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カタン……。



毎朝、同じ時間に、玄関先で音がする。


「今日も来たんだね。」
私はいつもそう言って扉を開ける。
そこにいるのは、炎のように真っ赤な髪と瞳が印象的な男の子。
手には、銛と魚数匹を持っている。
「何だよ、その言い方……。オレが来るのが嫌みてぇじゃねぇか……。」
そう言うと、彼はムスっとした顔になる。
「違うよ。誰もそんな事言ってないでしょ。さ、入って。」
少しへそを曲げてしまった彼をなだめて、中へと誘う。
しぶしぶと、彼は中に入って行った。
私は、そんな彼から魚を受け取り、焼くために台所へ向かった。


彼と出会ってから、私の朝食は焼き魚と決まってしまったのです。










ーーー口実ーーー










「でも、本当にもう良いんだよ?」
私は、朝食を食べながら、小ぶりな机の向かい側に座った彼を見つめて言った。
「お前が良くてもオレは良くないね。」
彼は、一緒に朝食を食べながらいつもと同じ事を繰り返す。


彼の名前は海火子ーーーーー。
少し前に、偶然怪我をしている彼を見つけて、簡単な手当てをしたんだけど……。
海火子は誰かにカリを作るのが嫌みたいで、そのお礼にって毎日朝、魚を取って来てくれる。
「私、自分が暮らして行けるくらいのお金は稼いでるんだからね!海火子だって朝早くから毎日海行って魚取って来るの大変でしょ?」
優しい口調でそう言っても、
「オレだっていつもこうやってメシ食わせてもらってるんだから、良いじゃねぇか。」
涼しい口調でさらり、と返す。
やっぱり何でか、海火子には口では勝てない。
「まぁ…、そりゃ助かってるのは助かってるけど……。」
これで良いのかなぁ…、と、心の中で呟く。
「あっ、そうだ!ねぇ、海火子って今日この後空いてる?」
ふと思いつき、机に身を乗り出して聞いた。
「ん?あぁ、オレは暇だけど……。」
少し驚いた海火子は、目をパチクリ、とさせて言った。
「今日はね、私お仕事無いから一緒にどこか行かない?いつもお魚貰ってるお礼に、好きな所連れてってあげる!」
珍しく少し驚いている海火子の前で、ニッコリ、と笑った。
「好きな所…ねぇ……。」
すると、海火子は少し考えるようにして、
「よし、じゃあ、昼寝にもってこいな場所教えてくれよ。」
ニヤリ、と笑い、そう言った。










「へぇ~~~、本当に、昼寝にはもってこいだな。」
海火子は、小ぶりな丘から目下に広がる海を見つめながら言った。
「そうでしょ。ここはねぇ…、私のお気に入りの場所なんだよ。」
私は、そこに生えている大きな木の下で木漏れ日を浴びながら、海火子の背中に声を掛ける。
「そんな場所なのに、オレなんかに教えて良いのかよ?」
私の声にこちらを振り返り、聞いてくる。
「うん。海火子だから、教えたの。」
暖かな日差しに、目を細めながら言う。
すると、彼は少し照れたように目を逸らし、頭をぽりぽりと掻いた。
そして、一つ息を吐くとこちらに向かって歩き出し、私の隣に腰を下ろした。
「ねぇ、この木、大きいでしょ。こうやってもたれてるとね、木の声が聞こえて来るんだよ。」
手足を伸ばし、背中を木の幹に預けて目を閉じる。
「木の声……?」
海火子は少し不思議そうな顔をして、私と同じようにもたれかかった。



それから暫く、2人共黙ったまま、ただ耳を澄ましていた。


頭上からは、木々の葉が擦れる音……。


背中からは、木がゆっくりと、しかし確かに水を吸い上げる音が聞こえる。



「……本当だな……。」
ゆっくりと、目を開けた海火子は言った。
「ね、言ったでしょ?何だかこうしてると、すっごく落ち着くんだよねーーー。」
幸せそうな声でそう言いながら、軽く伸びをする。
「ねぇ、海火子はお昼寝がしたいんだよね?一緒に寝ようか!」
クルリ、と海火子の方に顔を向けて、微笑む。
「…………っ!?ぇ、あ、あぁ……。」
そんな不意打ちの笑顔に少し驚きつつも、海火子は首を縦に振った。
青々と茂る草の上に、手足を投げ出しゴロッと転がる。
何処までも晴れ渡る空を見て、胸一杯に空気を吸い込む。
ぽかぽかとした天気のお蔭もあり、気持ち良く眠れそうだった。





「…………。」
暫く目を閉じて寝転がっていた海火子は、チラリと目を開けて、隣を見た。
「……なぁ、…起きてるか……?」
「……なぁに?」
その声に、少しの間を空けて花月が答えた。
「……お前さ…、オレが来るのって…やっぱり迷惑か……?」
恐る恐る、聞いてみた。
その瞬間、隣の花月がガバリ、と起き上がった。
「何言ってんの……っ!?そんな訳無いじゃない!」
心底驚いている顔だった。
「……っ本当の事言って良いんだぜっ。毎日のように勝手に来られて、迷惑してるんじゃねぇのか……っ!?」
海火子もガバリ、と起き上がり声を上げる。
「本当に、何言ってるの?今日の海火子少しおかしいよっ!?」
「だってよ、今朝だって言ってたじゃねぇか!『もう良い』って……っ!!」
海火子が、そう言ってそっぽを向く。
「ぁ、あれは、海火子が大変だと思って……っ!!」
花月が必死に弁解する。
「オレにはあれしかないんだ…っ、魚を取って来るくらいしか……っ!!」
背を向けた海火子は、自分を責めるような声で言った。
「だからっ、それが良いんだって!私は…、そんなカリとかお礼とか抜きで、海火子に来てもらいたいだけなの……っ!!」
「…………っ!?」
その言葉に、海火子は一瞬体を強張らせた。
「私は…、もっともっと、海火子と一緒に色んな話とかしたいよ……。そんな、お礼とか抜きでもっと近い関係で付き合いたいよ……。」
ぴくりとも動かなくなった肩に話しかける。
「……本当かよ……。」
少しして、恐る恐る、と言う声で海火子が尋ねた。
「……本当だよ……?」
そう言うと、海火子は押し黙った。
「……口実……。」
暫く黙ったままだった海火子が、急にポツリと呟いた。
「え……?」
「口実が…、欲しかったんだ……。だから、それを取り上げられるのが、怖かった……。」
未だにこちらに背を向けたままで海火子は少しずつ言葉を紡ぐ。
「口実…って、家に来る……?」
その問い掛けに、海火子は微かに首を縦に振った。
「……なぁんだ、海火子ってそんな事考えてたんだ。」
花月は大きく息を吐き、そう言った。
「そんな事って何だよ……!」
その言葉に、つい海火子が顔を向ける。
「だって。」
そんな海火子の目を見つめて、花月は言った。
「そんな口実なんて元々必要無かったんだから。」
そう言って、フワリ、と微笑んだ。
「…………っ。」
そんな花月の笑顔を見て、海火子は褐色の肌を少し赤くさせた。
ぽかぽかとした日差しが暖かい、ゆっくりとした午後の事だった。
















~~~後書き~~~

ハム猫・「うわっはー、とうとう書いちゃったよ、ワタルドリーム。(棒読み)」

海火子・「……絶対こんな事してるのってお前だけだよな……。」

ハム猫・「だよね、ワタルでドリームって外道だよね……。(沈)」

海火子・「とか言いつつ、「手始めに海火子」とか考えてるのは何処のどいつだよ。」

ハム猫・「えぇ~~、何の事かな~~~?」

海火子・「激しく目線を逸らすな。」

ハム猫・「いや…、だってネタが思いついちゃって……。書いてる内にだんだんおかしくなって来ちゃったので強制終了ですけど。海火子だったら一応特定の相手がいる訳ではないし良いかなぁ~~~…、と。ぇ、プリプリ姫?……聞こえませんなぁ。(遠い目)」

海火子・「2の資料も何も無いから適当なんだよな。」

ハム猫・「そうなんだよね。記憶が全く無いんだよね。と、言う訳で色々とツッコミ所もあるかと思いますが、無視の方向で。まぁ、当たり前の如く2よりは前設定ですが。」

海火子・「激しくオレが偽者だとか、そう言う苦情は受け付けてないぜ。」

ハム猫・「まぁ、マイナードリーマーとして、これからも茨の道を突き進もうかと思います。」

海火子・「……とか言ってるからさ、もし気が向いたらまた相手してやってくれよな。」



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