あの人のバトルは、全てが完璧だった。 チップの転送のタイミングも、そして種類も。 フィールドや相手の特徴を瞬時に見極め、最も適したチップを送る。 ナビに送る支持も、分かりやすく、的確。 一瞬の隙も見逃さなかった。 そんな彼女だったからだろう…、炎山様がお声を掛けられたのは……。 ーーー叶わぬ想いーーー
「う〜〜〜ん…、やっぱりブルースは強いね。」
ニッコリと、楽しそうに笑っては言った。 『滅相もありません。炎山様のオペレートのお陰です。』 いつものバトルルームで、いつものような会話。 「ふん、当たり前だな。」 炎山は、特に威張っている訳では無いのだろうが、そう言う台詞を言う。 「あっはは、炎山君らしいね〜〜〜。でもホント、ぅん、ブルースは強いよ。」 と炎山は、こうやって週に何度かバトルをするようになった。 切欠は些細な事。 のバトルを偶然見ていた炎山が、そのバトルの腕を見て声を掛けたのが始まりだった。 「未だにブルースにだけは勝てないなぁ……。」 「そう言いつつ、何度か倒しかけているだろう。」 の言葉に、微かに微笑みながら炎山が言う。 『そうですよ、様。私も精進しないとすぐに負けてしまいそうです。』 ナビの俺も、2人の会話に口を挟む。 炎山様に失礼かと思いつつも、彼女を見ていると話しかけたくなる。 そう、彼女を見ていると、いつもと違う感情が流れ込んでくる。 彼女の声が、表情が、バトルの最中にも気になって仕方がない。 何度か負けかけたのはそのせいで。 気付くといつの間にか、彼女のほうに気を向けている。 オペレートをする時の、凛とした声。 普段の優しい声とは違い、それには人の気を引き付けるものがある。 しかし、その声にもちゃんとナビへの愛情が、優しさが感じられて。 それを聞いていると、俺は…、胸の辺りに何か薄黒いものが疼くのを感じる。 そう…、最近の俺はどうにかしている……。 今までこんな事は無かったのに。 ただ、炎山様のオペレートに従って戦っていくだけ。 炎山様の命令が第一で。 それ以外に考える事など必要無くて。 それなのに…、何故……?
「……ス…、おい、ブルース!」
『ぇっ、あ、はい、何でしょう、炎山様!』 いつの間にか気を抜いていたらしく、気が付くと炎山様がこちらを見ていた。 「どうしたブルース?最近どうも様子がおかしいぞ。」 『いえ…、何でもありません……。』 少し眉を顰める炎山様に、心配を掛けさせないためにそう言った。
「心配を掛けさせないため」……?
いや、違う。 これは、口にしてはいけない事だから。 誰にも言ってはいけない事だから。
「そうなのか……?あぁ、、今日もすまなかったな。家まで送ろう。」
「ぁ、有難う。いつもゴメンね。」 「いや、バトルを頼んだのは俺の方だ。これくらい、当然の事だろう。」 そう言って、炎山様は彼女をいつも家まで送る。 2人でバトルルームを出て行く。 ーーーズキリ、と胸が痛んだ。ーーー
「今度の日曜日は空いてるか?」
車の中で、炎山様が彼女に聞いた。 「ん〜〜〜、私は空いてるけど……。どうしたの?」 「いや、ちょうど仕事が入ってなかったのでな…、さえ良ければどこかに行こうかと思って……。」 少し、窓の外に顔を向けてポツリと呟く。 「え!そうなんだ〜、嬉しいな〜〜〜♪うん、私はもちろん良いよっ!!」 「そうか……。」 彼女のその言葉を聞くと、炎山は優しく微笑んだ。 今、俺は抱いてはいけない感情を抱いてしまった。 マスターであるはずの炎山様に……。 炎山様を…、「羨ましい」と思った……。 それが、どういう経路で起こった感情なのかは、すでに俺も気付いている。 許されない事なのに…、何故俺はこんな感情を抱いたのか……。 この世界と…、ネット世界とは住む場所の違う、「人間」に恋愛感情など抱いてしまったのか……。 顔は見れても、声は聞けても…、触れる事は出来ない……。 この気持ちを告げても…、どうにも出来ない……。 許される訳が無い……。 炎山様と彼女が楽しそうに会話をしているのを、横で聞きながら、俺は自分の手を見た。 ちゃんと物も握れる。 感触を確かめる事も出来る。 しかし、今の俺にはそんな事は何の意味も持たない事で。 俺が今この手で触れてみたいのは彼女で。 いつも、ソード等の固い武器しか持った事の無い俺には、彼女に触れるとどんな感じがするのか想像も出来無い。 自分の拳を握り締めながら、俺は自分を呪った。
「じゃあ、また今度ねーーー!」
「あぁ。」 いつもの様に、彼女の家の前で車を止めて、家のドアをくぐる彼女を見ている炎山様。 彼女が家の中に入ったのを確認すると、クルリと踵を返す。 そして、車に乗り込んだ。
「ブルース……。」
炎山は、一人になるとPETを取り出し、ブルースに声を掛けた。 『……何でしょう、炎山様……。』 「さっきした質問だが…、本当の事を話せ。お前、何があったんだ?」 炎山様の質問に、言葉が出ない。 炎山様には俺の事は全てお見通しなのか。 『それは…、お話出来ません……。』 「何故だ?」 今までに無い返答に、炎山様はいぶかしむ。 『すみませんが…、これは俺自身で解決しなければならない問題なので……。』 悩んだ末に、そう言うと、炎山様は暫くした後「そうか。」と一言呟いた。 炎山様、俺が全て本当の事を言ったら、どう言いますか? ただのバグだと言いますか? どうしようも無い事だから諦めろ、そう言いますか? 炎山様が彼女に向けている気持ちを知っているからこそ、俺はこの気持ちを自分の中に留めて置かなければならない。 ただ、出来る事なら…、叶う事なら……。 に想いを告げ、そして、触れてみたいーーーーー……。 『炎山様が…、羨ましいですよ……。』 ブルースは、小さくポツリ、と呟いた。 〜〜〜後書き〜〜〜 ハム猫・「いやはや、勢いで書いちゃったよ、ブルースドリー無。」 ブルース・「これは…、意味が分からないのだが……。」 ハム猫・「いえねぇ、何だか唐突に書きたくなりまして。簡潔に言うと、炎山はが好きで、ブルースもナビなんだけど、を好きになっちゃった、ってお話です。因みに、さんはまだどちらにも特別な感情は抱いておりません。」 ブルース・「……何なんだ、その設定は……。」 ハム猫・「だってだって、ナビと人間との恋愛って究極だと思いませんっ!?こう、どれだけ想ってても叶えられない…って言いますか、触れる事さえ叶わない、みたいな。」 ブルース・「所々、怪しい文章も見られるが……。」 ハム猫・「あっは!オイラゲームの方した事無いし、前作もあんまり見て無かったので、専門用語(?)とか分からなくて……。変な言葉使ってたらすみません。ブルースも炎山も偽者ですな。」 ブルース・「全く…、書く奴のレベルが知れるな……。」 ハム猫・「ぐっは、キッツイお言葉ありがとよ。しっかし、このネタを思い付いた瞬間からブルース熱が上がってきてねぇ。ブルースからかって遊んでみたいなぁ、と思ってます。ブルース好きだぁーーー!」 ブルース・「…………っ!?俺に近寄るな……っ!!(逃)」 |