…………。 視線を、感じる……。 ーーー初めまして、リーフーーー
ある、日差し暖かな休日。
久しぶりに予定が無かったので、ゆっくりと眠ろうと考えていただったが、現実はそう甘くなかったようだ。 先程からずっと、視線を感じる。 真っ直ぐとこちらを見てくる視線。 (今度は何だってのよ……。)
今まで散々爽やかな朝を妨害されてきたは、元凶の顔を思い浮かべる。
ここで目を開けては、爽やかな朝は実現しない。 しかし、このまま寝たふりをし続けて、変な事をされたらもっと堪らない。 (……しょうがない……。) は意を決し、開口一番何を怒鳴ってやろうかと考えながら目を開けた。 ・・・・・・・・・・。 「……っぎゃーーーっ!!」
しかし、そこに響いたのは罵詈雑言ではなく、の悲鳴。
それもそのはず……。 「あっ、パパーーー!ママが起きたよーーー!」
目の前にいたのは、プラントマンではなく、彼に似た、しかし子供型のナビだったのだ。
「おや、やっと起きたかい?」 その声を聞いてか、プラントマンが姿を現した。 手には二つのカップが持たれている。 「おはよう。ゆっくり寝れたかい?」 「おはよー、ママ!」 微笑んでいる2人を見て、混乱は増すばかりな。 「ぱ…パ、パパ……っ!?パ、パパイヤ?マンゴー……っ!?」 頭を抱えつつ、どうにかこの目の前の光景から逃げようとする。 「そこまで懸命に否定しなくても……。」 懸命に空耳だと思い込もうとしているに向かい、ゆっくりと近付くプラントマン。 「大丈夫かい、。ほら、これを飲んで落ち着いて。」 ベッドの縁に座りながら差し出されたのは、温かそうに湯気を上げるコーヒー。 「いや、大丈夫も何も絶対に元凶あんただから。テメー今度は何をした。」 そう言いつつも、差し出されたカップを受け取る。 ちゅ。 その瞬間。
「あ。」
「…………っ!?」 頬に感触を感じた瞬間、反射的には受け取ったカップの中身をプラントマンにかけた。 流石のプラントマンもそれは予想しなかったらしく、見事に足に掛かったコーヒーに驚いたようだ。 「あーーー!何してんのよ!あぁ、もうっ、シーツに染みが……っ!!」 しかし、はプラントマンの足など関係無く、ベッドのシーツに広がっていく茶色い染みの方を心配した。 「……っ、…、君がかけておいてそれはちょっと酷くないかい……?子供の前だって言うのに……。」 「誰の?」 シーツを片付けるのに必死になっていたが、そのプラントマンの言葉を耳にした途端、彼が置いたカップを手に掲げる。 そのカップには、まだ並々とコーヒーが入っていた。 「いや、落ち着いて…、この間言ったじゃないか、子供が欲しいって。」 「あんたがね。」 珍しく立場が逆転し、がカップを傾けようとした瞬間……。 「ママッ、止めてよーーー!」 ガシッと足に衝撃を感じた。 見ると、先程の子供型ナビが抱き付いている。 ……見れば見るほどにプラントマンに似ている。 ナビが自然に成長するなら、きっと彼の子供時代はこんな感じだったに違いない。 ……純粋に澄み切った瞳は、決して彼には似ていないけれど。 「……君は、誰かな……?」 そのナビを見て、未だに手は傾けかけたままなは、笑顔で尋ねた。 「ぼく?ぼくはねぇ、リーフ!パパとママの子供だよ!」 その問い掛けに、リーフが笑顔一杯元気に答えた瞬間……。 「あぁ〜〜〜ら、私は子供を持った記憶が無いんですけど。今度は何をやったのかな、ん?」 リーフに問いかけたままの笑顔で、まるでギシギシと音がしそうなくらいにぎこちなく振り向く。 「いや、ただ幸せな家庭の朝を再現しようと……。」 プチッ。 「幸せな家庭の朝に悲鳴は無いわーーーっ!!」 ドボドボドボ。 リーフは、生まれて間もなく、衝撃的な現場を目撃する事となった。 ーーーーー。
「……で、改めてしっかりちゃんと筋道だって説明して頂戴。」
寝室の片付け諸々も終わって、昼近い時間。 リビングのテーブルに座って、目の前の2人を睨み付けた。 「……リーフ、ママは極度に照れ屋さんなだけだからね……。」 隣で、どうしたものかと怯えた瞳のリーフを撫でながら、プラントマンが優しく言う。 バンッ!!
その瞬間、が机を叩いた。
「ふぇ……っ。」 その余りの音に驚くリーフ。 「ぅっ、ふぅ……っ。」 見る間に目に涙が溜まり、静かな沈黙の中、リーフの嗚咽が響き始めた。 「…………っ!?」 流石に、いきなり現れた知らないナビと言っても、子供型に泣かれると辛い。 かなり巡り巡っているとはいえ、直接泣かせたのは自分でもある。 「……泣かせたのはだからね……。」 じとりと視線を送ってくるプラントマンに、言葉を詰まらす。 「わ、分かったわよ……っ!!」 そう言うと、は立ち上がり、向かいのリーフの側にしゃがみ込んだ。 「……その…、ご、ごめんね……?驚かすつもりはなかったの……。君は悪くないし、悪いのは全部この隣の変な戯言言ってセクハラして来る事の元凶だから……っ。」 そ…っと、恐々とリーフの頭を撫でながら、出来るだけ優しい声で言う。 「……さり気無く酷い事を織り交ぜてないかい?」 隣で何か言ってるプラントマンは無視をしておく。 「私も…、その、朝起きていきなり初めてな君がいたり、そこの変なおじさんにセクハラされたりで混乱して…、頭にきてたから……。だから、その…、本当にごめん……。」 子供の扱いは慣れていないせいか、どうして良いのか分からない。 どうやったら泣き止んでくれるのだろう。 「……更に酷くなってるね……。」 隣で以下略なプラントマンは完全に無視して、こっそりとリーフの顔を覗き見る。 「……もう怒ってない……?」 覗き込むと、泣いていたリーフと視線が合った。 すん、と鼻をすする。 「……うん、君には。」 そう言うと、リーフは最後にグイと涙を拭うと、ニコリと笑った。 「ぼくも…、初めてでビックリしちゃったけど、やっぱりママはパパが言った通り優しいや!」 「…………っ!?」 その言葉と共に、グイッと首に抱き付かれた。 余りの勢いに一瞬倒れかけたが、ぐっと我慢する。 「ぇっ、ちょっ…、その……!」 相手が全体重を任せてくる中、どうしたら良いか迷いつつも、安定させるために抱きかかえる。 しっかりと受け止めてみると、意外と重かった。 ……人間の子供も、このくらいの年はこんなに重いのかな…と思いつつも。 現実に戻ってみると、リーフは一向に離れてくれそうに無い。 「……フフ…、早速リーフに気に入られたようだね。」 楽しそうにその光景を眺めているプラントマンをじろりと一瞥しつつ、しょうがないので抱きかかえたまま自分の席に戻る。 椅子に座ると、膝の上にリーフを乗せた。 「……で、改めまして事の元凶さん。これはどう言う事かな……?」 リーフが目の前にいる手前、怒鳴りつける事は出来ないので、淡々と問い詰める。 「どう言う事も何も、リーフは私達の子供だよ。」 至って落ち着いた様子で答えるプラントマン。 「……っで、何でこの子は実体化してるのかな……?」 「そりゃあ、私のプログラムを分けたからね。」 「…………。」 このナビにまともな回答を期待するだけ無駄だったのだろうけど、あの簡単な回答で理解しろと言うのは無理がある。 そんなに、簡単に言ってのける事だろうか。 確かに、彼は暫く前に「子供のナビを作る」と言って篭った。 が、ここまで見事に作り上げる事が出来るのだろうか。 「……全ては愛の力だよ。」 まるで、人の心を読み取ったかのように、微笑みかけられる。 「…………っ。」 その楽しそうな顔にムカつきつつも、怒鳴りたい衝動を我慢する。 「因みに、リーフは基本的な情報や知能は備わっているけれど、これから色々と見聞きして成長していくようにしてるから、余り悪い言葉使いをしていると、リーフに移るからね。」 「お前がそう言わせてるんだろ……っ。」 頬杖を付いて言って来る相手に、我慢の限界が近いは青筋を浮かべる。 「ママー、ケンカは駄目だよーーー?」 そんなの服を引っ張って、リーフが覗き込んでくる。 「……ぇっ、いや、その、喧嘩って訳じゃ……っ。」 また泣かれては困ると言う思いから、ついリーフの前では強く出れない。 「大丈夫だよ、リーフ。さっきも言ったけど、ママは恥ずかしがり屋でね。好きなのに素直になれないとても可愛らしい人なんだよ。」 「へぇ〜〜っ、そうなんだーーーっ!!」 「違ーーーうっ!!」 素直故にプラントマンの言うままを受け入れてしまうリーフ。 気が付けば、そんな2人に振り回されている。 「……っ、こうなったら!この子は絶対にまともに育ててやる!あんなみたいな変態に任せてられないわっ!!」 そう言って、ガッと立ち上がる。 驚いたリーフは、途端に膝から飛び降りた。 「因みに!私を”ママ”って呼ぶのは止めてね。プラントマンはあなたにとって”パパ”かもしれないけど、私の場合は違うから。」 リーフの前にしゃがみ込んで、人差し指を立てる。 「……そうなの……?」 そんな真剣なに、リーフは小首を傾げる。 生まれて教えられた情報と違う事に、リーフはプラントマンの方を見る。 「は、”ママ”よりも”お母さん”の方が良いのかい?」 「そう言う観点じゃなくて……っ!!」 わざとらしいその言葉に、つい叫ぶ。 「……じゃあ、何て呼べば良いの……?」 そんなを見て、リーフは、今度は反対側に首を傾げる。 「……んーーー…、別に…どうって訳じゃないけど…、で良いよ。」 「そっか…、じゃあ、パパとお揃いだね!」 の言葉を聞いて、嬉しそうにニッコリと笑うリーフ。 「ハハ…、そうだ、ね……。」 何だかもうドッと疲れが出てきて、言い返す気も失せつつ。
これから始まる、今まで以上に大変な日々を思うと、ここで気を失いたいと思うなのだった……。
〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「あっははは、ついうっかり書いちゃったよリーフ編(番外編)でしたっ!!」 プラントマン・「もう自棄だね。」 ハム猫・「いや、でも、ご要望も頂いたので……。本当に有難う御座います。こんななっちゃいましたが。」 プラントマン・「本当はリーフはゲームで出そうとしてたそうだが、実現するのが限りなく不可能そうだったからね。」 ハム猫・「うぅ、実際にリーフを動かした事が無いので、反応怖いですが……。」 プラントマン・「あまり喋っては無いけどね。」 ハム猫・「しかし、不思議な事に。リーフが出ると、夢主さんの方が立場が強くなるようです。ビックリです。やはり、女は強し・母は強しと言う事でしょうか……。」 プラントマン・「フフ…、はああ言いながらもしっかりと”母親”してるじゃないかい。」 ハム猫・「ハイ、今後はリーフの純粋さが夢主さんの唯一の癒しとなります。お気に入りです。」 プラントマン・「本当の家族のようになるんだね。」 ハム猫・「プラントさんを省いて。てか、余りに夢主さんがリーフにばかり構うので、プラントさん寂しい思いしますよ?」 プラントマン・「……いや、何だいその設定?」 ハム猫・「いえ、事実ですし?」 プラントマン・「……ちょっと先走ったかな……。」 ハム猫・「今更悩んでも仕方ないですし。ま、あくまで番外編なので、本編にはリーフは出ませんし。番外編では思い切りプラントさん苛める感じで。」 プラントマン・「……何だか今聞き捨てなら無い言葉が聞こえた気がするが……。まぁ、その目論みも続きが書ければの場合だしね……。限りなく見通しの無い話だから、どうなるかは分からないが……。まぁ、良ければまた覘きに来てくれたまえ。」 |