私のナビはプラントマン。

植物や美しい物をこよなく愛し、独特の世界を持っている。

そんな彼の最近の趣味は、アロマテラピーだったりします。










ーーー禁ジラれタ遊戯ーーー










「ただいま〜〜〜。……って、あれ……?」
帰って来て、扉を開けてすぐに香ってきた匂い。
その元を辿るかのようにリビングへ行くと、プラントマンが小瓶を机に置いていた。
「やぁ、今日は早かったね。」
そう言って、私に視線を向ける。
「あぁ…、うん。授業も早く終わったし……。」
曖昧な返事をしながら、彼に近付く。
「……それは……?」
そして、先程から気になっていた小瓶を指差した。
「あぁ、これはアロマオイルさ。君のために、私がブレンドしたんだよ。」
その質問に、彼は嬉しそうにニコリと微笑んで答えた。
「最近の君は疲れが溜まっているみたいだったからね。リラックス効果のあるオイルだよ。」
そう言って、小瓶をスッと持ち上げる。
「……確かに良い香りだけど……。」
本当に変わったナビだと思いながらも、最近ではそれに慣れてきている自分がいる。
「今日はもうやる事は無いのだろう……?じゃあ、少し二人でゆっくりしようじゃないか。」
そう言うと、プラントマンは可愛らしいキャンドルを取り出した。
「部屋の電気を消して、キャンドルの灯りだけにするんだ。」
マッチでキャンドルに火を点けると、パチンと部屋の電気を落とした。
ぼんやりとした暗闇が広がる。
部屋の中心では、とても暖かい灯りが、ゆらゆらと揺れていた。
「灯りが変わるだけで、香りも違って感じるだろう……?」
キャンドルの微かな灯りに照らされたプラントマンが言う。
「……そうだね……。何か不思議な感じ……。」
私は、素直に感じた事を口にした。
「さぁ、。目を閉じて、ゆっくり深呼吸するんだ。ゆったりと、この空間に身を任せて……。」
優しい声が聞こえる。
すでにこの香りに癒されているのか、私はその言葉に素直に従った。

ゆっくりと深呼吸をすると、体の疲れが取れて行くかのようだった。
ゆったりと…、まるで体が宙に漂っているかのように。
不思議な感覚に体を沈めながら、私の頭の中は心地よい暗闇に呑まれて行く。


そんな時ーーーーー……。





……ちゅっ。





「……ぁ゛……?」
つい、瞬時に目を開けてしまった。
余りにも酷い声だったが、咄嗟の事に他に上げようが無かった。
「……っ、い、ぃ、い、今のって……っ!?」
今。
確かに、自分の唇に何か柔らかい物が……。

この薄暗い部屋。
どう考えても犯人は一人しかいない訳で。

「……何をしたのかな、プラントマン……?」
目の前でどこか楽しそうにしているプラントマンに詰め寄る。
「キスだね。」
額に青筋が浮かぶ私に、彼はさらりと答えた。
「……っこの馬鹿ーーーっ!!」
分かってはいたが聞きたくなかったその答えに、私は瞬時に切れた。
「……っ、こ、この…っ、ぉ、おぉ、乙女のファーストキスを奪うなーーーっ!!」
余りにも衝撃的な出来事に、目に涙を溜めながら声の限りに叫ぶ。
「おや、それは良い事を聞いた。」
そんな私を見て、プラントマンは飄々と答える。
「良い訳あるかーーー!あぁあ、もう!「ファーストキスはナビとです。」なんて誰に言えるってのよっ!!頭おかしいと思われるじゃないっ!!」
混乱の余りに腕をぶんぶんと振り回しながら私は絶叫する。
「フフ…、じゃあ私との二人だけの秘密だね……。」
一人泣き喚く私は無視して、彼は至極楽しそうに微笑んだ。
「……っ恐ろしい事言わないで……っ!!」
そんな彼に、鳥肌が立つ。
「あぁああ、もう駄目だ……っ。私もう駄目だ……!ファーストキスがプラントマンだなんて……っ。これからやって行けない……っ!!」
がっくりと肩を落とし、両手で顔を覆う。
「大丈夫だよ、。これからも私が奪えば良いんだから。」
少しでも現実から目を逸らしたくて両手で視界を遮っていたが、どうやらプラントマンは何が何でも私を怒らせたいらしい。
「そんなのお断りだ……っ!!」
もう、気持ちが滅茶苦茶で、ぐるぐるしてて。
私は咄嗟にプラントマンに殴りかかっていた。
「おっと……。」
しかし、私の行動パターンなど見通しのプラントマンは、軽くそれを避ける。





フッ……。





「…………っ!?」
避けられたと思った瞬間、私が腕を振り上げたせいか、キャンドルの小さな炎が風で消えた。
瞬間、部屋を本当の暗闇が襲う。
「……っぅわ……!」
私は考えずに殴りかかった勢いで、バランスを崩した。
「はい、危ないよ。」
次の瞬間には、ぎゅう、とプラントマンに抱き締められていた。
「……っわ、何するのよ……っ!?は、離して……っ!!」
抵抗しようと暴れるが、それでも彼の腕からは逃れられなかった。
「暗い中暴れたら危険だよ。それよりも…、落ち着いて……?」
抱き締められているせいで、至近距離で聞こえる彼の声。
優しい声色に、少し体を強張らせながらも、私は腕を振り回すのを止めた。
「はい、良い子だね。」
そう言いながら、彼は私の頭を撫でる。
「……大人しくするから離して……。」
切れそうになる自分を頑張って抑えて、私はムッとした声で言った。
「それは駄目だね。……それよりも、さ。」
私の要求にはすっぱりと切り落とす回答を与えて、彼はさらに私をしっかりと抱き締めた。
「こうやって…、暗闇の中で抱き合っていると…二人を隔てる物なんて無いように思わないかい?」
「……っ、本当に止めて下さい。」
いつもの彼の言い回しに鳥肌が立ちつつも、出来るだけ冷静を装う。
「ほら、君の鼓動が聞こえる……。フフ、早鐘のように打ってるね……。」
冷静を装いつつも、それは表面上の事だけであって、自分が今現在赤面している事も気付いている。
それでも…、少しでも虚勢を張っていたくても、いつも彼にばれてしまうのが悔しい。
全て、プラントマンにはお見通しなのだ。
「私の鼓動が聞こえるかい?君の鼓動と一緒になって、一つのメロディーを奏でている……。とても、耳に心地良いよ……。」
暗闇の中、彼の声以外に聞こえる物は無くて。
黙ってしまえば、互いの呼吸の音さえ聞こえてしまいそうで。
自然と、息を潜めてしまう。
「……っプラントマン……!本当に…、もう止めてってば……っ!!」
本当はデータの集合体なのに。
現実には存在しないはずなのに。
今、この時に感じる彼の暖かさが生々しくて。
意識するなと言う方が、無理な事だ。
「…………。」
離れるために精一杯もがこうとした。
それなのに……。

「…………っ!?」

体が思うように動かない。
ずっと、抱き締められていたから気が付かなかった。


自分の体が…、痺れている事に……。


「……っ、な、何したの、プラントマン……っ!?」
自由が利かない事に衝撃を受けた私は、上ずった声で問い質す。
「……の為なんだよ……。」
そう言うと、彼は腕の力を緩めた。
そして、そっと、私を抱き上げる。
「ちょっ…、何す……っ!?」
すでに呂律も回らなくなって、まともに言葉を喋る事が出来ない。
「大丈夫、すぐに痺れは取れるから。少しの間、休むんだ……。」
そう言って、彼は暗闇の中、私をベッドまで運んだ。
「…………っ!?」
ベッドに下ろされ、言いようの無い恐怖に襲われる。
体が強張って、冷や汗が出る。
「……フフ、大丈夫だよ。まだ…、君の全てを奪いはしないから……。」
そんな私に気付いたのか、プラントマンは私の耳元でそう囁いた。
「今日は…ゆっくりとお休み、……。」
そう言うと、彼はゆっくりと私の頭を撫でて、部屋を出て行った。
私は余りの混乱に、彼から解放された事から頭の中が白くなって行き……。

暗闇の中、意識を手放した……。










「…………?」
うっすらと目を開けると、そこは自分の部屋で。
部屋の中には、眩し過ぎるほどの日の光が差し込んでいた。
「…………。……ぁ……っ!!」
今現在の自分の状況が良く掴めなくて、昨日の事を思い出す。
そうする内に、何があったかを思い出した。
「……プラントマン……!」
そう、昨日の晩に何があったのか。
何をされたのか。
その全てを思い出した。
「…………っ!?」
咄嗟に部屋中見回すが、ここには彼はいなかった。
ほっと、胸を撫で下ろす。
時計を見ると、もう9時。
彼が何処にいるのかは分からないが、何時までもここでじっとしている訳にはいかなかった。
考えたら昨日の夜から何も食べていない訳で。
くぅ、とお腹が鳴る音が響いた。
「……っ、行きたくないけど…行くしか……っ!!」
はそう決心すると、部屋に置いていた殺虫剤を手に持ち、慎重に部屋を出た。





廊下沿いに進んで行き、リビングに入ろうとした時。
「…………?」
何やら中から物音が聞こえて来た。
(プラントマン……?)
そう思い、ゆっくりとドアノブを回す。


キィ……。


「…………っ!?」
ゆっくりと開いたのが逆効果だったのか、扉は軋む音を響かせた。
「おや、。起きたんだね、おはよう。」
しかし、殺虫剤を構えるに対し、プラントマンは普段と変わらず爽やかなほどに言葉をかけて来た。

まるで、昨日の事など覚えていないとでも言うように。

「…………っ!!」
それでも警戒して中々近寄らないに、プラントマンの方から近寄って行く。
「ほら、そんな危ない物持ってないで。これは離してこっちを持って。」
体を強張らせるには気付かないように、プラントマンはの手の中の殺虫剤を取り上げ、にある物を握らせた。
「……フォーク……?」
自分の手に握らされた物を見つめて、疑問符を浮かべる
「少し遅くなったけど、一緒に朝食にしようじゃないか。」
そんなにニッコリと微笑みかけ、プラントマンは言った。
その言葉に机を見ると、見事な程に朝食の準備が整っていた。
トーストにオムレツ、サラダに紅茶……。
これを全てこのプラントマンが用意したのかと思うと恐ろしかったが、素直なのお腹は、それを見てくぅ〜、と鳴いた。
「さ、座って。」
椅子を引いてを招くプラントマン。
「…………。」
は、暫くそんなプラントマンをじとりと睨んでいたが、お腹に手をやると渋々と足を進めた。



「……ね、ねぇ、プラントマン……。」
カチャカチャとただ食器が当たる音だけが響くリビング。
は、決心をして声をかけた。
「何だい、?」
プラントマンは優雅に紅茶を飲みながら、その声に応えた。
「……ぅ…、その……。」
真っ直ぐに見つめられ、言葉が出ない
昨日の事を聞きたいのだけれど、今聞いて変な事をされるのも困る。
しかし、何故彼があんな事をしたのかも気になる。
声をかけたは良いが、どんな言葉で聞こうかと頭を悩ませていると……。
「昨日はゆっくり休めたかい?」
プラントマンの方から声が掛かった。
「…………っ!?ぇ、う、うん……っ。」
急な事に驚いて、は驚いた顔で答えた。
「それは良かった。最近、君は頑張り過ぎだったからね。」
そう言って、一口紅茶を飲む。
(……もしかして……。)
そのために……?
ふと、頭を過ぎった考え。
プラントマンは、私を休ませるために(かなり無理矢理だが)あんな事をしたのだろうか……?
「…………。」
そんな事を考えながら、じーーー…っとプラントマンを見つめていると、まるでその考えに答えるかのように微笑んだ。
「…………っ。」
その笑顔に、は瞬時に目を逸らす。
もし、もしそうだったのなら……。
変な事も色々とされたけれども、彼にはお礼を言わなければいけないのかな……?
……素直には伝えられそうに無いけれど……。



「そう言えば……。」



が俯きながらそんな事を考えていると、フとプラントマンが口を開けた。


「昨日のは初心で可愛かったねぇ……。」
まるで悦に入っているような声で、一言そう呟いた。

「前言撤回……っ!!」

はその瞬間、鳥肌を立たせながらもプラントマンが作ったハート型のオムレツにフォークを突き刺した。



















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「何がおかしいかってプラントマンが火を使ってるのがおかしいと思います。」

プラントマン・「行き成り挨拶も無しに突っ込みに行ったね。」

ハム猫・「言ったモン勝ちさ!と、言う訳で84000キリリクプラント夢でした!砂羅さんに捧げます……っ!!」

プラントマン・「こんな支離滅裂な作品ですまないねぇ……。少しでも気に入ってくれると嬉しいんだけど。」

ハム猫・「だって、まとめようとしたらプラントが暴走するんだもんーーー。痺れさせなくても……!ってか、どうやって……っ!?」

プラントマン・「だってねぇ、ああしないとは言う事聞かないし……。」

ハム猫・「あからさまにあなたの趣味が入ってる気がするのは私だけかな……?」

プラントマン・「…………。何か…言ったかな……?」

ハム猫・「……ゴメンナサイ……☆(涙)」

プラントマン・「まぁ、こんな調子はいつもの事だけどどんどんと嬉し…じゃないね、怪しい方向に行ってしまって申し訳無い。管理人の脳内がもう危ないからね、これからも覚悟しといた方が良いよ。」

ハム猫・「素敵解説有難う。もう突っ込む箇所が無いよ。本当に暴走しすぎだよ。」

プラントマン・「ふふ、まぁ良いじゃないか。書いてる君も楽しめるし、私も良い思いが出来る。利害関係が一致しているよ?」

ハム猫・「くぬ……っ。くそぅ、プラントの甘い誘い文句が……っ!!」

プラントマン・「まぁ、こんな事を言わなくてもこいつは書き続けるだろうけどね。……じゃあ、意味も無く長くなったけど、良ければ受け取ってくれるかな、砂羅?また会える事を祈っているよ……。」



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