無色の派閥との戦いも終わり、島に平和が訪れて

私は、ナップの家庭教師の仕事をきちんと終わらすためにも一度島を出た。


それから、ナップは無事試験に合格し、私の身の回りも落ち着いた所で

あの、懐かしい島に戻る事にしたーーーーー……。










ーーー星、瞬き、永久にーーー










私が島に着くと、すでに皆は宴会の用意が出来ていて。

皆が暖かく出迎えてくれて、とても嬉しかった。


星の綺麗な夜、皆で鍋を囲み、語り合い、お酒を飲んだ。

鍋の中身もほぼ綺麗になり、後はお酒を片手に語りあかすという時になり

私は少しその場を離れる事にした。


少しお酒が入り、火照った頬を冷ましたかったから。

皆に一言告げて、席を立った。










「はぁ……。」

この島でも、夜になると冷えて来るものだ。

まぁ、体温が上がっている今には丁度良いのだけれど。


特に何を考えるでもなく歩いていると、思い出の場所に着いた。

そう、あの悲しい思い出の場所に。





そこに、今日も彼はいつもと変わる事無く立っていた。





「ヴァルゼルド……。」

彼の近くにより、声を掛ける。

と言っても、以前のような会話は出来ないのだが……。



「異常はありません。」



機械的な、感情の無い声でそう言う。


「今日も…、ご苦労様です……。」

そう言って、私は彼の背中に軽くもたれた。

「あなたも今日の宴会を一緒に楽しめたら良かったのに……。」

ポツリ、と呟いた。

彼は、黙ったままだ。

前の様に、彼と話をする事は出来ないのだろうか……。

あの優しかった彼と……。

機械兵とは思えぬほどに表情豊かで、楽しかった彼と……。



「ねぇ、ヴァルゼルド……?」



私は、そう呟くと不思議と目を閉じて行った……。










「……殿、…官殿、教官殿……っ。」



「…………っ!?」

いつの間に眠っていたのだろうか。

そう思い、ガバリ、と起き上がる。

「……ぁれ……?」

今さっき、目を覚ます前に微かに聞こえた声。

もう、聞けないと思っていた声。



「……夢…じゃ、ないですよね……?」

私の目の前には…、そう、ヴァルゼルドの姿。

「夢ではありませんよ、教官殿。」

目の前のヴァルゼルドは、先ほど聞いたような機械的な声ではなく、温かみのある声でそう言った。

「このような所で眠っていたら、風邪を引かれますよ?せめてこれだけでも……。」

そう言って、ヴァルゼルドは何処からか持って来た毛布を私に渡してくれた。

「ぁ、有難う……。」

何故だか、そんなヴァルゼルドが気恥ずかしくて、少し顔を俯けてしまう。

「……私…、あなたには話したい事が沢山あるんですよ……?聞いてもらえますか……?」

今、私がヴァルゼルドと話しているのが夢のようで。

少しでも会話を続けていたいと思った。

「ハイ。自分も教官殿には色々とお話したい事がありますよ。」

ヴァルゼルドはニコリとーーーそう、きっとーーー笑って言った。

「フフ、じゃあ、今夜はずっとお話をしていましょうか?」




私は、ヴァルゼルドに渡してもらった毛布を肩に掛け、微笑んだ。




ずっとずっと、あなたの側で。


星の瞬く限り、永久に語り合いましょう……。










「……ん……?」

気が付けば、ゆっくりと視界が広がって行った。

「……あれ…、ここは……。」

まだ少し慣れない目で辺りを伺う。

ここは、先程と同じ場所だ。

建物を背に座り、いつの間にか寝ていたようだ。

私の前には、いつも通りのヴァルゼルドが立っていた。

「……やっぱり…、夢、ですよね……。」

それを見た瞬間に、今までの事が夢だったと気付く。

夢なら覚めてくれなくても良かったのに……。

一瞬そう思ってしまったが、首を振ってその考えを払う。

そうだ、皆が心配しているかもしれない。

帰らなければ。

そう思い、立ち上がる。





「……え……っ?」





その瞬間、ファサリ、と足元に毛布が落ちた。

自分の目を疑う。

「まさか……。」

足元の毛布を拾い、彼を見る。

「まさか…、あなたなんですか……?」

その毛布を手にしたまま、彼の側に寄る。

「…………。」

彼は黙ったままだった。

「…………。有難うございます……。」

彼は黙ったままだったけれど……。

きっと、そう、これは彼が掛けてくれたのだと。

不思議と確信出来た。





そして、ニコリ、と彼に微笑んで、私は皆の元へ戻ったーーーーー……。










きっとまた、あなたに話し掛けに来ますね。


星の瞬く限り、永久に……。
















〜〜〜後書き〜〜〜

ハム猫・「ぅわっはぁー!ついに書いちゃったよヴァルゼルド夢?」

ヴァルゼルド・「アタック、ヒットッ!!」

ハム猫・「ぎゃーーーっ!!めちゃくちゃクリティカルな攻撃せんで下さいっ。」

ヴァルゼルド・「……自分は…っ、情けなく思うであります……っ!!」

ハム猫・「へ?」

ヴァルゼルド・「こんな…、こんな管理人に書かれるなんて……っ!!」

ハム猫・「……そんなに嫌だったんかい……。しょうがないじゃん、急に頭に浮かんじゃったんだから。」

ヴァルゼルド・「……しかも…、これは夢とは言えないのであります……。」

ハム猫・「それは言うな☆それにちゃんと最初に「ヴァルゼルド夢?」って疑問符付きで書いたじゃないか。」

ヴァルゼルド・「…………。」

ハム猫・「ぎゃーっ、ごめんごめん!分かったから、武器構えるの止めてくれっ!!」

ヴァルゼルド・「本当に…、教官殿には何と言ったら良いのか……。こんな物をここまで読んで下さって有難うございました……っ!!」



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