「私ね…、好きな人が出来たの……。」


ナビも夢を見るんだろうか……。



夢なら、どうか覚めてほしい……。










ーーー嘘ーーー










今、自分の耳に届いた言葉は本当なのか?

目の前では、が嬉しそうに微笑んでいる。

その笑顔は、いつものようにとても可愛らしくて。

目が離せないものがあるが、今は頭が真っ白だった。



再度、夢なのかと疑った。

いや、夢であってほしいと望んだ。

しかし、きつく握り締めた自分の手が、だんだんと痺れていくのを感じ、これは現実の事だと理解した。


「いつもね、配達してた人なんだけどね……っ。」

照れ臭そうに話す彼女を見ながら、寒くなるのを感じた。



ナビが人間に恋するなんて。

こうなる事は分かってたじゃないか。

オレは、何を期待していたんだろう。



「ぇっと…、それで…昨日、ね……?」

彼女の言葉も耳に入らなかった。

ただただ、脱け殻になったかのように。

いつも想うばかりで何も行動を起こさなかった自分を責めながらも、同時にどれ程この想いが本気だったかを知った。



「…………っ!?エレキマン……っ!?」

突然の声が耳に入った。

その声に現実に引き戻されると、が目を大きくしてこちらを見ていた。

「ど、どうしたの……っ!?どこか痛いの……っ!?」

彼女は慌て言った。

「…………?」

彼女の言葉の意味が分からず、疑問府を浮かべる。

暫くして、やっと気付いた。



自分が、涙を流している事に。



「どうしたの……っ!?私、何か酷い事言っちゃったりしたかな……っ!?」

原因が分からず、は混乱するばかり。

「……いや……。」

不安そうに覗き込んでいるにオレは力無く返事を返す。

「本当にどうしちゃったの、エレキマン……?」

ただ、無感動に流れ続ける涙を指で拭いながら、働かない頭で言葉を考える。

「……ただ…、急な話だったから……。」

そう言うのが精一杯で。


悲しい、とか。

辛い、とか。

悔しい、とか。


そんな感情は口にしてはいけないのだと、自分に言い聞かせた。

自分は喜ばねばならない。

好きな人と結ばれる事が無いのなら、そんな自分に出来る事は、ただその人の幸せを共に喜ぶ事だけだ。

「……でも…、オレに話してくれて…有難う……。」

頑張って、出来るだけ笑顔を作って。

涙は拭っても止まらず、顔も強張っていただろうけれど。

今はこれが精一杯。



「……っあの、その事なんだけど……っ。」

オレがそう言うと、はもじもじと言い難そうにオレを見つめて来た。

「…………?」

床とオレとを交互に見るに、オレは疑問を抱く。

何か、言い辛そうにしているようだ。

「その…ね、エレキマンがそんなにびっくりするとは思ってなかったんだけど……っ。」

指をきつく結び、は決心したように言った。

「さっきのね…、全部嘘なの……っ!!」



「……は……?」



何とも間抜けな声だと思った。

あまりに驚いたせいで、あれ程拭っても止まらなかった涙も、流れる事を止めた。

「いや…っ、その、今日ってエイプリルフールじゃない?それで…、ファイアマン達がエレキマンにそう言ったら面白い事になるからって……。皆に、言われて……。」

一生懸命説明をするだったが、だんだんと視線は下がり、声も小さくなっていく。

「……本当にごめんなさい……。」

そして、最後にポツリと呟いた。

「……じゃあ…、今までのは…本当に……っ。」

頭を下げて、しょんぼりしているを見つめながらも、オレは未だに驚きで上手く言葉が出なかった。

「全部嘘だよ!……私に好きな人が出来たなんて、あるわけ無いじゃない!」

オレの言葉に、いつもの笑顔で強く肯定する彼女に、オレは今まで固まっていた物が解れて行くのを感じた。

まだ、彼女は誰かのものになった訳ではないんだ。

まだ、彼女の心は誰か一人を見ている訳ではないんだ。

そんな、ほんの少しの希望が、自分の心をこんなに楽にさせるなんて。

「……ホントに、本当にごめんね……っ!!嘘吐いて良い日だからって、やっぱり急には驚くよね……。」

再び、しょんぼりと俯いた彼女を見て。

オレは、今度は本当の笑顔で言った。



「……いや、最高の嘘だったよ……!」



本当じゃなくて。

嘘で良かった。


そう思えた、エイプリルフール。










取りあえず、後でファイアマン達には雷を落としておこうと思う。















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「エレキマン、エイプリルフール夢でした。」

エレキマン・「……すでに日付過ぎてるけどな……。」

ハム猫・「そんな事言っちゃ駄目ですよ!関係無いんです。思い付いたモン勝ちなんです。」

エレキマン・「…………。」

ハム猫・「まぁ、エイプリルフールネタと言っても、ただエレキマンはへたれです、と言う事を強調したようなものですが。」

エレキマン・「……っ本当に、オレの夢は全く進展しないじゃないか……っ!!」

ハム猫・「まぁまぁ、泣くな、エレキマン……。その、頑張っても一歩が踏み出せないもどかしさが良いんじゃないか☆」

エレキマン・「……良い…、のか……?」

ハム猫・「……さぁ……?」

エレキマン・「……落雷……っ!!」

ハム猫・「ぎゃーーーっ!!」

エレキマン・「……はぁ……。本当に、こんな夢を読んでくれてる人に顔見せられないよ……。」

ハム猫・「まぁ…、いつか…きっと……。多分……。エレキも男を見せる時が来るよ……☆」

エレキマン・「…………。……まぁ、管理人こんな事言ってるけど、良ければまた、見に来てくれる…かな……?」



戻る