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「今日は駄目ですからね、ヴォーカル様。」
アリアの部屋の前で、ドアノブに手を掛けているヴォーカルに向かって、オル・ゴールは言った。 「……ッチ……。お前、何様のつもりだぁ?俺がアリアの部屋に入って何が悪いってんだ!」 オル・ゴールの声に、少し驚きながらも反論する。 「何がも何も、今はアリアさんは風邪を引いてるんですよ。ヴォーカル様が入ったら、寝てるのを良い事に(絶対)襲うでしょう?」 水の入った洗面器とタオルを持ったオル・ゴールは、淡々とした声で言った。 「……っぅ、そんな事、お前に関係ねぇーだろ……っ!!」 いかにも図星です、と言うように言葉に詰まる。 「そんな事言ってると…、アリアさんにこの間の事バラしますよ……?」 「…………っ!?」 オル・ゴールも、簡単には引いてくれないだろうと思い、最後の手段に出た。 「きっと嫌われますよね、ヴォーカル様。」 にこやかに話す。 「……っ分かったよ……!入らなかったら良いんだろ……っ!?その代わり、お前、アリアに手ぇ出したらただじゃおかねぇぞ……っ!!」 数秒間の葛藤の末、ヴォーカルは諦める事にしたらしい。 ムス、っとした顔で向こうの方に歩いて行った。 「……ふぅ……。」 そんなヴォーカルの後姿を見ながら、溜息を吐く。 最近は扱い方が分かってきたが、本当に苦労する人だ。 彼なりに心配しての行動だろうが……。 少しそう思ってから、ドアに手を掛けアリアの部屋に入った。 ーーー温もりーーー
アリアは、部屋で静かに寝ていた。
彼女の熱に気付いたのは昨日。 何となしにいつもと雰囲気の違う彼女がおかしいと思い、気を付けて見ると顔が少し赤い。 案の定、熱を測ってみれば38度。 彼女自身に自覚が無かったようだが、どうやら数日前からおかしかったらしい。 それから、急いでベッドに寝かせ、少しでも良くなるように栄養のある物を作ったりした。 今では少し落ち着いて、風邪薬も利いて眠っているところだ。 「本当に…、良くなって良かった……。」 アリアのベッドの隣にある机に、洗面器を置きながら呟く。 考えれば当たり前な事だった。 この城は、灯りと言ったら蝋燭くらいで、特別に部屋を暖めている訳でもない。 唯でさえ、城内は身に凍みる寒さだろう。 僕達魔族にはこれくらいの寒さは気にもならないが……。 でも、アリアさんは普通の人間だ。 冬も近付いてきてだんだん寒くなってきている最近では、気を付けなければ簡単に風邪くらい引いてしまうだろう。 本当に、酷くなる前に気が付いて良かった……。 すやすやと寝息正しく眠っているアリアの前髪に少し触れると、微笑んだ。 「あなたは…、僕の気持ちに気付いていますか……?」 そうして、少し悲しそうに微笑んだ。
そう、僕はアリアさんを愛している。
初めは…、ヴォーカル様がこの城に連れて来た頃は、そうは思っていなかった。 ただ、変わった人だと、不思議な人だと思っていた。 しかし、一緒にいる内に、彼女の不思議な魅力に惹かれていった。 ヴォーカル様が惚れたのも分かるな、と思った。 彼女には…、魔族をも癒す力があるのかもしれない。 傍にいると、幸せな気分になれた。 魔族がこんな事を言うのもおかしいかもしれませんけどね……。 彼女の微笑みに心癒され、彼女の呼び声に心くすぐられた……。 そんな日々を送っている内に、彼女が欲しいと思った。 もちろんそれは叶わない事だけれど。 彼女は僕にも好意を向けてくれているとは思うが、それはきっとヴォーカル様への物とは違う。 それに、僕にはこの想いを告げる勇気が無い。 言ってしまったら、きっともう彼女の前にはいられないから。 それならば、今のまま、この想いを胸に秘め、傍にいるほうがましだ。 そう…、僕は臆病なんですよ……。
「……んぅ……?」
そんな事を考えつつ、額のタオルを変えようとするとアリアさんが目を覚ました。 「ぁ…、すみません、起こしちゃいましたか……?」 眠そうに目を擦る彼女に謝る。 「ん~ん、良いよ。大分寝たから楽になったし。……ゴメンネ、ずっと看ててもらって……。」 まだ少しポーッ、とした声で言った。 「いえ、今はゆっくり休んで早く良くなって下さいね。」 そんな彼女にニッコリと微笑んだ。 「ありがと。本当に、オル・ゴールさんには迷惑掛けっぱなしだね……。」 そう言って、アリアは布団をかぶり直した。 「そんな事は無いですよ!僕はこうやって…、アリアさんと一緒にいられるのが好きですし……っ。」 自分で言いながら、何だか照れ臭くなって来て、少し俯く。 「私もね、オル・ゴールさんといるの大好きだよーーー。」 僕の気持ちなんか知らずに、アリアさんは幸せそうにフフ、と笑いそう言った。 「…………っ!?……本当…、ですか……っ!?」 幸せそうな彼女の声が嬉しくて…、唯の自分の思い込みなのだろうけれど、幸せな気分になってしまう。 「うん!何かねぇ…、オル・ゴールさんと一緒にいるとね、暖かい気持ちになれるんだーーー……。」 「暖かい…気持ち……?」 布団から腕を出して、顔の上で手で何かの形を現そうとする。 「安心できる…って言うのかな……?ふんわり、優しい気持ちになれるの。」 アリアの手は、何か形を作る事は無く、ゆらゆらと不思議な動きを続けていた。 「あなたは…凄い人ですね……。」 自然と、口から漏れ出た。 「……何で?」 アリアは不思議そうな目でオル・ゴールを見る。 「僕は…そんな気を許せるような奴じゃないんですよ……。」 オル・ゴールは、アリアのその目を直視出来ずに、目線を逸らす。
そう…、僕は魔族。
あなたが思っているほど良い人でも何でも無い。 心の中は…、あなたに見せられないほどに腐っているんです……。
「でも、私はオル・ゴールさんの事好きだよ。」
そんな事を考えていると、アリアさんのはっきりとした声がその考えを打ち破った。 「え……?」 「だから、私はそれでも好きだって言ってるの。」 真っ直ぐな瞳に、打ち抜かれる。 「ぁ…、ハハ、何だか…あなたには敵いませんね……っ。」 不思議と体中から力が抜けて。 真っ直ぐ見つめて来る瞳が、今まで考えていた闇を払った。 そこに広がるのは暖かな光。 そうか…、僕があなたに惹かれたのは、これだったんですね……。 闇が光に魅せられる。 そう言う事だったんだ。 あなたは光。 渦巻く闇の中でたった一つ、強く輝く光。 いつかは、闇をも優しく包み込んでしまう。 そういう人なんですね、あなたは……。
「あ……っ!!」
オル・ゴールがそう思っていると、アリアは急に声を上げた。 「…………っ!?どうしたんですか……っ!?」 急な声に驚いて、少しアリアに駆け寄る。 「分かった!」 アリアはポン、と手を打った。 「…………?何が分かったんですか……?」 オル・ゴールは不思議そうな顔をする。 「あのね、オル・ゴールさんってお母さんなんだ!」 「お母さんっ!?」 アリアの素っ頓狂な答えに、今度はオル・ゴールが声を上げた。 「うん!何だか暖かくてね、優しくて…お母さんみたいだなって!思ったの……っ!!」 ニコニコと、満面の笑顔を向けてくるアリアをポカン、と見つめながら……。 「……お母さん…ですか……。」 少し複雑そうな表情を、オル・ゴールはした。 それじゃあ、まだまだヴォーカル様には勝てませんね……。 心の中で、小さく、そう呟いて。 まぁ、もう少しは…この思いも胸にしまっておきましょうか……。 そう思って、オル・ゴールは穏やかに微笑んだ。 ~~~後書き~~~ ハム猫・「は~ぃ、とうとう書いちゃったよオル・ゴールドリ。」 オル・ゴール・「僕は…お母さん、なんですカ……?」 ハム猫・「まぁ、そう落ち込むねい!確かに君は「男の人」と見るより「優しい人」と見られそうですね。」 オル・ゴール・「って言うか、本体仮面でスけど。」 ハム猫・「聞こえない聞こえない聞こえないーーーっ!!」 オル・ゴール・「……まぁ、今回は許しましょうか……。」 ハム猫・「ずっと許して下さい。だってだって、オル・ゴール(体君)好きなんだもんーーー。まぁ、性格とかは仮面本体のなんだろうけどさ。プラス・マイナス0って事で。」 オル・ゴール・「何なんですか、それ。そう言えば、冒頭の会話での「この間の事」って何なんでス?」 ハム猫・「さぁ?」 オル・ゴール・「……殴りまスよ?」 ヴォーカル・「おぅ、殴れ。」 ハム猫・「ヒイィ!何で出て来てるんですか……っ!?」 ヴォーカル・「何でって、俺が出て来ないと始まらないだろ。」 ハム猫・「何ですか、その台詞。」 ヴォーカル・「殺されてぇのか?」 ハム猫・「冗談でっすっ!!……まぁ、多分風呂覗いたとかそんなんじゃないんですか……?」 ヴォーカル・「そんだけかよっ!?」 ハム猫・「そんだけって……。」 オル・ゴール・「それ、今考えタでしょう?」 ハム猫・「だって、こう言うのは読者様に想像を任せるほうが・サ☆」 オル・ゴール・「何爽やかに語ってるんですカ。」 ハム猫・「まぁ、こんな感じでヴォーカル・ヒロイン・オル・ゴール共に中々進展しない感じです。」 ヴォーカル・「まどろっこしいな……。いっそ……。」 ハム猫・「君が何か言い出すと大変な事になりそうなので猿轡☆では、こんなマイナードリ読んで下さって有難うございましたっ!!」 オル・ゴール・「皆さんも風邪には気を付けて下さいネ!」 |