「加賀〜〜〜っ!!勝負ーーーっ!!」 ガラッ……!! 静かな昼休みをぶち壊して入ってきたのは、幼馴染のだった。 強気な彼女、強気な彼
「勝負…って、何でだ……?」
昼休み、将棋部の部室で1人くつろいでいた加賀は、眉根を寄せた。 「もっちろんっ、囲碁で……っ!!」 そう言って、は携帯用の碁盤を掲げた。 「……あのな、オレは将棋部なんだぜ……?」 扇子をパチン、と閉じながら言う。 「知ってるよ、それくらい。でもでも、囲碁部の大会に出るくらいに強いんでしょっ!!だったら、いいじゃないっ!!」 「いや、だから、何でそこで「いいじゃない」になるのかを聞きたいんだが……。」 張り切って答えるを見ながら、呆れた様に呟く加賀。 しかし、もうこうなってしまっては、に従うしかない。 どんなに正論で攻めたって、には通用しない。 この女ーーには、正論も常識も通用しないのだから……。
そんな事を考えている間にも、はどんどん準備を進めていく。
加賀の前の机に碁盤を置き、碁笥を両脇に置き、蓋を開ける。 碁を打つ準備は一通り出来た。 「さ、打とうよ、加賀。」 目の前に座り、ニッコリと満足げに笑う。 「お前…、碁なんて打てたのか……?」 思っていたことを素直に口にする。 「うん!この前筒井さんに習ったっ!!」 嬉しそうに答える。 「筒井…って、…いつの間に……。でも、習ったばっかじゃオレには勝てねぇぜ。お前なんか、十分もかからねぇよ。」 鼻で笑うように、加賀が言う。 「むっかぁ〜〜〜っ!!むかつくなぁ、そりゃ、今まで将棋で勝ったこと無いけど、囲碁は分かんないじゃんかぁ〜〜〜。」 プゥ、と頬を膨らまし、睨んでくる。 「お前のその自信は一体どこから出てくるんだ……。……まぁ、…そうだな……。負けた方は勝った方の言う事を何でも1つ聞くって言う約束したら、打ってやっても良いぜ。」 ニヤリ、と笑って、加賀は言った。 「うん!いいよっ!!加賀が負けても知らないからねっ!!」 は、その言葉に簡単に頷いた。 後で、この言葉が仇になるとも知らずにーーーーー……。
「お願いします。」
のその言葉で対局が始まった。 先手は。 が言い張ったので、置石もコミも無し。 互い戦だ。 が初手を打つのを見て、加賀は涼しそうな顔をしていた。 パチ パチ パチ…… 静かな部屋の中で、碁石を打つ音だけが響いていた。
(……やばい……。)
は、心の中で思った。 親指の爪を噛みながら考えるのはの癖だった。 (最初はいい出だしだったんだけどな……。途中から引っくり返された……。加賀の本気じゃ無かったってトコか……。) やっぱり、筒井さんに何回か勝っただけで、いい気になるんじゃなかった……。 今ここからやり返そうと思っても、…取られた分は取り返せない……。 大雑把に目算してみても、勝てる見込みは無かった。 「……ぁ…、ありません……。」
の、喉の奥から搾り出すような、微かな声が聞こえた。
「よしっ。これで、オレのすごさが分かったか。」 加賀は、王将の扇子をバッ、広げて言った。 「…………っ!!」 そんな加賀を、は涙をためた目で睨んでいる。 「さってと。約束通り、1つ言う事を聞いてもらうぜ。」 扇子を扇ぎながら、何かを企んでいる様に笑う。 「……なっ…、何なのさ……っ!!」 そんな加賀に、少し嫌な予感を感じながら、は言った。 すると、加賀は自分が座っている椅子ごと少し後ろに下がりーーーーー。 「ここに来い。」 自分の膝を指差した。 「……は……?」 その、突拍子も無い加賀の行動に、は目を丸くした。 「だから、とにかくここに来いって。勝った方の言う事何でも聞くんだろ?」 「……むぅ……。」 まったく意味が分からなかったが、約束は約束だ。 は自分の座っていた椅子から立って、加賀の下へ向かう。 「……何なのさ……。」 加賀を睨むは、ブスッとした声で言う。 「ほれ、座れ。」 そう言って、加賀は自分の座っている椅子を指差す。 「……何言ってんの?加賀が座ってるから無理じゃん……。」 は、加賀を睨みながら言う。 「あーーー、もう、うるせぇなぁ……。良いから、言う通りにしろよ。」 その言葉と共に、加賀はの腕をグイッと引っ張た。 「うぇ……っ!?」 急な事に驚いたがおかしな声を上げているうちに、気が付けば、加賀の膝に座る状態になっていた。 「な…なな、何すんの……っ!?」 しかも、その上に加賀にがっちりと抱き締められていた。 こうなっては、身動きもとれず、抜け出す事は不可能だった。 「お前…、オレの事好きか……?」 「はあぁあぁぁ〜〜〜っ!?」 急に、耳元で聞かれて大声を上げる。 「……うっせーな…、好きなのかって聞いてんだよ。素直に答えろよ。」 有無を言わせぬ口調である。 すでに顔は真っ赤で、逃げ出したかったが、加賀にがっちりと捕まっているため、それは叶わなかった。 「な…何でそんな事言い出すのさ……っ!!しかも、言う事聞くのは1つでしょ……っ!?」 は力の限り腕を外そうと頑張ったが、力では勝てなかった。 「あぁ?何言ってんだ。さっきのは0.5だよ。半分しかまだ言ってねぇの。」 「ずるいっ!!」 かなり無理のある加賀の言い分に、抗議する。 「離して欲しかったら、素直に言えよ。」 加賀は、涼しそうな顔で言う。 の反応を楽しんでいるようだ。 「…………。」 「で、どうなんだ?」 沈黙を続けているに、加賀が問いかける。 「オレは別にずっとこのままでもいいけど……。」 「っ嫌いじゃないです……っ!!」 加賀の言葉を聞いた途端に、が大声で言った。 「って、ことは、好きなんだよな?」 の肩越しに、顔を覗きこんでくる。 はっきり言って、かなり至近距離である。 の頭はすでに、ヒートしていた。 「ぅ…うあ、…き、嫌いじゃないけど……。」 もう目がグルグル回って、頭の中はグラグラ言って、まともに物事を考えられなかった。 「素直になれよ。好きなんだろ?オレの事。」 「ぅ、…ぅう……。」 だんだん体の力が抜けてきた。 これ以上この状態でいるのは危険だと、本能が察知した。 「ぅあぅ、…好きだよ…、もう、言えばいいんでしょっ!?私は加賀の事が好き……っ!!これで良い……っ!?」 半ば、逆ギレというか何と言うか…な状態で、は叫んだ。 「よっし、合格っ!!」 その瞬間、今までを拘束していた腕は、すんなりと開放された。 「ふぇっ……。」 そのまま、くず折れるように床に座り込む。 それと同時に、の火照った体も冷めていった。 「やっと素直に言いやがったな。」 加賀はにんまりと、満足そうに笑っている。 「…………っ!!」 そんな加賀を、は顔を上げて睨みつけた。 「……っ一体何のつもりなのさ……っ!?」 今まで押さえていたものを一気にぶつけるように言う。 「だって、お前こうでもしないといつまでも言えないだろ?」 加賀は、扇子を開いて言った。 「…………っ!?」 「オレとっくに知ってたんだぜ?お前がオレの事好きだって事。」 暫く扇子で扇いでから、パチンと閉じる。 「で、ついでにお前がオレに何か勝負で勝ってから告白しようとか決めてた事もな。」 「な……っ!?」 「一体何年幼馴染してると思ってんだよ。」 やれやれ、と肩をすぼめて加賀が言った。 「待たされるオレの身にもなって欲しいぜ。ったく……。」 そして、扇子をいつも通りベルトに挟み、椅子から立ち上がった。 そして、床に座る千景の下へ行き……。 「でも、ま。これで、めでたく付き合えるわけだよな?チャン♪」 にんまりと、上機嫌の笑みでの頭を撫でる加賀。 「…………っ!!加賀の馬鹿ぁ……っ!!」 ガシャ……ッッ!!!
は、机の上にあった碁笥の中の碁石を掴み、加賀に投げつけた。
「ぃっ、痛っ……!お、お前、何すんだよ……っ!!」 加賀は、腕で顔をかばいながら、に近づこうとする。 「こっち来んなっ!!前言撤回っ、加賀なんて嫌いだぁーーーっ!!」 は、碁笥を抱え、ひっきりなしに碁石を投げつける。 「って!……お、おまっ、これ、ホント痛いんだぞ……っ!?」 の投げる碁石がクリーンヒットして、かなり痛そうな加賀。 これは、二人が付き合い始めたきっかけになる、ほんの小さなお話ーーーーー。 今となっては懐かしい、今の二人に続く、一番初めのお話ーーーーー。 〜〜〜後書きと言う名の懺悔〜〜〜 ハム猫・「ハイ!8100番のキリリクですっ!!瑠璃さんに捧げます……っ!!」 加賀・「いらねぇーよ。こんなモン。」 ハム猫・「う゛っ……。……ですよね…、でもでも、なかなか加賀氏の性格が掴めなくて……。」 加賀・「気付けばこうなっていた、と……?」 ハム猫・「はい♪」 加賀・「お前、死んどけ。」 ハム猫・「…………っ!?(ヒド……ッ!!)これでも頑張ったんだよ……っ!!(泣)」 加賀・「って言ってもなぁ……。時代も古いし……。」 ハム猫・「だって、中学時代しか書けなさそうだったんだもん〜〜〜。」 加賀・「オレ、あんまりイイ思いしてねぇし。」 ハム猫・「それは加賀さんの普段の行動が……。」 加賀・「何か言ったか?(ニッコリ)」 ハム猫・「いいえぇ、何も♪」 加賀・「はぁ〜〜〜、何か、ハム猫に文句とか苦情とか色々とあるだろうけどよ、まぁ、そう言うのはメールか何かで知らせてくれや。」 ハム猫・「本当にすみません……。(土下座)全然リクエストに添えていませんね……。フォローのしようの無いほどヘボドリー無書きですみません……。頑張って精進します。」 加賀・「じゃあ、またな!」 |