僕のオペレーターは恋愛に疎い。

その上に、鈍い。



そのせいで、毎日僕は苦労をしている……。










ーーー星に、願いをーーー










『ティンクルティンクル!おはよう、!今日も良い一日になりそうだよ!』

毎朝、僕はのために運勢占いをする。
自分で言うのも何だけど、僕の占いは良く当たるんだ。
でも、最近は少し付け加えてる。
、今日は恋愛運が良いよ!運命の相手は近くにいるってさ!』
全くそう言う方面に興味を示さないには、しつこいくらいに言った方が良い。
「ぇ〜〜〜、最近何だか恋愛運良いの多くない……?」
僕の言葉に、は少し嫌そうな顔をする。
「そう言うのは私には関係無いから……。別の運勢占って欲しいなぁ……。」
困ったような表情で言う。


……こんなに近くに想ってる奴がいるって言うのに気付かないんだもんな……。
本当に、の鈍感さには呆れさせられる。
他の奴の好意に気付かないのは良いけど、僕の気持ちに気付いてくれないのは辛い。
毎日、顔も知らない男からのメールを影でこっそり消去してる身にもなって欲しい。


『でも、どうしてそんなに魅力的なのに、は彼氏を作らないのさ?』
彼女の煮え切らない態度に、つい突っ掛かってしまう。
まぁ、彼氏なんて作られたら困るんだけどさ。
「だって、まだそう言う事に興味無いし……。彼氏なんていなくても、私にはスターマンがいるから良いじゃない?」
そう言って、は曇らせていた表情を明るくした。
『…………っ。』
つい、その言葉に顔が赤くなる僕がいる。
でも、今まで何度の言葉に踊らされて来た事か。
惚れた弱みだけれども、ちゃんとその言葉が指し示す意味をきちんと受け取らなければ、後で痛い目に合うのは自分なのだ。
『……っ、はすぐそう言って誤魔化す……っ!!』
「アハハ、ごめんごめん。」
赤い顔を隠すように僕は言う。
そんな僕の気持ちなんか知らないで、は楽しそうに笑った。










そんな日々が続いたある日ーーーーー……。
『……ん……?』
PETの中で適当にニュースを流し読んでいると、目に入って来た記事。
『へぇ…、これは良いかも……。』
僕はその記事を見ると、軽く笑ってに呼びかけた。



「流れ星?」
『あぁ、そうさ。』
は、きょとんとした表情で小首を傾げた。
『今夜は流れ星が見れるらしいよ。2人で見に行こうよ。』
そう言って、近場の小高い丘への地図を表示する。
『きっと綺麗だよ。』
僕がそう言うと、は暫く考え込んだ。
「……スターマン、見たいの……?」
そして、僕の目を見て言った。
は流れ星嫌いかい?』
何だか彼女らしくない返答に、今度は僕が問い掛ける。
……彼女なら、喜んで同意してくれると思ってたのに。
「うぅん、嫌いじゃないよ。むしろ、見てみたいけど…スターマンがそう言うとは思ってなかったから……。」
僕の問い掛けに、首をふるふると振って、彼女は笑顔を作る。
『そ、そうかな……?』
もしかして、僕の考えてる事がばれたとか?
星空の下…、なんてロマンチックな雰囲気を作れば、も少しは意識してくれるかな、なんて思ってたり。
こんな事考えるなんて僕らしくないけど…、それだけに夢中なんだろうな、と痛感させられる。
今は少しでも彼女との関係を縮めたくて。
少しでもこの想いに気付いてもらいたくて。
ついつい、気持ちが焦ってしまう。
「ん、じゃあ、今日は二人で見に行こうか。」
の反応を見ながら黙っていると、そんな僕を見た彼女はにっこりと微笑んでくれた。
『……ほ、本当……っ!?』
その言葉に、頬が上気する。
「うん、綺麗な流れ星、一緒に見よう!」
つい、不安そうに窺う僕を見て、は頷いた。
「……や、やったーーーっ!!」
彼女のその言葉に、僕はついPETの中で飛び上がっていた。










「は〜〜〜、星空見上げるのなんて、最近してなかったなぁ……。今でもこんなに綺麗に見えるんだね……。」
少し肌寒い中、息を吐きながらは空を見上げる。
そこには、無数の星が瞬いていた。
「……昔学校で習った事も忘れたや……。」
真上を見上げるの瞳には、キラキラと輝く無数の星の群れ。
都会でも点と点を線で結べるくらいには、星は輝いていた。
「ぇっと…、あれが〜〜〜、カシオペア?」
「それは秋の星座だよ、。」
指を指して、線を引いていく。
そんな動作さえ、愛しい。


出来る事なら、この空に広がる星達一つ一つを、一緒に繋げて行きたいけれど。

僕は、君と手を重ね合わせる事すら叶わない。


「違ったかーーー。じゃあ、今夜はスターマン先生に色々と教えてもらおうかな?」
少し悪戯っぽく笑って、僕に微笑みかける。
「……うん、良いよ。僕がに教えてあげる。」
そんなに、僕はゆっくりと頷いた。
僕の気持ちを君に伝えるには、この大空に広がる星全部を繋げても、まだ時間なんて足りないだろうけど。
「じゃあ…、あれが……。」
僕は、ゆっくりと天に向かって指を伸ばした。










「……で、あれが北極星。」

丘の上に座り、スターマンに星の数々を教えてもらい始めて数十分。
最後に、スターマンは夜空に光る一つの星をスッと指差した。

「北極星…って言うと、あれだよね、一年中ずっと動かない星?」
スターマンの言葉に、は小首を傾げる。
「そうだよ、昔から旅人や船乗りを導いてきた星さ。」
「ふ〜〜〜ん。」
その言葉を聞くと、は一際輝くその星を見上げる。

そして。


「スターマンみたいだね。」


ポツリとそう呟いた。

「ぇ?」
のその言葉に、目を大きくするスターマン。
「……どういう事さ、それ?」
考えても意味が分からない。
の突飛な言葉は、理解に苦しむ事が多かった。
「ん?私にとってのスターマンみたいだな、って思ったの。」
不思議そうにするスターマンに、はニッコリと笑って言った。
「…………!」
その笑顔と言葉に、スターマンは赤面する。
「だって、いつもスターマンは正しい方向に導いてくれるもの。」
嬉しそうに、ふうわりと微笑む。
「私、ナビがスターマンで本当に良かったって思ってるよ。いつも迷惑かけてるけど、その分感謝もしてるんだよ?」
膝を抱え、PETの中のスターマンを覗き込む。
「…………っ!!」
その柔らかい、優しい表情に、スターマンは声が出なかった。
「……ねぇ、あのね……?これからも…ずっと……。」
そんなスターマンを真っ直ぐと捕らえ、がゆっくりと言葉を紡いだ。
「…………っ。」
どんな言葉が続くのか、じっと続きを待っていると……。
「……あ……!」
咄嗟に、が顔を上げた。
そして、急に手を組んで俯き始める。
「……ぇ、何……っ!?」
驚いて空を見ると、スッ…と一筋の光が横切った。


流れ星だ。


は、流れ星に願いをかけていたらしい。

「…………?」
流れ星が消えても、ずっと一生懸命に願い続けているに、そっと声をかける。
「……ぇ……っ。」
願い事に夢中になっていたのか、スターマンの小さな声にはびくりと体を振るわせた。
「……ぁ、えっと、ごめん、つい……っ。」
ぽかん、と見つめてくるスターマンに、赤面しつつ手を振る。
「……そんなに夢中になって、何をお願いしてたの?」
自分との会話を急に止めるほどに大事な願い事。
少し、腹が立っていた。
あの続きが何なのか、凄く気になっていたから。
「ん〜、まぁ、さっき言いかけてた事なんだけど……。」
少し頬を掻くと、は照れくさそうに言った。
「”ずっとスターマンと一緒にいられますように”…って、お願いしてたの。」
ちらり、と視線をスターマンに向けて。
少し恥ずかしそうにしながらそう言った。
「……ぇ……。」
の言葉に呆けた声を出すスターマン。
「いや、あの、勝手なお願いなんだけど……っ。私は、ずっとスターマンと一緒にいたいなって……。これからもずっとずっと、スターマンと一緒にいたいなって…、思って……。」
余りにもスターマンがじっと見つめてくるからだろうか、は視線を逸らしてもじもじと言った。
「……うんっ。うん!」
その言葉を聞いて、呆けた顔をしていたスターマンは、まるでその言葉が現実の物であると確認するかのように、はっきりと大きく首を振った。
「僕は、いつでも、どんな時でも、ずっとと一緒にいるよ!ずっとの傍にいる……っ!!」
この時を逃せば、自分の気持ちは伝えられない。
「僕、が大好きだから……っ!!」
そう思ったスターマンは、身を乗り出してそう叫んだ。
「……スターマン……っ。」
彼の言葉を聞いて、は瞳を大きくする。
「……っ有難う…、私もね、スターマンの事、大好きだよっ。」
そう言って、ゆっくりと微笑んだ。
「……あのね…、一つお願いがあるの。この星達に、誓って良いかな?」
「誓う?」
「そう。今日、さっき約束した事を。」
そう言うと、はそっと目を閉じた。



「……幸いの時も、災いの時も、豊かな時も、貧しい時も、健やかな時も、病める時も…、私、はスターマンと共にいる事を誓います。」



「…………。」

そう、それは結婚式の誓いの言葉だったけれども。


「……幸いの時も、災いの時も、豊かな時も、貧しい時も、健やかな時も、病める時も…、僕、スターマンはの傍に…といつまでも共にいる事を誓います……。」

が言った後に、スターマンも目を閉じてそう言った。
そんな二人の誓いを見守る者は、この夜空に輝く星達のみで……。


「『フフ……。』」


誓いを終えた二人は、どちらからと言わず、微笑んだ。

「スターマンがいてくれたら、それだけで毎日幸せ。」
そう言って、隣に置いていたPETを手に取り、額に当てる。
『僕も、がいてくれるだけで、幸せだよ。』
スターマンも、画面越しに額をつける。





ねぇ、


僕は、君と掌を重ね合わせる事も、触れ合う事も出来ないけれど……。



僕達の心は…、今、重なってるって思って、良いよね……?



















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「あれ?主人公さんの感情変わってる……?71417キリリク、鳥塚つばささんに捧げます。」

スターマン・「出だしがその言葉?それはちょっとヤバイんじゃない?」

ハム猫・「ぇ、じゃあ、季節は聞かないで下さい。」

スターマン・「……それもどうかと思うけど……。」

ハム猫・「いや、だって北極星ネタが使いたかっただけなんで…、急いで星座検索しても良く分かりませんでした。北極星はこぐま座の一部なんて言っちゃいやん。」

スターマン・「……気持ち悪いよ。まぁ、いつも細かい設定なんて考えてないからこうなるんだけどね。」

ハム猫・「ぐっは、痛いお言葉ありがとよ。」

スターマン・「遅れたけど、鳥塚ごめんね?何ヶ月経ってるかは数えちゃ駄目だよ。」

ハム猫・「本当に申し訳ありません!しかも、何だかこんなものになってしまって……。」

スターマン・「僕のキャラ掴めてないよね〜〜〜。見せ場でもある僕の星座薀蓄削っちゃって!」

ハム猫・「見せ場?薀蓄格好良いのか?」

スターマン・「まぁ、ハム猫に知識が無いんだからしょうがないけどさ……。」

ハム猫・「何その諦めきった顔!じゃあ言うなよ!」

スターマン・「まぁ、煩い奴は放っておいて。また今度一緒に星見ようね!その時に色々教えてあげるよ。今日はここまで見てくれて有難う!じゃあね!」


戻る