「ねぇねぇ、ちゃん今日一緒に帰ろーーーっ!!」
今日も今日とて、兎丸比乃は、に話しかけた。
「ごめん……。今日も生徒会が遅くなりそうなの……。」
は、すまなそうに言った。
「え〜〜、今日も〜〜〜。一週間前からずっとそうじゃんかーーー。」
「本当にごめんね……っ!!もう少ししたら、仕事も一段落して、楽になるから……。」
は、顔の前で手を合わせ、兎丸に謝る。
「む〜〜〜、ぼく達が付き合い始めてから一緒に帰ったのって3回だけだよ〜〜〜っ!!」
兎丸は頬を膨らませ、そっぽを向いた。










ぼくの心に降り積もる雪










ぼくの彼女はちゃん。
優しくって、かわいくって、暖かくって大好きです。
でも…、でもね、ちゃんって生徒会に入ってるんだよね……。
今年の生徒会って、なかなか人が集まらなくって、結成されるのが遅れたんだ。
だから、例年よりも仕事がたまってて忙しいんだって、ちゃんは言ってる。
ほとんど毎日夜遅くまで残って仕事してるんだよね……。
ちゃんのせいじゃないって分かってるんだけど、ついつい当たってしまう……。
「ごめんね」って言いたいんだけど…、何でかなかなか素直になれないんだよね……。
あぁ、ぼくって最低だなぁーーー……。



「……ごめんね…、兎丸君……。」
そんな事を考えていると、何かが頭に触れるのを感じた。
「…………?」
振り返ると、が兎丸の頭を撫でていた。
「そろそろ溜まってた分は終わってもよさそうなんだけど…、今年に限ってあちこちのクラブから色々と申請があって……。」
ちゃんは、とても辛そうに話した。
「う…ううん!いいよ、もう。また、今度一緒に帰ろうね……っ!!」
兎丸はフルフルと首を振って、その席を立った。
「じゃあ、またね……っ!!」
そう言って、兎丸は自分のクラスに戻った。
「…………。」
その兎丸を、は少し切なそうに見ていた。







クラスに戻ると、司馬がいた。
「シバ君〜〜〜。どうしよう…ぼく……。」
自分の席について、へにょり、とくず折れる。
「…………?」
そんな兎丸を心配そうに見る司馬。
「ぼく、ちゃんのことすっっっごく好きなんだ……。だから一緒にいたいんだけど……。ちゃんは、生徒会が忙しいし…、我儘言いたいけど、ちゃんが悪いわけじゃないし……。」
机に突っ伏した兎丸は、ただただ愚痴をこぼすばかりだった。
「…………っ。」
「え?生徒会が落ち着くまでもう少し我慢って……?それが出来たら難しくないよ……。」
見かねて司馬が言った言葉も、兎丸には通じなかった。
「…………っ。」
司馬が、そんな兎丸に一生懸命言い続けた言葉は、すでに兎丸には届いていなかった。
机に突っ伏している兎丸の頭の中を占めるのは、ただただの事だった。











カキーーーィン……ーーーーー。

グラウンドにボールを打つ音が響き渡る放課後、兎丸はまだもやもやした気持ちで練習をしていた。
そんな気持ちで練習をしていると、ボールを取り損ねる事もしばしばで、牛尾キャプテンに怒られたりした。
午後練も終わりに近づいてきた頃……。
「あれ……?」
頬に冷たいものが触れた。
空を見上げると、白いものがはらはらと降って来ている。


雪だったーーーーー。


「おや、雪だね……。」
牛尾キャプテンもその事に気付いたらしい。
手を空に向けて開いている。
最初は、はらはらと降っていた雪も、だんだんと激しくなってきた。
「この調子じゃあ練習は無理そうだね……。」
その様子を見た牛尾先輩は、少し口惜しそうに呟いた。
「少し早いけれど、今日のところはこれで練習を終わる!各自、風邪を引かないよう注意するようにっ!!」
牛尾キャプテンのその言葉と共に、皆白い息を吐きながら、部室に向かう。
そんな中、ぼくは校舎の方を見た。
生徒会室がある場所を……。
その部屋は、まだ光が明るくついていた。

きっと今日も、遅くまで残ってるんだろうな……。

その想いが胸の中に浮かんだ。










「あ……。雪だ……。」
生徒会室で、最後の追い込みにかかっていたは、窓の外を見て雪が降り始めたことに気がついた。
「あ〜〜〜、今日傘持って来てないんだよね〜〜〜……。」
書類をトントン、と整えながら言う。
「この分じゃ、帰る頃には一番きつくなってそうだな……。」
机の向かい側に座っている、同じ一年の会計も言った。
「早く仕事終わらせちゃわなきゃねっ。」
そう言って、は書類に向き直り、ペンを執った。







それから数十分してーーーーー。
「んぁうぅ〜〜〜っ!!やっと終わった……っ!!」
は盛大に伸びをした。
「お疲れ様、ちゃんいつも頑張ってくれてるから先帰って良いよ。片付けは俺達がやっとくから。」
生徒会長が言った。
「えっ、いいんですかっ!?でも、先輩達も早く帰らなきゃ、雪ひどいですよ……?」
嬉しいのは嬉しいが、さすがに一年の私が先に帰るのは…、と思い、片付けを手伝おうとする。
「いいっていいって。俺達は置き傘あるから。」
ニッコリと笑って、言う。
そんな会長の優しさを嬉しく思いつつ、今日のところはその言葉に甘えさせてもらう事にした。
「……じゃあ、すみません!また今度、手伝いますね……っ!!」
そう言って、は生徒会室を出た。








「ひゃあぁぁ〜〜〜。ホント、すっごい雪……。」
は、校門に向かって歩いていた。
鞄を抱え、片方の手で雪を受け止める。
「結構積もるのかなぁ……。」
そんな事を思いながら、歩いていると、校門の外に誰かが立っていた。
「…………?」
雪が視界を遮って、なかなか確認が出来なかったが、一歩近づくごとにはっきりと見えてくるその姿は、とても見知った人物だった。
「と…兎丸君……っ!?」
驚いて、急いで走って校門までたどり着いた。
「あっ、ちゃんお疲れ様♪」
そんなに振り返って、兎丸はニコリと笑って言った。
「ど、どうしたのっ!?こんな遅くまで……っ!!」
兎丸の肩や帽子には、すでに雪がうっすらと積もっている。
鼻や頬は寒そうに赤く染まっていた。
ちゃんを待ってたんだ。」
「…………っ!?何で……っ!?」
今までこんな事なかったのに……っ!?
そう思いながら、は兎丸の肩に積もった雪を払った。
「ねぇ、ちゃんっ。雪だよ……っ!!」
すると、兎丸は急に腕を広げて嬉しそうに言った。
「…………?うん……。」
急に言われて、理解に困ったがとにかく頷いてみる。
「ぼくねぇ…、雪って大好きなんだ……っ!!」
「…………?」
兎丸の言おうとしている事がいまいち掴めず、は疑問符を浮かべる。
「ぼくね、雪が積もるのって大好きなんだ!何だか、少し積もるごとにワクワクしない?」
そう言って、兎丸は両手を上げて空を見上げた。
「雪が降ると、嬉しくて走り出したくなるんだ。見てても綺麗だし、何だか魔法にかかったみたいにそれしか見えなくなって……。いつの間にか、ぼくの心の中にもどんどん降り積もっていくんだよ。」
白い息を吐きながら、兎丸は言葉を続けた。
「それでね、いつかはぼくの心は真っ白になるの。雪色に染まっちゃうんだ。」
そう言って、兎丸はの方にクルリ、と振り返った。
「ぼくにとってね、ちゃんは雪と同じなんだ……っ!!」
ニッコリと、赤くなった顔いっぱいに嬉しそうな笑みを広げて、兎丸は言った。
「雪……?」
は、未だに兎丸の言葉の意味が分からなかった。
「うん。今、ぼくの心の中は、ちゃんのことでいっぱいなんだ。毎日毎日、ちゃんを見ていたいって思うし、一緒にいたいって思う。ぼくの心は、もうちゃん色に染まってるんだよ?それでね、ちゃんと一緒にいると、とっても楽しいし、幸せなんだ。でも…ね……。だから…、だから……。」
そう言って、兎丸はの方に近寄って……
「ぼく、ちゃんと一緒にいないと、寂しくて死んじゃいそうだよ……。」
切なそうに言って、を強く抱きしめた。
「兎丸君……?」
「これはぼくの我儘だって分かってる……。ちゃんが生徒会で忙しいのは分かってる……。でもね、もっと…、ずっと…、一緒にいたいな…って思っちゃうんだ……。」
そう言って、抱きしめる手に力を込めた。
「兎丸…君……。」
「最近一緒にいる時間が少なかったから、ちょっと…不安になって……。この気持ちを伝えたかったんだ……。」
そう言うと、を抱きしめていた腕を離した。
「ごめんね、ぼく我儘で。」
ニコリ、と笑う。
「ううん。我儘なんかじゃないよ……。私こそごめんね…、兎丸君の気持ちに気付けなくて……。」
「もういいんだ!ちゃん見れただけで、ぼく幸せだからっ!!」
そう言って、兎丸はの手を握った。
「それより、さ。今日は一緒に帰れるよね?」
の目を見て言ってくる。
「うんっ。あのね、兎丸君……。」
「……何……?」
兎丸が疑問符を浮かべながら、こちらを見てくる。
「生徒会の仕事ね…、やっとほとんど終わったの……っ!!」
「本当……っ!?」
嬉しくて、兎丸はついの両手を握った。
「本当だよ……っ!!これからは、今までよりももっと、一緒にいられるからねっ!!」
も、そんな兎丸の手を握り返す。
「やった……!本当なんだね……っ!?ぼく、今本当に嬉しいよっ!!嘘じゃないよねっ、今、ぼく夢見てるんじゃないよね……っ!?」
「本当だよ……?」
そう言って、は自分の手を兎丸の頬に添えた。
「ね?私の手暖かいでしょ……?これは夢なんかじゃないよ。」
そう言って、は優しく微笑んだ。
「兎丸君のほっぺた、冷たい……。こんなになるまで待っててくれて有り難う。それと、ごめんね……。」
そして、は鞄からマフラーを取り出した。
「はい。これ使って。」
言いながら、兎丸の首に巻いていく。
「……有り難う……。えへへ、すっごく暖かいや……。」
兎丸は、照れたような笑いをした。
「じゃあ、帰ろうか。」
「うん。」
二人は、微笑みあってから、手を繋ぎ直し歩き始めた。
空から絶え間なく降り続ける雪は、そんな二人を祝福するかのように、きらきらと瞬いていた。











〜〜〜懺☆悔☆文〜〜〜

ハム猫・「ハボキリリクエストの白比乃ドリームです!今の気持ちを一言でまとめます!『すみません。(土下座)』……唯これだけですわ…、もう……。」

兎丸・「何かさぁ、ハム猫のドリームって最近パターン化してきたよね……。これも、抹茶ネタと台詞かぶってるとこあるし、ネタ的には、牛尾先輩のと似てるし……。」

ハム猫・「ぐっはぁあぁぁーーーっ!!い、言わないで、それを……っ!!」

兎丸・「いや、だってこれリクエストなのに、こんな作品でいいの?」

ハム猫・「だって…、白いの無理そうだったから、雪の「白」にかけようかなぁ〜〜〜…なんて……。それに、ほら兎は寂しいと死ぬって言うじゃないっ!!」

兎丸・「でも、雪って言うには時期過ぎてるよね……。」

ハム猫・「確かにね……。思いついた時は丁度良かったんだけどね……。って言うか、はっきり言って生徒会の事ちっとも知らないので、想像で書いてます。突っ込みどころ満載ですが、どうか目を瞑ってやって下さいまし。」

兎丸・「後半でぼくが言ってる台詞も、まったく意味が分からないし……。何かいいトコないじゃんか、ぼく……っ!!」

ハム猫・「エヘ♪自分でも、打ちながら何が言いたかったのか分からなくなって来ましたっ!!☆」

兎丸・「駄目じゃん……。本っっっ当に、ごめんね、あゆささん……。こんな作品だけど、貰ってくれると、ぼくとっても嬉しいなっ!!」



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