スコア王国ーーーーー……。

活気があり、人々の笑顔が眩しい国ーーーーー……。



しかし、この国は今はもう、1人の魔族によって滅ぼされていた……。










ーーー鎖ーーー










私は、幼い頃に親に売られた。
それから今まで、ずっとずっと、この家の夫婦に奴隷のように扱われていた。
食事は最低限のもの。
最低限動ける程度のものしか与えられなかった。
朝早くから家中を掃除したり、店の準備をしたり……。
あいつらがのうのうと朝食を食べたり、何気ない会話をしている時も、私は一分一秒さえ止まる事無く働いていた。
売られた頃は、反発して言われた仕事をしなかった事もあった。
しかし、そうすると、只でさえ少ない食事も貰えず、ずっと地下の物置部屋に閉じ込められる事になる。
そうなる事を知ってからは、私は反発するのを止めた。
恨んでも恨んでも、尽きないほどの憎悪の念と闘い、いつしかその気持ちを押し込めることが出来る様になった。
そう…、今では私は何の感情も持たない人形ーーーーー。
言われた仕事を只こなしていく、便利な人形なのだ。





しかし、そんな私の繰り返しな日々に、変化が訪れたーーーーー……。










「ハァハハハハハァ……ッ!!」



国中に響き渡るほどの狂気の笑い声。

そして、それと同時に起こる、人々の悲鳴。

ひどい地鳴り。

この世界全てが崩れて行くような衝撃。










「…………っ!?」
私がそれを聞いたのは、地下室にいる時だった。
いつも通り、地下室の酒ビンやら食料やらを運ぶために下りて来ていたのだ。
今までは、地下室は静かなものだった。
地上の喧騒も笑い声もほとんど聞こえた事は無い。
そこだけ切り離されたように、音の無い世界だった。
しかし、今日は違っていた。
国中の人々の、身を裂くような悲鳴。
それにも負けないような、狂ったような笑い声ーーーーー。



楽しそうーーーーー……。



その笑いを聞いた時私は、心の中にその言葉が浮かんだ。
普通の人なら恐怖に身がすくみ、動けなくなるような酷い悲鳴の嵐の中で、私の心は驚くほどに冷静だった。
手に持っていた酒ビンを床に置く。
1階へと向かう階段に足をかける。
激しい揺れがまだ続く中、私は一歩一歩、地上へ近付いていた……。










1階に上がったかと思うと、そこはもう以前の形を保っていなかった。
地上のものは全て薙ぎ倒されたと言っても良いくらいに、全てが目茶苦茶だった。
あちこち瓦礫だらけで、煙が立っている。
そしてーーー、次に目に映ったのは、死体の山だった。
折り重なって、人々が死んでいる。
視線を移動しても、瓦礫と死体以外に目に映るものは何も無かった。
立ち上がって、足を数歩踏み出す。
ふと見た足元には、例の夫婦が庇い合う様な形で死んでいた。



私はーーー自由ーーーーー……?



その二つの死体を、無機質な瞳で見つめながら、頭の中でそんな事を考えた。
この状態を見れば、自分も殺されると考えるのが普通なのかもしれないが、その時の私にはそんな事は関係無かった。
未だに響き渡っている、例の笑い声のする方向に、走り出した。
今までこんなに軽やかな気持ちで走った事は無かっただろう。
息を弾ませ、足元など気にせず、只月だけがぽっかりと夜空を照らす中、私は一生懸命に走った。
そして…、見つけたーーーーー……。
大きな月を背に、狂ったように笑う人物ーーーーー。





魔族ーーーーー……?





今まで、話で聞いた事はあったが、見た事は無かった。
瓦礫と死体の山の上に…、2人……。
夜の闇の色に溶け入る様な、紫と青をイメージさせる魔族。
あの人達が…、私を自由にしてくれたーーーーー……。
その時、私は久しぶりに…嬉しさを感じていたのかもしれない……。
一歩一歩、その人物に近寄って行った。
数歩近寄った時点で、相手は振り返った。
深い、深い紫の瞳で射竦められる。
ニヤリ…、と口元を上げたと思うと、次の瞬間には私の目の前に来ていた。


「ったくよーー、まだ人間が残ってたとはな……。」


そう言いながら、腕を振り上げる。
何のためらいも無く、その腕は振り下ろされる。





「ありがとう……。」





その人物が、腕を振り下ろし、私に死を与える瞬間に、私の口からはその言葉が出た。

「…………っ!?」

目の前の人物は、目を見開いて腕を止めた。
驚いた顔で、私を見ている。
「ありがとう…、私を自由にしてくれて……。」
私は、頬に何か暖かいものを感じた。


涙ーーーーー……。


ずっと忘れていたもの。
まだ、そんなものが私に残っていたんだ。
これはきっと、嬉し涙。
私をずっと縛っていた鎖を、この人は砕いてくれた。
私を縛る全てを、この人は取り払ってくれた。





「……ありがとう……!」





私はそう言うと、目の前の魔族に抱きついた。
「な……っ!?」
その瞬間、その魔族は当惑したような声を出した。
少し向こうの瓦礫の山の上にいた青い魔族も、驚いた声を上げた。



暖かいーーーーー……。



久しぶりに感じた暖かさ。
私の心に広がる、ふうわりした気持ち。
優しい気持ち。
あぁ、この人が、私の人生を変えてくれるんだ。
私はその時、そう確信した。










目の前の女が、急に抱き付いてきやがった。
こいつはオレが怖くないのか?
自由がどうの、とか言ってやがったが……。
意味が分からねぇ。
でも…、何なんだ、この気持ちは……?
生まれて此の方、こんな気持ちは感じた事が無い。
何なんだ?
こいつが何かしたとでも言うのか?
でも…、何故か嫌じゃない……。
一体何なんだ……?
心のどこかが、何だか懐かしいような…、むず痒いような……。
暫くしたが、一向にこの女が離れる気配が無ぇ。
オレは、いてもたってもいられず、その女を引き剥がした。





「お前…、オレが怖くないのか……?」
肩を掴んで聞く。
「……何でですか……?あなたはこんなに優しいのに……。」
私は、あなたの暖かさを感じました。
そう言って目の前の女は、涙の筋が残る顔で、笑いやがった。
「…………。」
今まで、こんな人間は見た事が無い。
瞳には恐怖の色が無く、しかし、冷徹な瞳では無い。
人間でも、魔族でもないような。
そんな不思議なヤツ。





おもしろい。





「お前…、オレと一緒に来るか……?」
オレは、女と目を合わせてそう言った。
その瞬間、女は一瞬目を見開き、次にはオレの予想通りの返事をした。



「……はいっ……!!」



「ちょっ…、ヴォーカル様っ!?良いんですかっ、そんな人間を……っ!?」
「うるせーんだよ。黙れっつーの。」
後ろからオル・ゴールの野郎が顔を出してくる。
オレは、そんなヤツをとりあえず足で踏みながら、女を抱き上げた。
「お前の命…、オレに預けろよ……。」
そう言って、オレは夜空に飛び立った。










これが…、私のヴォーカルとオル・ゴールとの出会いでした……。

私は、人間だけれど、魔族の側にいます。

でも、人間と魔族の違いって何ですか?

見かけですか?

中身ですか?

人間でも、人を殺す人はいます。

それを楽しんでいる人はいます。

何も変わりません。

ただ、人間が…自分が正しいと思っている人間が、そんな人達と自分を一緒にしたくないから。

だから、人間と魔族という区切りを作っただけなんです。

だって、私は感じます。

魔族の暖かさを。

優しさを。

きっと、私の事を気が狂ったとか、色々と言う人もいるだろうけど…、私は後悔なんかしません。

私の居場所は…、ここなんです……。

















〜〜〜後書きって言うか、注意書き?〜〜〜

オル・ゴール・「まずは、こんな作品を読んで下さって有り難うございマス。」

ハム猫・「つい、愛ゆえに突っ走って書いてしまったんですが、読んで気分を悪くされたらすみません……。原作に出来るだけ沿った形で、と思ったんですが、中々無理でしたね……。」

ヴォーカル・「原作に沿るもなにも、内容無茶苦茶支離滅裂で訳分かんねぇーしよー。」

ハム猫・「ま、まぁ、そこは一発下書き無し思いつき打ち込み、という事で目を瞑ってやって下さい……。ただ、私が言いたかったのは、ヴォーカルは自分を認めて欲しいが為に暴力を振るっている、と書いていたので、もしも誰かが純粋にその力を認めていたら、彼の人生は少しは違っていたのかな、と思いまして……。あと、人間と魔族の違い、とか……。いえ、根本的に違うじゃん、とか言われたらお終いなんですが。オーボウさんとか、良い人になった魔族さんもいるのになぁ…、と思いまして。まぁ、ハーメル一行よりも、魔族側の方が好きなヤツの考えなのであまりお気になさらず……。」

ヴォーカル・「大きなお世話だっつーの。」

ハム猫・「あ〜、ハイハイ。分かりましたから、そうやって頭踏むの止めて下さいってば!頭蓋骨が陥没するっ!!」

ヴォーカル・「テメーの頭がそこにあるのが悪い。」

ハム猫・「無茶な……っ!!……えぇ〜と、あと、スコア王国は、きっと良い国なので、このヒロイン(?)みたいな酷い事は起こっていないと思うんですが、こういう設定にでもしなきゃ、話書けなかったんで……。本当は、こんな暗い内容じゃなくて、ギャグ物とか書きたかったんですが、さすがに初っ端から原作無視しまくるのもなぁ…、と思ったんで。(って事は、これからまだ書く気なんかい。)それでは、最後にもう一度、本当にこんな作品を読んで下さって有り難うございました。感想など、頂けると嬉しいです!」

オル・ゴール・「この話の考え方は当サイト管理人個人の考え方なので、こういう考えを受け付けない方もいらっしゃるでしょうけれど、苦情は受け付けませんのでデ…。そこの所はご了承お願いしマス。」



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