「ックシュン!」

オレのオペレーターは今、風邪を引いている。

しんどそうな彼女に、オレがしてやれる事は、傍で見守っている事くらいだ……。










ーーーそっと。ーーー










「大丈夫か……っ!?」
くしゃみと同時に咳き込み出したを見て、エレキマンが身を乗り出す。
「……ぁ、うんっ、大丈夫……っ。」
そんなエレキマンに、少し落ち着いたは軽く微笑んで言った。
「…………っ。」
自分に心配かけさせまいとのその行動に、エレキマンは遣る瀬無い気持ちになる。
「エレキマンが作ってくれたお粥も食べたし、もう少し寝たら元気になるよ。」
はそう言って微笑む。
枕元には、いつの間に上手くなったのだろうか、エレキマンが作ったお粥の器が置かれていた。
「だから、ね?エレキマンは好きにして良いんだよ?ずっとここにいてもつまらないだろうし。」
まだ熱も引いてなくて自分も辛いだろうに、相手を思い遣る言葉をかけるをエレキマンは切なそうに見た。
「…………っ。」



確に、今傍にいても何も出来ないかもしれない。

自分が代われる事は無いかも、しれない……。

それでも……。










「……キスが、したい……。」



静かな沈黙の中、エレキマンがぽつりと呟いた。
「…………っ!?」
その余りにも突飛な言葉に驚いたは、一気に耳まで真っ赤になった。
「……ぁっ、その、これは変な意味じゃ無くて…っ、いや、その変って言うか…何て言うか……っ。あの…っ、人間だとキスで風邪が移るって言うし……!だから、その……っ。」
エレキマンは赤面しながらも、しどろもどろと慌てて言った。
「……エレキマン……。」
その彼の反応に、も更に顔が赤くなる。
「……その…、だ、駄目…かな……?」
そんなに、エレキマンは恐る恐る聞いてきた。
「ぃやっ、その、駄目と言うか……っ。」
そんな、上目遣いなエレキマンに、は慌てて両手を振る。
「こう言うのは…、その、何て言うか……っ。」
たじたじと身を引きながら適当な答えを探しているに対し、エレキマンは布団に手を付き、だんだんと近寄って来る。
「…………っ!?」
普段のエレキマンらしくない瞳に、はだんだんと心臓が高鳴っていくのが分かった。
「…………。」
ゆっくりと、しかし確実に、に近寄って行くエレキマン。
「……ぇ、エレキマン……っ。」
その真剣な瞳に射抜かれ、動く事が出来ない
自然と、そんな2人の距離は縮まって行き……。


瞳と瞳。

唇と唇。


その距離が少しずつ近寄って行く。

あと数センチ。
エレキマンは、ゆっくりと瞳を閉じた。
も、またゆっくりと瞼を閉じる。



そして……。


そっと。



2人の唇が重なった。










「…………。」
ほんの少しの間。
重なり合った唇は、惜しむように再びゆっくりと離れた。
そして、互いに視線を逸らし、沈黙が部屋を満たす。
どう言葉を切り出して良いのか、もどかしくて、恥ずかしくて。
体温が上がり、汗ばむのを感じた。


「ぁ、あのっ、わ、私、また少し寝るね……っ!!」


先に言葉を発したのは
視線を合わせないように早口でそう言うと、ガバリと布団に潜り、顔を深く隠した。
「……ぁ……っ。」
その急な行動に、エレキマンは驚いて少し目を丸くした。
それと同時に、自分が先程した行動が思い出され、顔を熱が襲う。
「…………っ。」
口に手を当て、自分がした事の恥ずかしさに打ちひしがれる。
あぁ、自分は何て言う事をしたのか……。
本当に、恥ずかしくて穴があったら入りたい。

「……ぁ、じゃ、じゃあ…っ、オレももう戻るから……っ!!」

潜ったまま未だに顔を出さないに一言そう言うと、エレキマンは勢い良く立ち上がって部屋を出て行った。



「エレキマン……。」
そんな後姿をこっそりと見つめながら、は呟いた。
そっと、自分の唇に触れる。
今でもまだ、さっきの感触が残っていて。
彼の唇は柔らかくて。
暖かくて。
ナビだと言う事を忘れさせる。
自分が抱いている感情に戸惑いながらも、ドキドキと鼓動を打つ音が激しく響く。
あぁ、自分のこの感情はいけないものなのでしょうか……?
許されない事ですか……?
そう思いながらも、はそっと瞳を閉じた……。





「…………っ!!」
の部屋を出て、扉に背中を預ける。
自分がした事に自分で驚かずにいられない。
今日の自分はどうしてしまったと言うのだろう。
そ…っと唇に触れる。
初めての感触。
初めての温もり。
あれが、の暖かさ……。
そう思うと、胸の高鳴りが増してくる。
思えば想うほど、どうにかなってしまいそうで。
考えを振り払うように思い切り頭を振って、エレキマンは部屋を離れた。










ーーー後日ーーー


「……ぇ、エレキマン……?」
栄養を取り、ゆっくり休んだお陰で良くなったがPETを覘くと、そこにはぐったりとしたエレキマンがいた。
「ど、どうしたの……?大丈夫……っ!?」
フラフラとおぼつかない足取りに、パチパチと微かな放電。
「……何か…、寒い…し、しんどい……。」
の言葉に、眠そうな半眼でエレキマンは呟いた。
「……まさか……。」
そんな彼を見ながら、はある一つの考えに至った。
「……風邪、本当に移っちゃったの……?」
口元を押さえ、あの時の事を思い出しながら呟いた言葉に、エレキマンは身を固める。
「……ぇ゛……。」
まさか……。
まさかーーーーー。


本当にキスで風邪が移るだなんて……。


「ご、ごめん、エレキマン……っ。」
は真っ赤になりながらもエレキマンに謝る。
「ぃ、いや!あれは、その…オレがした事だし……っ!!」
エレキマンも負けないくらい真っ赤になり、首を振る。
「へ、変な感じしない?人間の風邪ってナビに悪影響出したりしないのかなっ!?」
目に涙を浮かべ、必死になる
「だ、大丈夫……っ。多分…、休めば…治るから……っ!!」
そんなに、エレキマンは両手を振る。
「私、エレキマンが良くなるまで看病頑張るからね……っ!!何でも言ってね……っ!!」
「いや、本当に大丈夫だから……っ!!オレの事は構わないで……!」
力一杯に言ってくるを見て、冷や汗を流しながら首を振るエレキマン。
「……ぇ…、そう…なの……?」
少し、その態度にシュンとする
に看病なんかされたら、余計に熱が上がる……っ!!)
エレキマンが心の中で思っている事など露知らず、は少し小首を傾げる。
「……また…、キスしたら、治るかな……?」
一人ドキドキと脈打つ胸に手を当て、蹲っているエレキマンを他所に、はポツリと言葉をこぼした。
それは、とても何気なく発せられた物であり。
本気では無かったのかもしれないが……。
「…………っ!?」
その言葉を幸か不幸か、耳にしてしまったエレキマンは……。
「ぇ、えぇ、エレキマン……っ!?」
衝撃の強さゆえに、顔を真っ赤にして、倒れてしまったのであった……。





エレキマンが意識を取り戻すのは、暫く後の事である……。

















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「はい!エレキマンが漢(ヲトコ)を見せましたよ編でした……っ!!」

エレキマン・「ちょっ、ちょっと待て……!何だこれ……っ!?」

ハム猫・「え?プラントさんに続きエレキまでもがちゅーしちゃったよ話?」

エレキマン・「…………っ!?ち、違っ、あれはオレがしたんじゃなくて……!」

ハム猫・「くしゃみした途端に脳内で瞬時に話が構築されましたよ。まさにミラクル!」

エレキマン・「ぅ〜〜〜、あれはオレじゃないっ、オレじゃない……っ!!」

ハム猫・「まぁまぁ、そう隅っこでいじけないで。微妙にへたれも醸し出してるから良いじゃない。」

エレキマン・「良くないっ!!もっと普通の書けよ……っ!!」

ハム猫・「え〜〜〜。格好良いエレキは書けません。」

エレキマン・「公言するな……っ!!」

ハム猫・「何でエレキがお粥作れるのさ、とか何で普通に実体化してるのか、とかは夢乙女の秘密と言う事で……。」

エレキマン・「何だそれ……。ま、まぁ…兎に角、何か恥ずかしいけど、ここまで読んでくれて有難う。楽しんでもらえた…のかな……?不安だけど、良ければまた来てくれよな。」


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