今日はオレにとってとっておきな日だ!

何でかって?

そりゃあ、今日がデートだからさ!

「彼女」が出来たなんて、まだ誰にも秘密なんだぜ?

母さんにも、ばあさんにも、ガスにも、もちろん大地の奴にもな。

いつもは勝手に抜け出して適当に会ってるんだけど…、今回はオレの方からハッキリと誘ったんだ。

「今度、デートしないか?」ってな。

だから、それなりにオレも緊張っての?してるわけだ。

なのに……。

なのにだぜっ!?

何で今日に限って大地を迎えに行かなきゃなんねぇんだっ!?










ーーー君ヲ想エバーーー










「なぁんでなんだよっ!?」
オレは思い切り大声で叫んだ。
「何でも何も、前々から言ってたじゃないですか。大地君が今日来るって。」
目の前のガスは涼しい顔で言ってのける。
「んなの、覚えてねぇよ!ってか、大地が来るとしてもだ、何でオレが空港まで迎えに行ってやらなきゃいけないんだっ!?あいつ何度も月には来てるだろう……っ!?」
何でも無いと言うように返されて、イライラが増す。
オレがどうしてこんなにイラついているのかが分からないガスは、不思議そうな顔をする。
「何でって…、だって久しぶりに会えるんですよ?ラビ君は嬉しくないのですか……?」
クリクリした目をパチパチさせて、ガスが聞いて来る。
「そりゃあ、久しぶりなのはそうだけどよ…、別に空港に行かなくたって後で会えるだろ?どうせここに来るんだしさ。」
あまり軽はずみに喋ると今日の事を言ってしまいそうなので、少し落ち着いて話す。
「一体どうしたんだい、ラビ。」
そんな会話を続けていると、後ろから声が掛かった。
「…………っ!?」
そこにいたのはV−メイ。
ふわふわと地面から浮いている。
「べ…別に何もねぇよ……っ。」
気配に全然気が付かなかった事に少し悔しく想いながらも、本当の事がばれないように普通の返事をする。
「何でもないのなら行っておやりよ。大地もきっと喜ぶさ。」
ニコリ、と笑ってV−メイが言う。
「…………。」
V−メイの言葉に、オレはつい嫌そうな顔をした。
「何だい、それとも今日は他に何かあるってのかい?特に何も行事は無かったと思うけどねぇ……。」
そんな顔を見たV−メイは少しいぶかしむように聞いて来る。
「ぇっ!?ぃや、何でもないぜ!ぇ…、あ、うん、本当…っ分かったよ!大地の奴を迎えに行きゃあ良いんだろっ!?」
かなり痛い質問をされて、オレはつい取り乱してしまった。
見る間にばあさんの顔が疑りの表情になって行くのを見て、オレはガスの腕を掴み走り出した。


こうなりゃ適当にガスを言い包めてデートに行くしかねぇ!










「……と、思ったのによ……。」
げっそりとした表情で呟く。
(何でオレは今空港にいるんだよ……っ。)
途中で何度もガスを言い包めようと試みたが、全く通じなかった。
しかも、気が付けば空港に着いている。
「だああぁぁぁ〜〜〜っ!!こうしてる間に待ち合わせの時間がぁ〜〜〜……っ!!」
他の観光客達のざわめきの中、オレは頭を抱えて叫んだ。
「…………?どうしたんですか、ラビ君?」
大地が空港の搭乗者出口のゲートから出て来るのを待っているガスが、オレを振り返る。
「あーーーっ、もう!何でもねぇよっ!!」
オレはむしゃくしゃして、どっかとソファーに座り込んだ。
(あぁ〜〜〜…、オレ今日でフラれるかも……。)
そう考えると、胸がチクリと痛んだ。





「お〜〜〜いっ、ガス、ラビ……っ!!」
オレがどんよりと、最悪の事態を考えていると奴の楽しそうな声が聞こえた。
「大地君!」
その声を聞いた途端、大地の下へ駆け寄るガス。
オレは、そんな2人を遠目に見ていた。
「久しぶりだな、ガス!」
「ハイ、大地君!」
ニッコニコと楽しそうに会話している2人。
一通り会話を終えてから、大地は急にこちらに目を向けた。
「ラビも、久しぶり!」
オレの方に駆けて来る大地に軽く手を振りながら、チロリ、と見る。
「あぁ、ハイハイ。久しぶりですねー、大地君。」
「どうしたんだ?何か機嫌悪そうだけど……。」
あからさまに嫌そうな態度を取ったせいか、鈍チャンな大地も感づいた。
「あぁ、そうですよっ。今はちょっとイラ付いてるんだよ!だから…、オレ帰るわ。」
思い付いたようにソファから立ち上がり、大地に一言言って立ち去ろうとする。
……が……。
「待てよ、何があったか知らないけど、一緒に行こうぜっ。俺、2人に話したい事いっぱいあるし……。」
服の袖を掴んで、大地がこっちを見てくる。
……んな寂しそうな顔すんなっての。
「オレ今日ちょっと用事があるんだわ。そんな訳で後はまぁガスにでも相手してもらえ。」
そう言って、再び立ち去ろうとすると……。
「用事って何ですか?」
今度はガスが引き止めた。
「おばば様には何もないと言っていましたけど……。」
ガスの目が、純粋に知りたいと言ってくる。
「お前等には関係の無い事だよ!あぁ、もう何も言うな聞くなオレに触るなっ!!オレはもう行く……っ!!」
これ以上ここにいると、いつまでたっても待ち合わせの場所に行けないと思い、オレは走り去った。
「何なんだ、あいつ……。」
「さぁ……?」
大地とガスは、走り去っていくラビの背中を見て呟いた。
「なぁ…、…後、つけてみるか……?」
ぽつり、と大地が言った。
「ラビ君をですか……?」
少し見上げて、ガスが言った。
「うん…、本当は久しぶりに月の色んなトコ回るつもりだったけど、こっちの方が面白そうだし!」
そう言って、大地はリュックを肩に掛けなおして走り出した。
「あっ、待って下さいよーーー!大地君ーーーっ!!」
ガスは、そんな大地を追って、空港を出た。










(あぁ〜〜〜、もう待ち合わせの時間に15分遅れてる……っ!!)
オレは、街を駆けながらそう思った。
普通はデートっつったら、女の方が遅れてくるもんだよな……。
今日は完璧にしようと思ったのに〜〜〜っ!!
夏休みという事もあり、地球からの観光客が街を賑わせている分、走りにくい。
人にぶつかりそうになりながらも、オレは待ち合わせの場所に急いだ。





「ゴメン…っ、待った……っ!?」
息も絶え絶えに辿り着いた時には、すでに待ち合わせ時間から20分以上経過していた。
「ぁっ、ラビ君…、大丈夫……?」
付いた時には、オレの彼女、が心配そうな顔で待っていた。
「そんなに息切らして……。何かあったの……?」
肩で息をしているオレを心配して、顔を覗き込んでくる
あぁ…、のろけって分かってるけど…、可愛いぜ…チクショウ……。
「ぃや…、オレは大丈夫。本当にゴメンな……。ちょっと…まぁ、急に用事が出来て……。」
息を整え、今までの事を忘れてデートを楽しもうと思った時ーーーーー……。
「ねぇ、後ろの人達は、ラビ君のお友達?」
が、不吉な事を言った。
ここで振り向いたら、今頭の中に瞬間的に浮かんだ最悪の状況になるのは分かっているが、後ろを確認しなければ何も始まらない。
オレは、嫌々ながら首を後ろに向けた。
「…………っ!!」
そこには…、やはり想像通り大地とガスがいた。
「……お前等〜〜〜っ!!何してんだよっ、こんな所で……っ!?」
異様にニヤニヤと楽しそうにしている大地を見れば、オレをつけて来ただろう事は丸分かりだが、叫ばずにはいられない。
「え?いやぁ、久しぶりに月を色々と回ってみようかと思ってさ♪」
オレの台詞に、大地はバレバレな嘘で返してきた。
「それよりさ、お前いつの間に彼女なんて出来たんだよっ!?紹介くらいしてくれても良いだろっ。……僕、遥大地!よろしくっ!!」
「私は山本ガスと申します。よろしくお願いします!」
「ぁ、私はです。こちらこそよろしくお願いしますね!」
気が付けば、オレを無視して挨拶なんかしてる3人。
も、ペコリと頭を下げている。
「あ゛ぁ〜〜〜っ!!何勝手に話しかけてんだよ!も、こいつ等の事なんか真面目に相手しなくて良いのっ!!」
オレを無視しまくっている展開にムカつきながらも、オレは大地達との間に入った。
「ぇ…っ、でもラビ君の友達なんでしょ……?」
きょとん、と聞いて来る。
「ぅ゛…、まぁ…友達じゃなくもないっつったらそうだけど……。」
オレは苦い顔で微妙な肯定をした。
「なぁなぁ、僕も久しぶりに月に来たし、一緒に色んな所回ろうぜ!」
突然、大地がそう言っての腕を掴んだ。
「え……っ!?」
一瞬の事に驚く
「なっ、オイ、大地!何処行くんだよ……っ!?」
気が付けば、すでに人ごみの中を駆けて行く大地。
はおろおろと腕を掴まれ付いて行っている。
「待てってば……っ!!」
オレは、人ごみの中に消えていった3人を追い駆けながら叫んだ。



今日のオレの計画は、これからことごとく崩される事になった……。










「はぁ〜〜〜……。」
オレは深く深ーーーく溜息を吐いた。
今いるのは、街の中心にあるファミリーレストラン。
あれから、大地が勝手にを連れ回し(……も満更じゃ無さそうに楽しんでたけど……。)、お昼時になったので休憩も兼ねて入ったのだ。
机に突っ伏したオレの目の前では、グラスの中のソーダの泡がパチパチと音を立てて弾けていた。
「いやぁ〜、俺も1年ぶりに月に来たけど、結構変わってるもんだね。」
ちゃっかりと、の隣に座った大地が言う。
(因みに、オレはの前だ。)
「そうなんだ…、私はまだこっちに住んで間もないから……。」
一口ジュースを飲んで、が言った。
「住んでるの?」
の言葉に、大地が横を向く。
「ぁ、うん。お父さんが月の開発関係のお仕事をする事になって…、こっちに引っ越す事になったの。」
ちょっと苦笑するように、が言う。
「じゃあ…、地球を離れる時寂しかった……?」
大地が、少し真面目な顔をする。
「あっ、ううん、大丈夫っ。それは、ちょっとは寂しかったけど…、友達にもずっと会えない訳じゃ無いし…、こっちに来て、ラビ君にも会えたし……!」
大地の表情を見て、が慌てて両手を振る。
「ふ〜〜〜ん…、そうなんだぁ……♪」
大地に気を使ったの気持ちなんか気に付かず、大地は台詞の後半を聞きながらオレの方を見た。
顔が思いっきりにやけてる。
「…………っ。」
そんな大地を睨み返しながらも、オレは少しと初めて会った時の事を思い出していた。





そう、あれは一ヶ月くらい前の事……。

オレはいつものようにばあさんの魔法の勉強を抜け出して街を歩いてた。


その日も良い天気で、特に目的があった訳でもないが、ぶらぶらと街を見て回ってたんだ。

そんな中、観光客相手なのか道端に店を出している奴に、がひっかかってるのを見つけた。

店の奴は安くするからとか言ってたけど、あれはただちょっと覘こうと思っただけの奴には案外迷惑なもんだ。

もそうだったらしく、また元からの性格で中々断れずにいたみたいだった。

そのまま放って置いたらいつまでたっても逃げられなさそうだったから、オレは軽く店の主人を睨み付ける形で二言三言適当な言葉を言って、の腕を引っ張って走り出した。

その時は、別に特別な感情なんて無かった。

ただ、見ててイライラしたから、連れ出しただけだったんだ。

だから、少し離れた所まで走った後、これからはきっちりはっきり断るように、怒鳴ってやった。

見ててこっちがイライラするんだよ!ってな。

それなのに、の奴、すっげー嬉しそうに「有難う」って笑うんだぜ。


多分そん時かな、…オレがに惚れたのは。

まぁ、それから色々とあって、まだこっちに慣れてないに色んな事を教えたりしながら今現在に至る訳だ。





「本当に、ラビ君に会えて、私幸せだよ。」
そんな事を思い出していると、と目が合ってニコリ、と微笑まれた。
不意な事に少し頬が染まるのが分かる。
「ふ〜ん、そっか。良かったな、ラビ!」
そんなオレを見て、大地もニッコリと笑った。
「…………。」
オレはどう言って良いのか分からず、とりあえず目の前のグラスを手にとって、少し炭酸の抜けたソーダを飲んだ。





「あーーー、そろそろ暗くなってきたな。」
ファミレスを出ると、ゆっくりと空が赤から紫に染まり始めていた。
「ぁ、私そろそろ家に帰らなきゃ。」
がそう言って、一歩先に出る。
「今日は有難う。凄く楽しかったよ♪」
大地とガスにそう言って、ふわりと微笑む。
その2人の後ろにいたオレは、少しボーっとそんなを見ていた。
「じゃあ、またね!」
そう言って、は人ごみの中に走り去って行った。
「じゃあ、私達も帰りましょうか。」
そう言って、ガスと大地が歩き出す。
オレはそんな2人の後を、数歩離れて付いて行った。



今日ははっきり言ってオレの計画は目茶目茶だった。
考えていた計画は1から崩されたし。
それで1日が終わって…、少し拍子抜けと言うか、疲れたというか…、緊張してた分、ぐったりと来ていた。
まぁ、もう大地達を怒る気力も残ってなかったけどな。
あぁ、今度こいつらに邪魔されずに2人だけで出かけられる日ってあるかなぁ…とか考えてたら……。


グイッ……!


「…………っ!?」
急に手首を掴まれ、後ろに引っ張られた。
暫くそのまま引きずられる。
ボーっとしてた分驚きすぎて、オレは声を出せなかった。
人ごみが少なくなった所で、ようやくその手は離れた。
その引っ張った人物を見ると……。
「…………。」
そこには、少し申し訳なさそうながいた。
「……どうしたんだよ……?」
少し間抜けな声でそう聞くと、は困ったような目でオレを見た。
「その…、今日はごめんね。」
「……ハ……?」
の急な言葉に、オレは素っ頓狂な声を上げた。
何か、に謝られるような事、あったっけか?
「ぁ、あの…今日って、その、ラビ君とのデートの日だったでしょ?それなのに…、私、大地君達とはしゃいじゃって……。ラビ君、何だか嫌そうだったから……。」
だんだんと、視線が下を向いていく中、はそう言った。
その言葉に、オレは嬉しいような、恥ずかしいような、言いようの無い気持ちになって行った。
「いや…、良いよ…、その、オレも…まぁ楽しかったし……。」
緩みそうになる頬を頑張って押さえて、どうにか”苦笑”と言う形で止める。
「……その代わりね!」
オレの言葉に、急にが顔を上げた。
「今度は、私がラビ君を誘うねっ。……今度私と…その、デートして下さい……っ!!」
そう言って、はぺこり、と頭を下げた。
「…………っ!!」
のその言葉に驚いたオレは、言葉も出ずに目の前で頭を下げているを凝視した。
だんだんと頬が熱くなって来る。
頭も熱くなって来て、出る言葉が見つからない。
いつまで経ってもが頭を上げないもんだから、オレはとりあえずの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「……ぁ、ありがとなっ。」
そして、一言、そう言った。
すると、ぴょこ、とが顔を上げる。
「ぅわぁっ、急に顔上げんじゃねぇ!ちょっ、今はオレの顔見るな……っ!!」
真っ赤になった顔を、片手で隠し、もう片方の手でを遠ざける。
「…………?……っアハハ……!」
そんなオレを不思議そうに見ていたは、急に笑い出した。
「わ、笑うんじゃねぇよ!」
そう言いつつも、こんな顔で言ったんじゃしまらねぇなと思いながら。
楽しそうなの笑い声を聞いて、今日は失敗したけど今度があるもんな、と。

オレ達にはまだまだ沢山の時があるんだと。


そう思い、オレも笑い出した。





ーーー君ヲ想ウ時ガ、一番幸セーーー
















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「強制終了万歳。」

ラビ・「おいおいおい、何だよコレ!」

ハム猫・「自称・ラビドリー無ですが?」

ラビ・「ドリー”無”かよ……。何かオレすっごいへたれっぽいんだけど……。」

ハム猫・「格好良いラビドリは、私の寿命が縮まります。」

ラビ・「何だよそれ。しかも、これって当初の話からかなりずれてるだろ。」

ハム猫・「だってだって〜〜〜。上手く話が流れなかったんだもん。まぁ、良いじゃん。次があるさ☆」

ラビ・「自分に言い聞かせてるんじゃねぇ……っ!!」

ハム猫・「それにしても、きっと先に帰った大地達はビックリでしょうね。普通にラビが消えてます。」

ラビ・「あ?あいつらはほっといても大丈夫だろ。」

ハム猫・「ぁ、月とか街とか、色々と矛盾点ざっくざくですが、アニメ版の記憶が殆ど無いのでお許しを。そこら辺は想像力でカバー、カバー!」

ラビ・「それで良いのかよ……。はぁ…、ま、こんな奴はほっといてさ、今度は2人っきりで…、デートしような……っ。」




戻る