ーーーあなたへの想いーーー










「炎山君いますかーーー?」


プシューーー…ッ


そう言って入って来たのは。
首からは、炎山から特別に与えられた入場許可証が下げられていた。

「様。炎山様は今は少し席を外しています。」
そのの声に答えたのは、炎山の仕事机の上に置かれていたPETの中のブルース。
「あれれ?珍しいね、炎山君がブルースを置いていくなんて!」
は、炎山の仕事机にトコトコと近付いていくと、おもむろにPETを手に取った。
「すぐに戻って来ると思われますので……。」
相手でも、いつもの硬い調子を崩さない。
「ふ〜ん、そっか。それより、やっぱり私が炎山君のPET持ってると不思議な感じがするね〜〜〜。ブルースが近いよ。」
そう言って、ふにゃりと笑う。
「……そうでしょうか……。」
そんな反応をするを見て、ブルースは少し言葉を切った。
実際は、少し違和感はある。
目の前に見えるのは炎山ではなく、あの。
しかし、今、何も隔てる物が無く、まっすぐにと向き合える事の方が嬉しくて。
珍しくもブルースは、表情には表さないが、少し緊張していた。
「このPETを炎山君がいつも使ってるのかーーー。」
そう言って、はPETを撫でる。
その行動に、ブルースはチクリと胸が痛むのを感じた。
ナビの自分から見ても、その行動は優しさに満ちていて。
何かをいとおしむ様な、思いを馳せるような行動。
大事な人を、思い描いているような瞳。
「…………。」



様は…、やはり炎山様の事を好きなのだろうかーーーーー。



今まで何度脳裏に浮かべたか分からない疑問がまた現れる。
一人問いかけても、誰もその答えを与えてくれる者はいなくて。


やはり…、自分のこの気持ちはバグなのか……?

どんなに思っても、叶う事は無い…許されるはずの無い事なのか……?





ブルースは、PETを撫でているを見ながら、心の中で呟いた。



「そういえばさっ、急な話なんだけど、ブルースって好きな人いる……っ!?」
「……っ、…………っ!?」
愛しそうにPETを撫でていたと思ったら、ふとブルースの方を見て、はとんでもない質問をした。
咄嗟の事に、流石のブルースでさえ、言葉が出なかった。
「……なっ、な、急に何なんですかっ、様……っ!?」
やっと口から出た言葉もどこか裏返った声で。
こんなに焦ったのはナビとして生まれてから初めてかもしれない。
「いやね、メイルちゃんのナビのロールちゃんはロックマンの事好きみたいじゃない?だから、ナビにも恋愛感情はあるんだよな〜って思って。で、ブルースはどうなのかな、と。」
慌てふためくブルースを他所に、はマイペースに答える。
「いや…っ、その、お、オレは……!」
全くブルースらしくないと言われれば終わりだが、混乱しているブルースは、一生懸命に手を振って誤魔化そうとする。
まさか、自分の好いている相手にこんな質問をされるとは思ってもいなかった。
「……あっ、もしかしてバーチャルアイドルのAKIちゃんとか?あの歌可愛いよね〜〜〜。私も好きだよっ。」
まだブルースは何も言っていないのに、勝手に一人話を進めて納得している。
その様子に、ブルースはさらに慌てた。
「ちっ、違います……っ!!」
PETの前で勝手に話を進めているを止めるべく、精一杯の声で叫ぶ。
「……違うの……?」
ブルースの懸命の叫びに、一旦思考を停止させてPETを覗き込む。
「……はい、違います……。」
やっと暴走を止めてくれた事に安堵感と疲労感を感じながら、ブルースは肯定する。
「じゃあ、誰……?他に女の子って言うと……。」
AKIちゃんが違うとなると次は誰だろう…と、はまた思案を始めた。
「…………。」
そんなをじっと見つめるブルース。
目の前で一生懸命相手を考える。

しかし…、ナビの相手は、ナビではなくてはいけないのですか……?
ナビが…人間を好きになってはいけないのですか……?


もし、今ここで、自分の気持ちを言葉にしたら……。

これからの自分の世界に、どんな影響を及ぼすだろう。


「様……。」

だんだんと頭を悩ませ始めたに、静かに、しかしはっきりと呼びかけた。
「何、ブルース?好きな人、教えてくれるの……っ!?」
ブルースの呼びかけに、は目を輝かせてPETを覗き込む。


その瞳の輝きに…今まで何度目を奪われた事か……。


「様…、いや、……。オレが好きな人は……。」
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
今、自分がしようとしている事を理解してはいるが、止められなかった。


勝手に口が動く。

何度もこの想いを伝えたくて。

でも、その度に思いとどまって。

今…、やっと今、この想いを伝える事が出来る……。


「……オレが好きな人は……。」
ブルースの一語一句に耳を傾ける。
次に来る言葉を聞き逃すまいと真面目に聞いている。



「……ッ。」





「何をやってるんだ?」
ブルースが、の名を口にしようと言うまさにその時。
扉を開けて入って来たのは、席を外していた炎山だった。
「……っ、ぇ、炎山…様……っ!!」
と2人、扉の前に立つ炎山に視線を向ける。
「…………?どうした?」
その、不思議そうな、驚いたような表情に、炎山はいぶかしむ。
「……っうぅん、何でもないよ!勝手に入って来ちゃってごめんね!」
今まで緊張していた分、気が抜けてしまったのか、は落ち着かなさそうに炎山に言った。
「いや、ならいつ来てくれても構わないさ。所で…オレのPETを持って何をしてたんだ……?」
珍しいその光景に、気になっていた事を問う。
「え…っ、あぁ、そのただ好きな人の話をちょっと……。」
「好きな人……?」
のその言葉に、炎山の眉はピクリと動く。
好きな相手が自分のナビと「好きな人」について話していたともなれば、流石の炎山でも気になると言うものだろう。
「うん…っ、でももうその話は良いの!炎山君が帰って来たしね。遊びに来ちゃったんだけど…時間とか大丈夫だったかな……?」
PETを机に置きなおすと、は仕切りなおしとでも言うように炎山に笑顔を向けた。
「……っあ、あぁ、仕事は今さっき終わったけど……。」
そのの態度に、炎山も踏み込み損ねる。
「じゃあさ、今日もネットバトル申し込んで良いかな?」
「……あぁ……。」
もう、気が付けばのペースで。
後にでもブルースにさり気無く聞いてみようか…と思いながら、炎山はPETを手に取る。
「じゃあ、行くか……。」
そう言って、再び扉に向かい歩き始めた時ーーーーー。



『……さっきの話は、また今度ね……っ。』



PETの中で先程のショックに言いようの無い気持ちになっていたブルースは。

炎山が背を向け扉へ向かう途中、が、声には出していなかったが、楽しそうにそう言ったのを。


確かに、はっきりと、見る事が出来た……。










『そう……。

……いつか…きっと、この気持ち、伝えてみせるーーーーー……。』
















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「アッハ☆勢いで一気に書いちゃったよブルースドリー無!」

ブルース・「今回も「ドリー無」なんだな……。」

ハム猫・「なんて言うか、このサイト内の半分くらいが「ドリー無」な気がします。」

ブルース・「それは否定出来ないな。」

ハム猫・「うん、良いよ。開き直ってるから。それは置いといて、ブルースです。脱・悲恋失敗です。でも、ちょこっとだけ前向きになれたかな?」

ブルース・「前向き…と言うのか、これは?」

ハム猫・「今はまだヒロインさんの炎山への想いは普通の好き+尊敬みたいな感じなので、希望はあるさ☆」

ブルース・「希望…か……。」

ハム猫・「何かブルースシリーズもう少しは続きそうです。なので、御覚悟宜しく!」

ブルース・「……っまだ続くのか……っ!?」

ハム猫・「もちーーー。正しくはシリーズでは無いですが。設定を引き継いでる感じで。」

ブルース・「……不安になってきた……。」

ハム猫・「まぁ、ぼちぼちと行きますので。ガンバ、ブルース☆」

ブルース・「……こんな感じな出鱈目な管理人だが…、良ければまた見に来てくれ……。」



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