ーーーツタワラナイキモチーーー こんなにいつも一緒にいるのに こんなに近くにいるのに こんなに側にいるのに どうしてこの気持は伝わらないの……? 気付いて 気付いて 僕のこの気持に………
「司馬君!お昼一緒に食べよっ!!」
今日もまたいつものように同じクラスのさんが話しかけてくる。 「…………。」 僕はコクリと一度首を縦に振った。
「シバ君〜〜〜、お昼一緒に食べよっ!!」
その瞬間に同じクラスの比乃が僕の席に近寄ってきた。 「あっ、ちゃん!ねぇねぇ、ぼくも一緒にお昼食べていい?」 「もちろん、良いよ!司馬君も良いよね?」 「…………。」 僕はコクリと、また頷いた。 いつも繰り返されてる会話。変わらない日常。 変化を求めるのは僕だけですか?
「うわぁ〜〜〜、今日も空が青いねっ!!」
屋上のドアを開けながら、さんが言った。 僕達はいつも屋上でお昼を食べる。 「今日はこの辺に座ろ〜〜〜っと。」 そう言って、さんは腰を下ろした。 「そういやさぁ、今日の英語の先生って宿題出しすぎだよねぇっ!!」 さんが気に食わないといった風に話す。 「…………。」 確かにあの量は少し多いかもしれない……。 「司馬君もそう思うよねーーーっ!!」 不思議なことに、さんには僕の言いたいことが分かるらしい。 そんな人は比乃だけかと思ってたのに……。 この前、そのことを聞いたら、 「何となくだよっ、何となく感じるのっ!!」 と、笑って言った。
「あっ、ちゃんお弁当にミートボール入ってる〜〜〜っ!!」
突然比乃が言った。 「ん?いる?」 「え!良いの〜〜〜っ!?」 とても嬉しそうな比乃。 「良いよ、2つ入ってるから。」 「わ〜〜〜い!ありがとうっ!!」 そう言って、比乃がさんのお弁当にお箸を入れる。 目の前で起こっている事……。 それを見て僕は言い様のない気持ちに駆られた。 僕は無口だから。人の前で喋るのが苦手だから。 いつも心の中で思うだけ。 こういう時に、思っていることを口に出せたら……。 口に出せたら……。
口に出して、どうするの……?
比乃にやめてと言うの? 僕が言ってどうするの……?
1人考え込んでたら、暗い顔になっていたらしく、気が付いたらさんが僕の顔を覗き込んでいた。
「どうしたの、司馬君?具合でも悪いの……?」 とても心配そうな顔……。 ふる ふる ふる 僕は首を横に振って、心配を掛けまいと、微笑んだ。 「シバ君大丈夫〜〜〜?」 比乃も聞いてくる。 比乃はとても大切な親友。 僕がこんなに無口でも、友達になってくれた。 でも、たまに、この場所に比乃がいなかったらな…、さんと僕だけだったら…、と考える時がある。 そんな事は考えちゃいけない事だ。 考えるな、と思っても気が付いたら無意識の内に考えてる。
その理由は僕自身分かっている。
僕がさんに抱いている気持ち……。 この気持ちだけは何故か伝わらない。 早く気付いて。こんなに思っているのに……。 側にいるだけじゃ、心の中で思っているだけじゃ、伝わらないの……? 言葉で言うしかないの……?
今日もまた、いつものように変わりないお昼が終わった。
教室に戻り、次の授業の準備をする。
もやもやした気持ち……。
早く伝えなければいけない事ぐらい僕だって分かっている。 でも、気付けばいつも側には比乃がいて、さんと比乃が楽しそうに話している。 そんな光景を見たら自信を無くして…、側にいられなくなるのなら今のままで良いと思ってしまう。
「シバ君〜〜〜、クラブ行こっ!!」
放課後、比乃が僕の席に来た。 「…………。」 僕は荷物をまとめて比乃と一緒にクラブに向かう。 「今日も頑張ろーね!シバ君っ!!」 笑顔で話しかけてくる比乃。
校舎を出て、部室に向かう途中、僕は英語の辞書を忘れたことに気付いた。
「…………。」 取りに行かなきゃ……。 「え?英語の辞書忘れたって?分かった、じゃあ先に行っとくね!」 比乃はそう行って部室に向かった。
今日は英語の宿題があるから……。
そう思いながら教室に向かう。 自分の席に行って、机の中を見る。 あった……! 良かった、と胸を撫で下ろしている時……。 「あ!司馬君発見〜〜〜っ!!」 後ろから聞き覚えのある声がした。 ビックリして振り返ると、そこにはやはりさんがいた。 「どうしたの?あ、忘れ物?」 さんはいとも簡単にここに来た理由を当てた。 どうしてこんなにすぐに分かるのに、僕の気持ちにだけは気付いてくれないんだろう……? ……考えたら、今って僕とさんだけだよね……?
これは最初で最後のチャンスかもしれない……。
今を逃したらもう、僕の気持ちを伝えられないかもしれない……。
「…………。」
僕は口を開きかけ、何かを言おうとした。 それを不思議に思ったさんは僕に近づいて来る。 「どうしたの?司馬君?」 目の前にさんがいる。 気が付いたら、顔が赤くなっていた。 「どしたの?顔赤いよ?」 「あ…、好き……。」 緊張して、主語も目的語も飛んでいる、単語だけを言ってしまった。 「え…っ、今、司馬君喋った……っ!?」 僕が言葉にした内容よりも、僕が喋った方に驚いているさん。 「僕は…、さんが…、好き……。」 今度はしっかりと伝わるように言った。
さんは、暫く驚いた顔のままだったが、少しして、彼女の目から大粒の涙がこぼれた。
「…………。」 はらはらと、ただ涙を流すさん。
泣かないで……。
そんなに迷惑だったの……? 僕は君を傷付けてしまったの……?
「あ…、ご、ごめん……っ。その、泣かないで……。」
いつまでも泣きやまないさんに、困りながら謝る。 「ごめん…、そんなに迷惑だった……?」 「ち…違うの……っ。」 僕がさんの方にさし出した手を優しく握って言った。 「嬉しくて……。嘘みたいで……。それで泣いてたの……。」 「え……?」 分からないと言ったふうに聞く。 「私も、ずっと司馬君が好きだったの……。でも、私が勝手に司馬君にくっついてるだけだから、嫌われてるかと思ってたの……。」 え……? それじゃあ………? 「司馬君のこと少しでも知りたくて、何を考えてるんだろう、何を思ってるんだろうって、一生懸命分かろうとしたけど、全部は分からなくて、あってるのかも分からないし、勝手に突っ走っちゃって……。」 そんなに頑張ってたんだ……。 全然知らなかった……。 「司馬君優しいから…、きっと私がお昼一緒に食べようって言っても断われないだけかな…、とか思ったりして……。すっごい不安だったの……。」 そんな事…、そんな事無いよ……っ!!
「え……っ!?」
気が付いたら、僕はさんを抱き締めていた。 「僕…、ずっとさんの事が好きだった……。何で他のことは分かってくれるのに、この気持ちにだけは気付いてくれないんだろうって、いつも思ってた……。でも、今日ちゃんと言葉に出してこの気持ちを伝えれて良かった……。やっぱり言葉って大切だね……。」 ゆっくりと抱き締めていた腕を放し、ニコリと微笑む。 「司馬君……。」 さんの涙はもう止まっていた。 「私も…、まだまだ修業が足りなかったんだね……。」 へへ…、と笑ってさんが言う。 「大丈夫…、僕もこれからは大事なことは言葉に出して言うよ……。」
僕は無口だけれど。
人前で喋るのが苦手だけれど。 一番大切な人には、少しずつでも、僕の言葉で、僕の気持ちを伝えていきたいと思う……。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「やりました!下書き無し、一発思いつき司馬夢っ!!」 司馬・「…………。」 ハム猫・「ハイッ、そこ!キャラが全然違うとかのツッコミ入れないっ!!」 司馬・「…………。」 ハム猫・「日本語おかしいのも分かってるから……。わしを追いつめるな……。誰か日本語教えて下さい……。(オイ。)」 司馬・「…………?」 ハム猫・「え?最後の一言言いたいって?いいよ…、どうぞ……。」 司馬・「ここまで読んでくれてありがとう……。これからも、よろしくね……。」 |