「分かってる…、分かってた……。あなたは軍人で私は一般市民。背負う物も抱える物も…、違うって事くらい……。」

静かな部屋に二人きり。

私達は、視線を合わさずに向かい合っていた。










ーーー未来へ繋がる今ーーー










「それを…分かった上で付き合い始めたのに……。何でだろうね、こんなに近くにいるのに、心が見えない……。」

この部屋は、人が住んでいるとは思えない程に閑散としていた。

男と女、二人が暮らしているというのに。

「あなたには任務がある。それは最優先しなければいけないし、休日に急に出て行く事もしょうがないと思ってた。理由も聞かなかった。」

淡々と語る女性に対し、男性はただ黙って俯いているだけだった。

「きっとこの部屋に戻って来てくれるって思ってたから。あなたに嫌われたくなかったから……。」

そこで女性は一旦言葉を止める。

「でも、最後に教えて?本当は何があったの?あなたは今何に巻き込まれているの?……別れる前に…、せめて一つくらい真実を教えて……?」

涙に揺れる瞳に男性を映して、彼女は言った。




「……未来……。」

ポツリ、と。

次に男性が言葉を紡ぐまでの時間が、永遠のように感じられた。

「未来……?」

いつもの低い声。

心に染みる、大好きな声。

この声が紡ぐ言葉が、今、真実を語るのだろうか。

「……俺は今、未来を救うために動いている……。」





再び沈黙。

それだけを言うと、男性は口を閉ざした。


「……そう……。あなたが冗談や嘘を言うような人じゃないのは分かってるから…、本当の事なんでしょうね……。」

暫く、その言葉を噛み締めていた女性は、耳に髪をかけながら呟いた。

「でも、それはあなたじゃないと出来ない事なの?未来って…そんな大きな物をあなた一人で救えるの……?」

理解しようとしても、それでも大きすぎる問題に、やり場の無い感情が抑え切れない。

「……分からない……。しかし、俺に今出来る事をしているつもりだ……。」

段々と冷静さを欠いてきた女性に対し、男性は未だに淡々と語る。

「……本当に…、あなたは出来た人ね……。」

その言葉に、女性は床を見つめた。

「そうやって…、あなたは自分の事を考えないでいつも出て行ってしまう……。」

腕を組み、床に向かって言葉を吐き出す。

もう、二人の会話も終わりに向かっていた。



「それは違う。」



しかし、男性の一言が会話を違う方向へ持って行った。

「…………?」

今までの淡々とした口調とは少し違う、どこか意志を感じるその声に、女性は顔を上げる。

「……ずっと、渡そうと思っていた……。」

女性が顔を上げると、男性は真っ直ぐにその瞳を見つめた。

そして、足を進める。

「……何、を……?」

目の前まで来て足を止めた男性を見て、震える声で聞く。

すると、男性はポケットに手を入れた。

「これを…受け取って欲しい……。」

そして、差し出されたのは四角い箱。

真っ白な、シンプルな箱。

真紅のリボンがかけられた、小さな小さな箱。

「……これ…を……?」

恐る恐る男性の手から箱を受け取る。

ゆっくりと、リボンを紐解き、箱を開ける。

「…………っ!!」

少し、期待していた。

中に、何が入っているのか。

何が入っていて欲しいか。





「……バレル……っ!!」





溢れる涙が抑え切れなくて頬を伝う。

声が震え、嗚咽が漏れる。



小さな箱に入っていたのは、シンプルな指輪。

銀色のリングに、たった一つ、小さな宝石が埋まった指輪。



「俺は…お前との未来だから守りたいんだ。との未来を…消されたくない……。」



俯き、肩を震わせているを見つめて、バレルは言った。

「……受け取ってくれるか……?」

静かな部屋の中、バレルは呟いた。

「……っ、ひ、酷いわよ……っ。こんな時に出すなんて……っ。私が…、どんな気持ちで…っ、今日あなたを呼んだか……っ!!」

嗚咽に混じって、の声が聞こえる。

「……すまない……。」

バレルは、ぼろぼろと大粒の涙を流すをそっと抱き寄せた。

最初は頑なに拒んでいたも、次第にバレルの胸に顔を埋める。

「大丈夫だ…、俺達の未来はずっと続いて行く……。誰にも壊させやしない。」

優しく、ゆっくりとの髪を撫ぜる。

「……っ、本当……?私達、いつか途切れたりしない……?ずっと、一緒にいられるの……?」

バレルの腕の中で、はぎゅっと手を握った。

「あぁ、大丈夫だ……。」


例え、自分が時空を渡る事で、命を削っても。



全てを奪われるよりはましだ。




少しでも長く。





少しでも傍に、と共にいれるのならば……。





「俺達の未来は…、永遠だ……。」


バレルは、静かにそう呟いた……。















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「……はい!91000キリリクバレルさん夢でした!ゆきえさんに捧げます♪」

バレル・「……俺の…夢、か……?」

ハム猫・「何でそこで疑問系……。これでも頑張って大人〜な雰囲気を出そうと奮闘したのに!」

バレル・「……まぁ…、お前にしては…頑張った方かもな。」

ハム猫・「喜んで良いのか悲しんで良いのか分からないお言葉有難う。うん、でもこれ、ストリーム最終回見る前に書き始めたからネタ的に無理がありますね。」

バレル・「まぁ…、最後はああなってしまったから、な……。」

ハム猫・「細かい所は気にしない方向でお願いします。」

バレル・「細かくは無いと思うが……。まぁ、それを言ったら何も始まらないな。」

ハム猫・「バレルさんは難しいですよ〜〜〜。ゲーム設定じゃなきゃ無理ですか?」

バレル・「こんな形になってしまったが、少しでも気に入ってもらえると嬉しいんだが……。すまないな、ゆきえ。また…、会える事を願っている……。」


戻る