浜辺の波の音が心地よく聞こえる店内ーーーーー。

そう、ここは、ジャワイ島にある「MaHa弐番」。

マハジャラマ達、(元)WWWが穏やかに開店前の準備をしている。

そんな、静かな空間にーーーーー……。










「MaHa弐番へようこそ」










「私をここで雇ってください……っ!!」
バンッ、と言う大きな音と共に、扉が開く。
準備中、と書かれた掛札が揺れた。

準備をしていた全員の視線が入り口に向かう。
そこに立っていたのは…、高校生ぐらいの少女。
まだ少し、幼さを残す顔立ちをしていた。
しかし、その瞳は至って真剣そのもの。
その視線に、皆言葉を失った。



「あ゛ーーー……。ぇっと…、お前…誰なんだ……?」
誰も口を開かない中、最初に言葉を発したのはヒノケンだった。
素直に、思った事を口にする。
「私は!ここ…、「MaHa弐番」で働きたくて来ましたっ!!」
はっきりとした声。
その声に、彼女の本気が伺える。
しかしーーーーー……。
「今、ウチではバイトは募集していないのだが……。」
キッチンでカレーを焦げ付かないよう混ぜていたマハジャラマが口を開く。
「分かってます…、でも!そこを何とかお願いします!バイト代、いりませんから……っ!!」
彼女が発した言葉に、皆目を丸くする。
「オイオイ、バイト代はいらないって…、じゃあ、何のためにバイトするんだよ?」
ヒノケンが、腰に手を当てながら聞く。
「それは…、ここが「MaHa弐番」だから……。」
「「「「…………?」」」」
その言葉に、全員疑問符を浮かべる。
「私…、「MaHa壱番」で食べたカレーに惚れたんです!だから…、ここで働きたい!ずっとそう思ってたんです……っ!!」
「「「「…………っ!?」」」」
彼女の爆弾発言に、全員絶句した。
ここまで熱くカレーに情熱を掛けられる人が何処にいようか。
「……よしっ、その気持ち、よく分かったぞ……。」
気が付けば、キッチンから出て来たマハジャラマが、の肩に手を置いて頷いている。
「本当ですか……っ!?」
目を輝かせる
「ぃや、ちょっと待てーーーっ!!」
そんな2人のやり取りを見て、間に入り込むヒノケン。
「ちょっと待てよ!お前…、とか言ったか、両親の許可は取ってるのかっ!?ここはジャワイ島だぞ!日本じゃないんだぞっ!!バイト代も出ないのに、親が許可したのかっ!?」
「貰ってませんよ。」
あっさりと、は言った。
「んなっ!?」
「だって、2人共分かってくれないんだもの……。大学だ何だって、煩いし…、だから、大学蹴って一人で来ました。」
涼しい顔で、あっさりと恐ろしい事を言う。
こんな、たった一軒のカレー屋の為に大学に行かずにジャワイ島へ行くなんて事、本気で許す親はいないだろう。
「お前なぁ……っ!!今すぐに日本へ帰れ!両親心配してるだろ……っ!!」
「無理です。」
これまたあっさりと、ヒノケンの必死の抗議をかわした。
「今度は何なんだ……っ!?」
「お金がありません。今まで貯めていたお金全部使ってここまで来たんですよ。帰りの飛行機代なんてありませんよ。」
その台詞に、ヒノケンは床に手を突いた。
ここまで完璧に言われてしまっては、言い返す言葉も無い。
「あんた…、そんな事して来たのは良いけど、ここで働けなかったらどうするつもりなのよ?」
そんなヒノケンを見かねたまどいがに聞いた。
「それは…、考えてませんでしたけど……。雇ってくれるまでここに居続けるつもりですし……。」
はその問いに、少し顔を俯かせて言った。
「お願いします!お皿洗いでも、掃除でも、配達でも、何でもしますっ!!絶対に皆さんに迷惑は掛けませんから……っ!!」
その場の皆が何も言葉を発しない中、は必死に食いついた。
「お金が無いと言っていたが…、これから何処に住むつもりなのだ……?」
マハジャラマが聞く。
「……ぇっと…、それは…その…、住み込み…とか……。」
「お金が無いんじゃ、食べ物も何も買えねぇよなぁ?」
ヒノケンが言う。
「ぅ゛…っ、それは…、そのぅ……。」
最初の勢いは何処へやら、は完全に俯き、服の裾を握っている。
「…………っ。」
現実問題を突き付けられ、言葉が出ない
段々と肩が震えてくる。
「ふぅ…、迷惑を掛けないも何も、すでに開店時間は過ぎてますし、住み込みにするにしても、お金が無いんじゃどうしようも無いでしょう。」
そう言うと、マハジャラマは他の3人に目を向ける。
3人共、その視線に気付くとコクリ、と頷いた。
「しょうがない、迷惑ついでに雇って上げますよ。」
そう言って、マハジャラマは俯いているの肩に軽く手を置いた。
「え……っ!?」
その言葉を聴いた瞬間、はぱっと顔を上げる。
「その代わり、使えなかったら即クビにするわよ!」
まどいがの顔を覗き込みながら言う。
「仕事の内容、全部覚えてもらうからな!」
ヒノケンは、しょうがない、と言う様な表情で言う。
「パーフェクトにこなしてもらいますヨ!」
エレキ伯爵も、軽くウィンクをしながら言った。
「ぁ…っ、有難うございます……っ!!」
は、あまりの嬉しさに、目の前にいたマハジャラマに抱き付いた。










その日から、の「MaHa弐番」での生活が始まった。
実際に、の働きを見ると、想像以上に良かった。
皿洗いや掃除も綺麗にこなすし、配達に行く時の地図の覚えも早かった。
そして、何よりもカレーに対する知識が豊富だった。



「いやはや…、最初はすぐに根を上げて日本に帰ると思ってましたが……。」
お昼時が過ぎて、少しお客が絶えた時間帯。
マハジャラマ達は、少しの休憩に入っていた。
「それくらいの気持ちだったら、ジャワイ島まで来ませんよ!」
は、水を飲みながら言った。
「でもホント、凄い働きっぷりよね〜〜〜。」
まどいも、隣の椅子に座り、呟く。
「売り上げも、が来る前より少し増えたしな。」
「カワイイ看板娘が出来たと、お客の人も言ってたネ!」
ヒノケンと、エレキ伯爵が笑いながら言う。
「ちょっと!看板娘は私でしょっ!?」
そんな言葉に、まどいが吼えた。
「あはは、お前の歳じゃ、「娘」は無理だな!」
「きぃーーーっ!!」
そんな、他愛も無い話をしていると……



RuRuRu……。



店の電話が鳴った。
「あ、私出ます!」
が席を立とうとした時。
「良い、私が出よう。」
よりも電話の近くにいたマハジャラマが席を立った。
「ぁ、すみません……。」
そう言って、は席に着く。
配達の注文だろうか、そう思い、準備するために最後の水を飲み干した。
マハジャラマが電話の元に行って、数分が経った時…、マハジャラマが少し顔を出し、を呼んだ。
…、ご両親からだ……。」
その言葉に、と、ヒノケン達は言葉を失った。










「……っ何……?」
恐る恐る、受話器を手に取る。
震えた声で、一言そう言った。
マハジャラマ達は心配で、そんなを後ろから見守る。
!一体何を考えてるのっ!?そんなトコにいないで、早く帰ってきなさいっ!!』
受話器から、怒り狂ったような母親の声が聞こえる。
「…………っ!!」
今まで聞いた事の無いような母親の声に、は体が固まる。
自身、心の何処かでやはり、親の反対を振り切りここまで来た事への罪悪感があったせいか、言葉が出て来ない。
『ほとぼりが冷めたら帰ってくるかと思ってたらっ、本気でジャワイ島まで行ってるなんて!あなた、大学に行って就職するって言ってたじゃない!まだ若いのに、そんなとこで人生無駄にしちゃ駄目でしょっ!!私もお父さんも、皆心配してるんだからっ、早く帰って来なさい!お金だったら、すぐに送って上げるから……っ!!』
心配と怒りが入り混じった声で、捲くし立てる。
そんな母の言葉を聞いていると、自然と言葉が出た。
「……っ、ここは…、私にとって大好きな場所なのっ……。私、大学とか…就職とかするよりも…、もっとやりたい事見つけたの……っ。だから……っ!!」
『そんな事言ってても、後で後悔する時が来るのよ……っ。』
の必死の言葉も、今の母には受け入れてもらえない。
「……後悔なんて…、しないっ。絶対に…しないから……!」
自分で言いつつも、母の声を聞くと段々と自信が無くなって来る。
気持ちが、揺らぐ。
は、堪えきれずに頬に涙を伝わせた。
「……っすみません、お母さん!俺が言う事ではありませんが、娘さんは良く働いてくれますし、もうこの店のお客さん達とも仲良くやってるんです!俺達も、がいてくれて助かってますし、本当に、楽しそうにやってるんです……っ!!」
の、悲しそうな、苦しそうな姿を見ていられず、気が付けば、ヒノケンはから受話器を奪っていた。
「…………っ!?」
「そうよ!は頑張ってるわ!私達だって、最初はすぐに帰ると思ってたんだもの!でも、は帰らなかったっ。の気持ちは本当よっ!!私が保証する!ここで働いてる時のは、本当に輝いてるわっ!!」
今度は、まどいがヒノケンから受話器を奪い取った。
すでにもう、そっちのけで受話器の奪い合いをしている。
皆、必死での働きぶり、気持ちの本当さを伝えようとしてくれている。
そんな皆の姿を見て、は心から、嬉しい気持ちが溢れて来るのを感じた。
「……皆…、有難う……。」
は一言小さくそう呟くと、未だに受話器の奪い合いをしている皆の後ろから腕を伸ばし、受話器を取った。
「……お母さん…、勝手に飛び出して行って、ごめんね…、本当に、ごめんね……。でも…、私、今幸せなの……。ここ…、「NaHa弐番」で、マハジャラマさんやヒノケンさん、まどいさんにエレキさん達と一緒に働けて、すっごく幸せなの。これは…、自分に嘘を吐けないほどに本当の気持ちなの。お母さん達も大好きだし、日本も懐かしくなる時もあるけど…、私は今、ここで…この店で、皆と一緒に働ける事が幸せなの……。」
今まで固まって、怖くて言葉が紡げなかったとは違い、落ち着いて、一言ひとことはっきりと喋った。
その言葉には、静かな…だが、確かな決意と信念が含まれていた。
『…………。あなた…、本当にそこで幸せなのね?』
静かに、母が聞く。
「うん……。」
は頷いた。
『さっきの人達も、すごく真剣にあなたの事を話してくれた……。「あぁ、本当にこの子は愛されてるんだな」って思ったわ……。フフ…、は小さい頃からしっかりしてたから…、すぐに私達の手から離れて行くのね……。』
少し、悲しさを含んだ声で穏やかに喋る。
そんな母の声を聞きながら、は今まで自分がどれだけ愛されていたかを改めて知った。
『……あなたの人生だもの、あなたの好きな様に生きなきゃ駄目よね……。私達が…、口を出して良いものではなかったわ……。やっぱり、少し心配もあるし…悲しいけど…、あなたが決めた事なら…それで本当に幸せなのなら…、私達はもう口出ししないわ。』
その言葉を聞いた瞬間、再び涙が流れた。
「ありがとう…っ、ありがとう、お母さん……っ!!」
『でもね…、たまには電話くらいして、あなたが元気な事を知らせてちょうだいね。それくらいは、良いでしょう……?』
「うんっ、分かった……っ!!」
は、ニッコリと笑って言った。










カチャリッ……。


暫くして、受話器を置く音が店内に響いた。
何とか母もここで働く事に納得してくれ、今後の生活費等を少し送ってくれる事になった。
「ふぅ……。」
は、電話の前で一息吐く。
……?」
そんなに、後ろから声が掛かった。
「ぁ…、皆さん、さっきは本当に有難うございました……っ!!」
その声に、クルリ、と後ろを振り向き、お辞儀をする。
「ぇっ、いや…、その……っ!!」
「ね、ねぇ…っ、別に……っ!!」
のお礼に、照れながら何と言って良いのか分からないヒノケン達。
さっきは体が勝手に動いたが、今思えば自分達でも恥ずかしくてしょうがない行動だ。
「皆さんのお陰で母も納得してくれましたっ。本当に、有難うございます!」
ニコリ、と微笑みながらは言う。
「……じゃあ、あんた、これからもここで……。」
恐る恐る、まどいが聞く。
「ハイ!ずっと、ここで働きますよっ!!」
「「「「…………っ!!」」」」
そのの言葉に、皆は自然と笑顔になる。
は、そんなマハジャラマ達を見ながら、今この時の幸せを噛み締めた。
「……私…、今、本当に幸せです……っ。本当に…、本当に有難う……っ!!」
今、ここにいる皆に、心から感謝を伝えたい。
は自然と浮かんでくる涙を隠しながら、そう言った。
「もぅ!なに言ってんのよっ、あんたはもう私達の家族みたいなもんなんだから、そんな事気にしなくて良いのよっ!!」
「イエスッ、ミー達はもうファミリーね!」
「そうだぜ、これからもずっと一緒なんだからよ。」
「うむ。何も気を使う事は無い。」
皆、の頭をクシャクシャと撫でたり、肩を叩いたり…、とても暖かい雰囲気がその場を包んだ。
「家族…かぁ……。」
そんな皆の優しさを受けながら、は呟いた。



ーーーうん…、ここは、私にとっての第二の家なのかもしれない……。ーーー










カララン……ッ。



そんな事をしていると、店にベルの音が響いた。
「あっ、お客さん!」
その音に一番に気付いたが、声を上げる。
どうやら、またお客さんの来る時間帯に入ったらしい。
「む、準備をせねば……。」
「ぁ、私お水出しますね!」
「メニュー表何処やったっけか……?」
各々、自分の仕事に戻る。
はトレーに水を乗せて、お客さんに出しながら、やっぱりこの仕事は楽しいと実感していた。



ううん、「この仕事」が楽しいんじゃないや。

「ここ」で働くから、楽しいんだ。



お客さんの注文を、キッチンにいるマハジャラマに伝えながら、はそう思った。















〜〜〜後書きと言う名の懺悔〜〜〜

ハム猫・「全・員・別・人っ!!☆ミ」

ヒノケン・「別人も何も……。そう言う次元で表現出来ないほどだな。」

マハ=ジャラマ・「……その前に…、これは一体何なのだ……?」

ハム猫・「ドリー無という名を借りたヒューマンドラマです。」

まどい・「あんたそれ、自分で言ってて悲しくない?」

ハム猫・「いや、何かオイラが書くとこうなっちゃうんですよね。姉に話した時爆笑されますた。」

エレキ・「ミーの喋り方も変なようナ……。」

ハム猫・「ぶっちゃけあなたが一番分からなかったんですよ!だから台詞が少ないんです。」

マハ=ジャラマ・「ちなみに…、私の名は「マハ=ジャラマ」が正しいのだが……。」

ハム猫・「だから、後書きでは直ってるでしょ。いっつも「マハジャラマ」って繋げて呼んでたから、マハさんって呼ぶのが嫌だったの。」

ヒノケン・「しっかし…、何かこの上なく恥ずかしい話だよな、ホントに。」

ハム猫・「まぁ、今回は「ラブ」じゃなくて、「家族愛」みたいな感じにしたかったので。ほのぼのみたいな。」

まどい・「その前に、これって需要度0%に限りなく近いわよねーーー。」

ハム猫・「自己満足で良いんです……。(哀)でも、もしもこれを読んで少しでも感想を持ってくれましたら是非、掲示板へっ!!同士求ム!です……っ!!」



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