「えーーっと、保健委員は…か。、本条について行ってやれ。」
そう言われて、私は男子生徒について教室を出た。










ーーー屋上ーーー










「はぁ〜〜〜、疲れた……。」
私は、とぼとぼと保健室から教室に戻っていた。
行ってみると、丁度保健の先生がいない時で、体温計やらベッドの準備やら何やらを1人でやる羽目になってしまった……。
まぁ、保健委員なのだから当たり前なのだが……。

自分のクラスまで後わずか、と言う所で、見知った姿が目に入った。
その人物の名前は御柳芭唐。
クラスメイトだ。
と、言っても授業をサボる事が多いので、教室で会った事はあまりないが……。

「あいつ…、さっきの時間もいなかったのに……。」
またサボる気だ……。
そう思うと、腹が立ってきた。
見ていると、階段を上って行った。
「屋上に行くつもりね……っ!!」
その時、私は何故か意味も無い正義感に駆られて、御柳君をサボらせまいと、彼の後を追った。




今思えば、これは彼の罠だったんではないだろうかーーーーー?




階段を上っていって、屋上に着いた。
バタンッ!!、と大きな音を立てて扉を開けると、目的の人物ーー御柳芭唐ーーはすぐに視界に入って来た。
屋上で、空を見上げながら寝転がっていた。
「御柳君……っ!!授業サボらないで、真面目に出てよ……っ!!」
私は、思いきり大きな声で叫んだ。
しかし、彼からの返答は無かった。
寝ているのだろうか……?、とも思ったが、ついさっき来てそんなにすぐに寝れる訳が無い。
それに、寝ていたとしても、今の声で起きたはずである。
と、なると…シカトですかい……?
「…………っ!?」
かなり腹を立てた私は、ツカツカと御柳君に近寄った。
今度は、耳元で叫んでやろうと思ったのだ。
御柳君の頭の近くまで来て、しゃがみ込んで大声を張り上げようとした時ーーーーー



「捕まえた。」



急に起き上がった御柳君に、手首を掴まれた。
「なっ…、起きてたのなら返事位しなさいよ……っ!!」
私は驚いて、御柳君の手を振りほどこうとする。
しかし、さすがに男の子。
力ではとうてい敵いそうに無かった。
「……離してよ……。」
色々と試したが、無駄だった事に少し恥ずかしさを覚えて、小声で言う。
「ハハ、おもしれぇ。」
そう言って、御柳君は私の手首を離した。
「で、何だったっけ?」
ケロリと、御柳君は聞いて来る。
「だから……!ちゃんと授業に出てって言ってるのっ!!」
「何で?」
私がまた声を張り上げると、間髪入れずに、御柳君が言った。
「何で…って……っ。」
「だって、俺がどうしようと勝手だろ?俺がサボったからってお前の成績悪くなるわけじゃねぇじゃん。」
「そうだけど…、嫌なの!大体、授業出てなかったらテストとかやばいでしょっ!?」
平然と言ってのける御柳君に、私は戸惑いながらも反論した。
「俺頭良いから困んねぇけど。」
「…………っ!?」
そんな言葉も、さらりと彼はかわしてしまった。
「大体さぁ、何でお前ってそんなに絡んでくるわけ?自分にゃ関係無い事だったら目ぇつぶっとけばいいじゃん。」
御柳君は、少しうっとうしそうに言った。
「そんなの知らないわよ。ただ、あんたみたいなの見てるとむかついてくるのよ!」
御柳君の隣にどっかりと座って、戦闘体制で食ってかかる。
「…………。」
そんな私の言葉を、御柳君は目をつぶってサラリ、と無視した。
「…………っ!!人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ……っ!!人がせっかく注意してあげてるのに……っ!?」



キーーンコーーンカーーンコーーーン……



「…………っ!?」
チャイムの音が響く……。
つまり、授業が終わったわけで……。
「あ゛ぁ……っ!!授業サボっちゃった……っ!?」
は頭を抱えて叫んだ。
「ぷっ……。ホントお前っておもしれぇーーーっ!!」
急に、今まで黙っていた御柳君が吹き出した。
「何笑ってんのよ!どうしてくれるの…っ、私まで授業サボちゃったじゃないの……っ!!」
怒りに任せて、ガッ、と御柳君の制服の襟元を掴む。
「別に俺のせいじゃねぇもんね。お前が勝手に俺に突っかかって来ただけだろ?」
私が襟首を掴んでも、飄々として言ってのける。
「…………くっ!!」
このままだと、御柳君のペースに乗せられたままだわ……っ!!
ここは、悔しいけど引くしかないわね……。
次の授業もあるし……。

「……はぁ……。もういいわ。好きにしなさい。後で困っても知らないからね。」
そう言って、すっくと立ち上がって行こうとしたその時ーーーーー。


グイッ!


「ぅいぇ……っ!?」
急に手首を掴まれ、引っ張られた。
もちろん、私はバランスを崩し後ろに倒れた。
「ぃったぁあ〜〜〜っ!!」
思い切りぶつけたお尻をさすりながら、涙目に言う。
「ちょっと……!何すんのよ、あんた……っ!!思いきりお尻ぶつけちゃったじゃないの……っ!!」
もう、すでに半パニック状態に陥りながら叫ぶ。
もう、これ以上この人の側にいるのは嫌だ。
何が起こるか分からない。
「一緒にサボろーぜ!」
半狂気状態の私に、御柳君は笑いながらそう言った。
「……は……?」
私の頭の中は一瞬で真っ白になる。
「あんた、何言ってんの……?」
「だから、一緒にサボろーぜ。こんなに天気も良いんだし、たまには屋上で昼寝も良いだろ。」
そう言って、ゴロンと横になる。
「いや、その手、離して欲しいんだけど……。」
自分の手首を指差して言う。
「ヤだね。お前も一緒にサボるって言わない限り離さねぇ。」
気持ちよさそうに、目をつぶって言う御柳君。
本っっっ当に、この人の考えてる事は分からない……。
「はぁ〜〜〜……、分かりました。サボります、サボりますよ。これでいいでしょ?離してよ……。」
そう言うと、あっけないほどにスッ…、と離してくれた。
(今のうちに……っ!)
「走って逃げようとしても無駄だぜ。」
思っていたことを当てられて、心臓が止まりそうになった。
「な、なな何を言ってるのかな?芭唐君……っ!?」
「声に出てるっての。どっち道、走ったって逃がす気ねぇし。無駄だから止めとけよ。」
有無を言わさない口調で言う。
「う゛……。分かったわよぅ……。大人しくしてれば良いんでしょ……。」
そう言って、私は無柳君の隣にしぶしぶと座り直した。






数分後ーーーーー。


「暇……。」

「暇、暇、暇、暇〜〜〜っ!!」
は、芭唐の側で叫んでいた。
「ったく、うっせぇーな……。人が気持ちよく寝てるってのに……。」
「何よ……!元はと言えば、あんたのせいでしょ……っ!!」
それなのに、人のことはほっといて、1人だけ気持ち良さそうにしやがって……っ!!
「お前も寝たらいいじゃねぇか。」
「嫌よ。何されるか分かったもんじゃない。」
キッパリと答える
「……あのな……。はぁ……。分かったよ…、じゃあ、何だ……。」
芭唐は暫くう〜〜〜ん、と悩んでからを見た。
「考えても、これと言ってすることねぇぞ。」
「だったら、帰してよ。早く。」
これまたキッパリと言うが、もうすでにこれも無理な事はうすうす分かっている。
「ったく、女子ってのは分かんねぇな……。」
「あんたなんかに分かってたまるもんですか。」
「お前は絶対に普通の女子とは違うけどな。」
「なっ、何よ!それどういう意味……っっ!!?」
怒りに任せて、御柳君に突っかかろうとした時、急に御柳君の表情は真剣になった。
真剣な眼差しに射すくめられる。
「お前の事が好きだ。」
「…………っ!?」
真剣に、目を見つめられて、言われた。
その瞬間に、辺りは無音になる。
「……なんて言われたら、お前でも嬉しいのか?」
その空間を打ち破るように、御柳君は笑いながら言った。
体の中に、熱いものが湧き上がる。
体がふるふると震えて来る。
「…………!…………っ!!」
怒鳴りつけてやりたいのに、急な事に言葉が出ない。
「あ?何だ、魚みてぇに口パクパクして。」
御柳君が覗き込んでくる。
彼の顔が、私に最も近づいた時ーーーーー
「……っ馬鹿……っ!!」
今までつっかえていた言葉が口から出た。
余りにも大きな声だったので、御柳君は耳を押さえてうずくまった。
「……っつ、何だよ……っ!?急に大声上げて……っ!!」
未だに耳を押さえて言う彼の目には、少し涙が溜まっていた。
「あ、あんたねぇ……っ!!人を馬鹿にするのも大概にしなさいよ……っ!?」
すっくと立ち上がって言う。
心なしか、その足も震えている気がする。
「勝手に人をサボらせたり…っ、人の事馬鹿にしたり……っ!!言って良い事と悪い事ってのがあるのを知らないの……っ!?」
芭唐を指差して言う
「…………?何だ、さっきの言葉に怒ってんのか……?」
言いながら、芭唐は立ち上がる。
「ちょっと…っ、近寄らないでよ……っ!!あんたなんか、大っ嫌いよ……っ!!」
は、そう言いながら後ろに下がっていく。
そんなは気にせず、芭唐はどんどんの方に歩み寄って行く。
「…………っ!?」
気が付くと、すでには扉横の壁まで来ていた。
これ以上は逃げられない。
壁に背を預ける形となった。
「ちょっ…ちょっと……!近寄るんじゃないわよって言ってるでしょ……っ!?」
のそんな言葉に、芭唐は聞く耳を持たないと言う風にどんどん近寄ってくる。
とうとう、追い詰められたの横の壁に手を突いた。
「…………っつ!!」
芭唐の顔がだんだんと近づいてくるのに耐えられず、は目を硬く瞑った。
「さっきの言葉はマジだよ。チャン……。」
耳元で、何だか生暖かい感じがして、頭の中にその言葉が響いた。
その瞬間、ゾクリ、としたものが背中を這いずり回った。
自分に影を落とすものがなくなって、がそろそろと目を開けると、芭唐は屋上を出るところだった。
「いい返事待ってるぜ、チャンっ♪」
芭唐は、面白そうに笑い、手を振って出て行った。
「な…っ、な、何なのよ……っ!!あいつ……っ!!」
は、そう言いながらも自分の顔がとても熱いのに気が付いた。
「あんな奴知らないんだから……っ!!何よ、人の事馬鹿にして……っ!!」
そう言って、ほてった顔に風を当て、冷まそうとする。
しかし、体の中から湧き上がるものはなかなか冷めてはくれなかった。
「あんな奴……っ!!」








「ま、今日のところは手ごたえアリ…って感じかな。」
その頃芭唐はニヤニヤと笑いながら、階段を下りていた。





は、まだ気付いていない。
今日、屋上であった事は、芭唐が全て計算していた事だと言うのを。

















〜〜〜後書きと言う名の懺悔〜〜〜

ハム猫・「えーーーっと……。だんだん分かんなくなって来ました。」

御柳・「おう。俺の方が分かんねぇ。」

ハム猫・「きっとですね、この話をまとめると、芭唐さんはさんのことが前々から好きで、色々とちょっかいを出したかったんではないかと……。とにかく、気を引きたかったんですね。多分……。」

御柳・「そこはかとなく、遠まわしな言い方だな……。」

ハム猫・「芭唐さん、分かりませんよ〜〜〜。喋らせ方とか、色々……。」

御柳・「それは、唯単に、お前の勉強不足だろ?」

ハム猫・「ぐっは、言ってくれるな……。あぁ、ホントに最近筋道立てて分かりやすいドリームが書けなくなりました……。って言っても、下書き無しですが……。」

御柳・「お前は単細胞だからなーーー。難しい事考えられねぇもんな。」

ハム猫・「そーなんですよーーー。…って!さり気に酷い事言わないで下さい……っ!!」

御柳・「俺は事実を言ったまでだ。」

ハム猫・「あぁ、そうですか。いいですよ、もう……。じゃあ、後はしめ頼みますよ。」

御柳・「任せとけ。ま、無難に、ここまで読んでくれて有り難うな。また一緒に屋上でサボろうぜっ!!」



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