ボクには、小さい頃からずっと好きな人がいます。
その人はさん。 ボクよりひとつ年上で、十二支高校の二年生です。 ボクの両親とさんの両親が仲が良かったので、小さい頃からよくお世話になっていたんす。 さんはひとつ年が違うだけなのに、何でも出来てボクよりもっと大人みたいな感じがするんす。 ボクはそんなさんの後ろを付いていくばかりだったけど、いつも頼りになるさんがお姉さんみたいで大好きだったっす。 ボクが泣いた時はいつも慰めてくれたし、嬉しい事があった時は一緒に喜んでくれた。 でも、最近は”好き”の種類が変わってきたんすーーーーー……。 そんな君が好き
高校に入学する日、朝、玄関を出たらさんが立っていて、
「もう、忠も高校生かーーー♪」 って言われたっす。 「これからはまた忠と一緒に学校行けるね!」 って、さんは楽しいそうに笑ってたっす。 受験の間はほとんど顔を合わせることも無かったので、久しぶりに見たさんはすごく大人っぽく見えたんす。 最後に会った時よりも髪も伸びてたし、すっごく綺麗になってたし。 一瞬見とれてしまったっす。 「さっ、行こ!学校遅刻しちゃうよっ!!」 そう言ってさんはボクの手を掴んで走り出しました。 何か昔のままみたいな気がして、何だか複雑な気分だったっす……。 ボクはーーー、そんなに変わってないっすかーーーーー……?
学校に行く間も昔の話ばっかりしてた。
”忠ってば昔〜”って、ボクが失敗したり、泣いたりしたときの話ばっかりーーーーー。 さんから見たら、ボクは全然変わってないんすか……?
十二支高校の校門をくぐると、さんの友達らしい人達が何人も挨拶してたっす。
中学の時もそうだったけど、やっぱりさんは友達がたくさんいるんだなぁって思ったっす。 何でも出来るし、頼りになるし、困った人は放っておけない性格だったし、頼まれると嫌とは言えないーーーーー。 そのうえ、明るくて美人だったら友達もたくさん出来るっすよね……。 軽く挨拶を交わしていくさんを見ながら、校舎のほうに向かっていると、後ろからさんの名前を呼ぶ声が聞こえて来たっす。 「ーーー!あれ?誰、その子?」 後ろからさんに抱き付いてきた人が、ボクの方を見て言ったっす。 「ん?あぁ、この子は子津忠之介。幼馴染。……でも、まぁ、世話の焼ける弟みたいなもんよ。」 ボクの肩を引き寄せながら明るく笑って、さんはそう言ったっす。 パシッ……ッ!! その瞬間、何故かボクはさんの手を叩き落としてたっす……。
「……忠之介……?」
何が起こったのか分からないと言った表情で僕を見るさん。 「あっ…、す、すいません……。その…、もう、一人で行くっすから……っ!!」 ボクはそう言って走り出してしまったっす。 ボクは…、いつまでもさんに弟みたいに思われるのが嫌だったんす……。 ボクは、さんを一人の女性として見てたのに、さんはボクを「弟」としてしか見てなかったんすね……? 悲しさで胸がいっぱいになりながら、とにかく校舎へ走った。 走って走って、気がつけばそこは体育館横でした。 もうすぐチャイムがなるから、教室の方に行かなければならなかった。 でも、もうそんな事も気にならなかった。 目の前が真っ白で、頭の中も真っ白で……。 告白もしてないのに、もうフラれたみたいな感じがしたっす。 「はは……。」
ボクは、体育館の壁に背をまかせて、座り込んだ。
これからどうしよう……? こんな気持ちのまま、毎日さんと一緒に学校に通うんだろうか……? 心の中がからっぽになったみたいで、空しくて、悲しくて、ボクは笑う事しか出来なかった。 そんな時ーーーーー。 「忠……っ!!」
さんがボクを見つけて走ってきました。
「何やってんの!忠っ、もうすぐチャイム鳴るでしょ……っ!!」
「…………。」
ボクは、口から出る言葉が無くて、ただ黙ってさんを見た。
「さっきはどうしたの?何か私悪い事した……?」
さんは今度は心配そうに聞いてくる。 「…………。……ボクの事…、”世話の焼ける弟”だって……。」 下を向いて、ポツリ、とつぶやく。 「…………?それですねてたの……?」 首をかしげてさんは聞いてくる。 ボクはフイ、と顔を背けた。 「なぁ〜〜〜んだ、そんな事か……。ごめんごめん。”世話の焼ける”ってのは無しっ。」 ボクの本当の気持ちには気付かず、さんは明るく言った。 「…………!違うっす……っ!!さんはボクの事…、ボクの事、”弟”だって見てたんすかっ!?」 「え……?」 ボクの言っている意味がまったく分からない、という顔をしてさんは言った。 「ボクは…、いつまでたってもさんの”弟”っすか……っ!?どんなに頑張っても、それ以上には見てくれないんすか……っ!?」 自分の気持ちが爆発していくのが分かった。 こんな事、さんにあたっても仕方の無い事なのに……。 「……どうしたの…、忠……。何言ってるの……?」 「ボクがどんなに頑張っても、さんには「弟」にしか映らないんすかっ!?……一人の「男」としては見てくれないんすか……っ!!」 ーーーーー言ってしまったーーーーー
言葉が口を出た瞬間、そう思った。
「あっ……。」 さんのほうを見る。 さんは、少し驚いていたけど、何か考えているようだった。 「忠…、さっきの言葉って……。さっきの言葉から考えたら……。」 さんは、何か宙に浮かんでいる考えを掴もうとしているみたいに、言葉を繰り返した。 「…………。……そうっすよ…、ボクは…、さんの事が好きっす……。ずっとずっと好きだったんす……っ!!」 もうバレてしまったのなら、この気持ちを隠す事も無い。 一気に吐き出してしまおう。 そして、また空しい日々を送れば良い。 そう思い、気持ちを爆発させた。
全ての言葉を言い終えて、どんな言葉が返ってくるのかと恐る恐る待っていたが、なかなか返事が返ってこない。
一体どうしたんだろう…、と思い、顔を上げると、は泣きたい思いを我慢しているように、口を真一文字に結んでいた。 「…………?」 に疑問の視線を投げかける。 「…………っ!!〜〜〜忠の…馬鹿……っ!!」 が、その口を開いたと思ったら大音量の言葉が吹き出した。 「なっ…、何なんすか……っ!?」 断られるでも、何でもなく、いきなり馬鹿と言われて意味の分からない子津。 「〜〜〜っ、もぅ!何なのよっ、何でいまさらそんな事言うのよ……っ!!」 は、とうとう我慢しきれず、瞳からポロポロと涙を流していた。 「……何の、事っすか……?」 本当に意味が分からずに聞く子津。 「何であんたがふっといて、今更告白なんてすんのよ……っ!!」 の口から出た言葉に、子津は一瞬思考が止まった。 「えっ…、ボクがふった……?さんを……っ??」 まったく記憶に無い事である。 「そんなの嘘っすよ……っ!!そんな覚え、ボクには無いっすよ……っ!?」 「私はこの耳ではっっっきりと聞いたわよっ!!『ボクには将来お嫁さんにしたい人がいる』って……っ!!」 子津を指差しながら、は続ける。 「それで、私が「誰?」って聞いたら、『言えないっす』って言ったじゃない……っ!!」 そう言われても、子津にはまったくさっぱり分からない話だった。 「だから私、忠には好きな人がいるんだって思って、頑張って…、好きな気持ち抑えて来たのに……っ!!」 「えっ……!?ぃ、今、何て言ったんすか……っ!?」 今、自分の耳に信じられない言葉が入って来た気がする。 「だから、私も忠が好きだって言ってんのよ……っ!!」 真っ赤な目で子津を見ながら、は言う。 「そんな……っ!?全然知らなかったっすよ…、ボク……っ!!」 すでに、子津は混乱している。 「だから、好きだって事隠してたんだってば……。」 少し落ち着いて涙をぬぐいながら言う。 「……っでも…、それっていつの事なんすか……っ!?その…、ボクがさんに『お嫁さんにしたい人がいる』って言ったのは……。」 「……小学校低学年の頃よ……。」 さんは、少し恥ずかしそうに言った。 「……は……。」 小学校低学年……? そんな頃の事を真に受けていたんすか、さんって……。 しかし…、待てよ……? 小学校低学年の頃……。 そんな会話があったような……? たしか、さんのうちで遊んでた時で……。 ぬいぐるみで遊んでた時に…、そう、確か結婚式ごっこ(の希望)をしていた時に、そういう会話があったような……。
『はぁ〜〜、お嫁さんって憧れるよね〜〜〜♪』
『さんはお嫁さんになりたいんすか……?』 『うん!お嫁さんになって、お母さんが着てたみたいなきれいなドレス着るの……っ!!』 『そうっすか……。きっときれいっすねぇ……。』 『忠は?』 『え……?』 『忠は誰かお嫁さんにしたい人っている?』 『……いる…っすよ……。』 『へぇ〜〜〜、それって誰っ!?』 『…………っ!?ぃ…言えないっすよぅ……っ!!そんなこと……っ!!』
「って、ちょっと待ってくださいよ……っ!!あの時、ボクが思ってたのはさんの事っすよ……っ!?」
「え……?」 キョトン、とは見つめてくる。 「あの時ボクがお嫁さんにしたいと思ってたのは、さんだったんすよ……っ!!」 その言葉を聞いて、の顔は信じられないという気持ちを語っていた。 「えっ…、嘘……。だったら、なんで言ってくれなかったのよ……っ!!」 「さん本人に、目の前で言える訳無いっすよ……っ!!」 「そんな…、じゃあ、つまり…、今までの全ては私の早とちりから始まったって事……っ!?」 「そういう事…みたいっすね……。」 は、手で頬を覆い、「信じられない」と呟いている。 (信じられないのはこっちっすよ……。) 何故か、子津はぐったりと疲れた気分になった。 「……ねぇ、忠……。つまり、私達って、「両思い」な訳よね……?」 少し、気持ちが落ち着いて、が聞いてきた。 「あっ…、ハイ……。そういう事…っすよね……。」 今更ながら、自分が打ち明けてしまった事の恥ずかしさが込み上げてくる。 の顔を見ていられなくて、俯く。 ずっと地面を向いていると、の靴が視界に入った。 「…………?」 ふと、顔を上げると目の前にがいた。 「忠、今まで私の勘違いでずっとこの気持ちを言ってなかったけど、改めて言わせてもらうわ。」 目の前のさんは、嬉しそうに笑った。 「忠、あんたが好きよ。」 その瞬間、自分の顔が熱くなるのが分かった。 「忠は?」 が聞いてくる。 「あっ……!ボクもっす…っ、ボクもさんの事が好きっす……っ!!」 その言葉を聞くと、さんは満足そうに微笑んだ。 ボクも、自然と笑顔になる。 キーーンコーーンカーーンコーーーン
「…………っ!?やばい…っ、忠、始業式が始まっちゃう……っ!!」
そう言って、さんはボクの手を握って走り出したっす。 そして…、ボクはそのさんの手を強く握り返したっす。
とうとう、始業式には間に合わなくて、登校初日から先生にしかられたけど、そんな事も気にならないくらい、今は幸せな気分っす……っ!!
〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「初子津夢・初年上ヒロインやっちゃいました。」 子津・「……何か…まとまってない作品っすねぇ……。」 ハム猫・「だって、下書きなしだもん……。何か、ネタ思いついちゃって。」 子津・「でも、その割には思ってた事あんまり書けてないんすよね。」 ハム猫・「アハ♪やっぱり文才無いと大変だね☆」 子津・「それに、かなり無理矢理な作品でもあるし……。」 ハム猫・「ぐもげはぁあぁぁーーーっ!!そこを突かないで……っ!!確かに、小学校低学年の時に聞いた言葉を信じて、十何年も好きな気持ちを隠し続ける、なんて人がいるかどうか信じがたいですが……。」 子津・「そうしないと、このネタ成り立たないっすもんね……。」 ハム猫・「分かってるじゃないの、子津君……。そうなのさ…、多少無理でも押し通す。そういう世界なのさ……。」 子津・「なに遠い目で語ってんすか……。」 ハム猫・「何か子津君が冷めてて怖いなぁ……。いつものツッコミはどうしたんだい?」 子津・「あんなのいつもやってたら疲れるっすよ。それに、なにキャプテン口調になってるんすか……。」 ハム猫・「あはは、気にしなぁーーーい。」 子津・「はぁ〜〜〜。まったく、こんな管理人でよくこのホームページが続いてるっすよねぇ……。え〜っと…、それじゃあそろそろ締めの言葉にするっすね。いつもこんなトコに見に来てくれてありがとうっす!ボクも本当に嬉しいっすっ!!これからも、良ければ来て下さいね……っ!!」 |