私の部屋には忍者が住んでいます。 ーーー忍者とカレーーーー 何でこんな事になったんだろう。 私はいつも通りの生活をしていただけなのに。 賞味期限が切れかけて安くなったパンを次の日の朝食に買い。 夕方過ぎて安くなった売れ残りの総菜を買って。 帰りに通った公園で痩せた子猫にすり寄られて買ったパンをあげて。 ついつい牛乳もあげて。 買い物袋が少し軽くなった所で家に帰ろうとしただけなのに。 目の前に現れたのは、少し出で立ちの変わった男の人。 いきなり私を「主」と呼んだ。 余りにも真剣な表情で言ってくるから、お腹空きすぎておかしくなっちゃったのかな、って思って。 恐る恐る「いりますか?」って夕飯に買ったおかずを差し出したのが駄目だったみたい。 流れ流れて今に至ります。
「はぁ…、さてと……。」
時は夕刻。 スーパーのチラシと睨めっこしていた私は立ち上がった。 「外出するのか?」
その瞬間に、何処からかミヤビさんが現れる。
「うん。買い物に行こうかと。」 そう言うと、ミヤビさんがチラシにツと視線を止めた。 「主…、そのような時間帯を狙わずとも金なら……。」 そして、溜め息を吐きながら懐に手を入れる。 「駄目っ!!止して!私、また気失うから……っ!!」 それを見た私は、彼が手を抜く前に身構えた。 「……主……。」 そんな私を見て、ミヤビさんは少し悲しそうに手に握られた物を戻した。 何やらミヤビさんは、自分の主さんを見つけるまでお金をコツコツと貯めていたようで。 主を見つけた暁には、そのお金を使ってもらおう、と決めていたようなんだけど……。 私は根っからの貧乏人根性が染み付いていて。 初めて会った時にうっかり札束を渡されて気を失ったのだ。 あんな量のお札なんて持ったの初めてで。 私には恐れ多くて…思い出しただけで気が遠くなる。
「それに、ミヤビさんが貯めたんだからミヤビさんが使わなきゃ駄目だよ!」
腰に手を当ててそう言う。 会った時から何度もそう言っているが、それを言うとミヤビさんは悲しそうな顔をする。 「しかし主…、もう少し、贅沢をしても良いのでは……。」 私が言うと、ミヤビさんは困ったような表情をする。 「私は今で十分生活出来てるし。今後のために、自分でお金を溜めておきたいの。別に、無理をしてたりするわけじゃないし。ね?」 どう言ったらこの人は納得してくれるのか……。 そう思いながらも、きっといつまでも平行線のままなんだろうな、と思う。 ミヤビさんはミヤビさんで意志の強い人。 今この時はかわせても、きっと考えは変わってない。 「……分かった……。しかし、主の身が心配だ。付いて行こう。」 「……別に良いのに……。」 ちょっと近くのスーパーに買い物に行くだけなのに……。 そう思いながらも、はっきりと言えない自分が悔しい。 ミヤビさんが付いてくると、反対に目立つんだけどな……。 なんて言ったら、大変な事になりそうだから言わない。 いや、荷物持ってくれたりするから助かるんだけど。 「じゃあ、一緒に行きましょう。」
「……ぁ、ここ……。」
買い物の帰り道。 2人で買い物袋を一つずつ持って一緒に歩いていて、フと立ち止まる。 そこには一件のカレー屋さん。 良い匂いが店の外まで漏れている。 「美味しいって人気のお店なんだよね……。まだ行った事無いんだけど。」 そう言いながら、がそっとお腹を押さえるのを、ミヤビは見逃さなかった。 「主、寄って行くか?」 「え?」 唐突なその言葉に、素っ頓狂な声を上げながらはミヤビを見上げた。 「ここのカレーは旨いぞ。」 そう言って、自動ドアへと向かって行く。 「ぇっ、ちょ、ミヤビさんここ来た事あるの?って言うか、まだ私入るとも言ってな……っ!?」 スタスタと進んでいくミヤビを捕まえようと追いかけて行くうちに、目の前の自動ドアは開かれた。 「いらっしゃいませーーー!」
それと同時に、中からは元気の良い声が響いた。
お客さんで一杯になった店内。 そのカウンターの店員とばっちり目が合う。 「……ぁう……。」 こうなってしまっては、店内に入らざるを得なかった……。
「……どうしてくれるんですか……っ。」
席に座って、水の入ったコップを持ち、声を抑えてミヤビに文句を言う。 「もう今日の晩御飯のおかず買っちゃったのに……!無駄になっちゃう上に、ここって専門店だからそれなりに…、その…、お高いんですよ……っ!!」 横目でメニューを見ながら、訴える。 すでに、入ってすぐにミヤビが注文をしてしまっているのだ。 「案ずる事は無い。ここは私が払う。」 しかし、そんなの言葉も聞かず、ミヤビは水を一口飲むとそう言った。 「……っ、だから、それは良いです!自分の分くらいは、は、払いますよ……っ!!」 こっそりと、財布の心配をしながらも。 ここで流されてはいけないと、我を張る。 「……はぁ…、主……。そろそろ良いではないか……。」 そんなの態度に、ミヤビは大きく溜息を吐いた。 「……っ……?」 その反応に、少し身を引かせる。 「別に、千円にも満たない金額ではないか。」 「そんな事言っちゃ駄目です!一円を笑う者は一円に泣くんですよ……っ!!」 ミヤビの言葉に、咄嗟に口を突いて出る。 今現在の会話に噛み合っているかは置いといて。 「頼んじゃった物は仕方がありません…っ、美味しく食べていきますけど…っ、もう、こんな事は無しですからね!あと、お代は私が払いますっ!!」 「主……っ!!」 頑として引かないに、頭を悩ませるミヤビ。 その困ったような、悲しそうな表情を見るのが、にとっても辛いものではあったが、ここで折れるわけにもいかなかった。 そんな会話をしている内に……。 「はい、ロコモカレー2人前お待ち……っ!!」
机の上にドン、と、美味しそうなカレーが運ばれて来た。
「ぅわ〜〜〜!」 それを見た瞬間、目を輝かす。 店員が去ると、ミヤビは早速食べ始めていた。 「こんなの久しぶりだな〜〜っ、美味しそう……っ!!」 はと言うと、スプーンを手に、暫くカレーを眺めていた。 「…………?」 と、ミヤビが手を伸ばすのが視界に入った。 机の上に置いてあったらっきょうの入れ物を取ったのだった。 「……好きなんですか、らっきょう……?」 何気ない疑問を口にすれば。 「……あぁ、カレーに良く合うからな。」 そう言って、ただ黙々と食べ続けるのみ。 「…………。」 その、美味しそう…な感情は表に表してはいないが、黙々と食べ続けるミヤビを見て、恐る恐るらっきょうに手を伸ばす。 今まで食べた事も無く、酸っぱそうと言う悪印象のみであったが、ミヤビが食べているのを見て少し興味が出た。 3つほど、皿に移す。 疑心暗鬼に思いながらも、そろそろと口に入れた。 「…………!」 食べてみると、今までのイメージとは少し違い、酸っぱいだけでは無く、カレーの辛さと相まってとても美味しかった。 「らっきょうって美味しいんですね……っ!!」 一人試して、一人感動したは、咄嗟にミヤビに声をかけた。 「…………っ!?ぁ、あぁ…、主も好きなのか……?」 少し眉間に皺を寄せ、唐突なその言葉を適当に流すミヤビ。 はと言うと、それで勢いがついたのか、らっきょうを足しながらも幸せそうにカレーを食べ続けていた。 「…………。」 そんなを見て、軽く苦笑するミヤビ。 こうしていれば普通の少女なのに、頑として意地を張る時は、普通の大人でも敵わないほどに芯が強い。 どうにか上手く聞き入れてはくれまいか…と思いながらも、カレーに釘付けになっているの隙を見逃さなかった。
「ふぅ、噂通りのとっても美味しいカレーですね……っ!!」
残り少しになった所で、一口水を飲んだ。 そして、フと気付く。 「あれ……?」 最初はテーブルの上に合った伝票が無くなっている。 確かに、机の左端にあったのに……。 「…………っ。」 そして、ハッと気付き、同じく終わりかけなミヤビをツと睨む。 「……ミヤビさん…っ、取ったでしょう……っ!?」 「……何の事だ……?」 この場面でシラを切り通せる訳が無いが、ミヤビは落ち着いて答えた。 「伝票ですよ、伝票!ここにあったでしょうっ!?ミヤビさんが取ったんですね……っ!?」 「さぁな……。」 躍起になるに対し、クツクツと笑うミヤビ。 伝票を取られては、会計を払う事が出来ない。 どうにかして奪い返さなければ、とは思うものの、相手は忍者。 そう簡単に返してくれそうも無い。 「〜〜〜〜っ!!」 頬を膨らまし、何か良い案は無いかと考えていると……。 「あ。」 一つ、思いついた。 奪い返すまでは行かないかもしれないが、ミヤビに一泡吹かせる案を。 「ミヤビさん、ミヤビさん。」 ちょいちょい、と手で呼ぶ。 「…………?」 その上機嫌な声に、少し不気味に思いながらも、カレーから視線を上げるミヤビ。 「らっきょう、もう無いですね?」 ミヤビの皿を指差しながら、満面の笑顔で聞いてくる。 確かに、皿にはもう残っていなかった。 だから、らっきょうの入れ物へと視線を移した。 「で、これが最後のらっきょうです。」 ニッコリと笑ったの手には、匙に乗った最後のらっきょう。 「…………?」 何が言いたいのか分からないミヤビは、ただただの次の言葉を待つだけだった。 「はい、あーーーん。」 「ぶ……っ!!」 しかし、次に発された言葉は、想像もしなかった言葉。 ニコニコと上機嫌に、は匙を差し出してくる。 「ぁ、ああ、ぁ、主……っ!?」 その行動に、ミヤビは背もたれぎりぎりまで身を引く。 はっきり言って、自分の主が何を考えているのか分からない。 「さぁ、ミヤビさん、最後のらっきょうをどうぞ。この匙から食べてくれたら、ここのお代はミヤビさんにお任せします。それが嫌なら、伝票返して下さい。」 してやったり、と言う言葉が顔に書いているような笑顔で迫られて、どう出たものかと悩むミヤビ。 こんなに強気に出られたのは初めてだった。 「……く……っ!!」 珍しくも顔を赤らめながら後退しているミヤビを見て、は楽しくて仕方が無かった。 こんなに効くとは思っていなかったからだ。 この調子なら、伝票を取り返せるかもしれない。 「さぁ、早く伝票返して下さい。」 ずずいっと、更に近付きながら言う。 すでに、ミヤビには逃げ場は無かった。 「…………。……本当だな……?」 「は?」 そのぎりぎりの状態で、発した言葉。 前後が無い言葉に、は疑問符を浮かべる。 「さっき主が言った言葉は、本当だな……?」 「ぇ……。」 があっけに取られて、返事をするより早く。 ぱくり。 と。
「……ぇえ……っ!?」
あっと言う間に、匙の上のらっきょうは無くなり。 「これで、ここの代金は払わせてもらえる訳だな。」 「なっ、み、ミヤビさん……っ!?」 さっきの態度はどこへやら、今度はミヤビが余裕の笑みで。 まさか、本当に、自分の持つ匙から食べるなんて思いもよらなかったから。 言葉も出ずに、ただただ顔が熱くなるばかり。 「さぁ、主。真っ赤になる前にカレーを食べねば、冷めるぞ?」 「〜〜〜〜……っ!!」 開き直ったミヤビに敵うはずも無く。 嫌な程に、大人と子供の差を見せ付けられる。 「……ミヤビさんの馬鹿ぁーーーっ!!」 そう言いつつも、残りのカレーを平らげ。 この時、やっと、ミヤビのお金が使われたと言う。
「たまには奢られるのも良いものではないか?」
カレー屋を出て。 未だに膨れっ面なに苦笑しながら声をかける。 「これから毎日食べさせて差し上げましょうか、ミヤビさん?」 その言葉にも、そっぽを向いて嫌味を言う。 「……それも良いかもな……。」 しかし、その言葉を受けたミヤビは、ツと黙るとそう言った。 咄嗟にミヤビを見上げただったが、そんなを気にも留めず、先に歩いていくミヤビ。 「嘘!嘘です!ミヤビさんってば……っ!!」 は、必死に叫びながらも、先々と歩いて行くミヤビを必死で追いかけた。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「ぇ、何これ?」 ミヤビ・「……一応、文章…だろうな……。」 ハム猫・「…………。」 ミヤビ・「もっと分解すると、一応日本語のようだが。」 ハム猫・「もう…もう良いですよ、ミヤビさん……。強制終了させた物ですし……。」 ミヤビ・「言い訳は良くないぞ。」 ハム猫・「……はい……。すいません……。」 ミヤビ・「しかし…、私のキャラが違いすぎやしないか……?」 ハム猫・「しょうがないですよ、分かりませんもん。でも、アニメでは結構お茶目さんだったので何でもありです!その前に、一人称調べるのにどれだけ苦労したか……っ!!」 ミヤビ・「それくらい覚えておらんのか……っ!?」 ハム猫・「覚えておらんわ……っ!!まぁ、簡潔に言うと、ただミヤビさんに「あーーーん」がしたかっただけです。」 ミヤビ・「…………。まぁ、これ以上変な事を言われるよりはマシか……。」 ハム猫・「そうです、諦めが肝心です。と、言う訳で、諦めついでに締めます!このような話ですが、ここまで読んで下さって有難う御座いました!またミヤビさん夢を書く機会があれば是非♪」 |