ではないが、運動部の彼と帰宅部の私ではさすがに足の速さは追いつけないもので。
だんだんと引っ張られながらも息が上がってきた。
「ちょっ…、司馬君……!私、もう駄目……っ!!」
息も切れ切れにそう訴えると、彼は少し振り返ってニコリ、と微笑んだ。
息一つ上がらず、涼しい顔で微笑む彼に一瞬息を呑むと、彼は急に停止した。
気が付くと、そこは公園。
私がいつも帰り道に通っている公園だった。
未だに私の腕を掴んでいる彼は、そのままブランコまで私を引っ張っていき、そこに私を座らせた。
「…………?」
私が分からない、と言う顔をすると、彼はまた微笑み、その場を離れた。
(ここで待っとけ、っていう意味かな……。)
何だか今日は、色々な事が起きて、頭が混乱する。
今日の司馬君は、私の知っている司馬君ではないみたいだ。
そんな事を考えていると、自然と溜息が出た。
それと同時に、目の前に差し出されたジュースの缶。
顔を上げると、司馬君が微笑んでいた。
「あ…ありがと……。」
差し出してくる缶を受け取ると、彼は隣のブランコに腰を下ろした。
「……ねぇ、司馬君どうしたの……?何か…、今日の司馬君少し変だよ……。何かあったのなら、私に話して良いんだよ……?」










今日の僕が変、か……。
確かに変に思うだろうね。
いつもの僕しか知らない人だったら。
そりゃあ、僕だってこんな無理矢理な方法はしたくなかったけど。
でも、気が付いたら体が勝手に動いていて。
それがとっても楽しくて。
あぁ、きっと、ずっと僕は我慢してたんだな、って思った。


「これが…、本当の僕だよ……。」
僕は、さんを見て、微笑みながら言った。
「…………っ!?……今、…何て……っ!?」
さんは、目を大きくして驚いてる。
まぁ、確かにさんと付き合い始めてから、僕が声を出して話したのは初めてだけど。
そんなに驚かなくても良いじゃない?
別に、声が出せないわけじゃなかったんだから。
「今までの僕も…、今の僕も…、全部全部、本当の僕なんだよ……。」
おかしくなった訳じゃない。
ただちょっと、今までは自分の気持ちを我慢していただけ。
自分の考える事が怖くて、押さえ込んでいただけ。
でも、今日僕は白状するよ。
君に、本当の僕をさらけ出すよ。
君には、本当の僕を、僕の全てを知ってもらいたいから。
「こんな僕じゃ…嫌いになる……?」
未だに驚いた顔をしている彼女に、静かに聞く。
暫くは反応が無かったけれど、急に彼女は首を横に振り始めた。
「ううん……!嫌いになんかならない……っ!!司馬君のこと、嫌いになれるわけ無いよ……っ!!そりゃあ、少しは驚いたけど…、私は司馬君の事なら、何でも知りたいって思ってたし……。」
一生懸命に言葉をつなげる彼女が愛しくて。
だんだんと顔が赤くなっていくのを見ていると、自然と体が動いた。



キシッ……



と、ブランコがきしむ音だけが響いて。
今、この公園で起こった事を知るのは、赤々とした光を差し込んでいる夕日だけで。
僕は、真っ赤になった彼女を見て、ニコリ、と微笑んだ。
「僕はね…、さん、君が大好きだよ。だから、君を誰にも渡さない。ずっとずっと、僕の側にいてね。」
そう言って、僕は公園を後にした。
さんは、頬に手を当てたまま固まっている。
夕日が一面を赤く染める世界で、彼女の頬は、その何よりも赤かった。

















〜〜〜後書きと言う懺悔文〜〜〜

ハム猫・「ハイーーー、長っっっ々とお待たせしました、11111番のキリリク、水無月若菜様に捧げます。」

司馬・「何か…、長っっっ々と言う表現じゃあ足りないくらい待たせてるね……。」

ハム猫・「う゛っ……。きっと忘れ去られている事間違いなし☆なくらいですな。本当に申し訳ありません……。しかも、そこはかとなくリクに副えてない気が……。」

司馬・「どこが甘々なのさ……。」

ハム猫・「うわん!そんな恨めしそうな目で見ないで……っ!!」

司馬・「黒司馬希望って書いてあるけど、何か別の意味で黒いし……。」

ハム猫・「うわぁ〜〜、司馬君が怖いよ〜〜〜ぅ。何か、ヒロイン視点と司馬君視点の交互で書きたかったんです〜〜〜。最初と最後が違いすぎですな。これまた間が空いた作品なので……。」

司馬・「何が言いたいのか伝わりにくい作品だよね。まぁ、ハム猫にはそういうの多いけど。」

ハム猫・「そこら辺は読む方の素晴らしき想像力にお任せして……。」

司馬・「で、何で逃げてるの?(ガッシリ。)」

ハム猫・「えぇ〜〜〜、いやぁ、後は司馬君に頼もうかな、と。」

司馬・「……はぁ……。ホント、こんな駄作でごめんね。これでも頑張ったそうだから、許してあげてくれると嬉しいな。それじゃあ、また会えると良いね。今日は読んでくれて有り難う!」



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